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題名はまだない。何せこの物語はまだ途中なんで!  作者: ちゃらまる
第5章〜王都生活編〜
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物語の主人公は新たな課題に頭を悩ませる。(パン職人を探せ!そして駆け落ちを阻止せよ!⑮)

いつも読んでいただきありがとうございます。次回は2/10(金)投稿予定です。



改めて自分の目の前にある机に座り込んだ男性を見つめる。

若草色の髪も顔つきもエヴァイスと瓜二つであるが、エヴァイスよりも目の前の彼の方が体躯はがっしりしている。

脚の代わりに腕で支えるためだろうか何より腕の筋肉が立派だ。


脚のことを除けば魔法じゃなくて剣振って戦ってるって言われてもおかしくないな。


そんなことを思っているとマジマジと見られていたのが不快だったのか不機嫌そうに鼻を鳴らす。


「脚が無いのが珍しいのか不快なのか知らないけど、そんなにジロジロ見られるのは嫌いだ。」

「え?あ!ごめんなさい。」


ティリエスは素直に謝る。


「申し訳ありません、脚というよりはエヴァイス卿よりも立派な体躯だなぁ思いまして。ついマジマジ見ていました。」


ごめんなさいと再度ティリエスが謝罪と頭を下げると彼は驚いたようにティリエスのつむじを凝視する。そんな彼の様子に気がつかずそのまま顔を上げたティリエスと目があうと、彼はそっぽを向いた。


「・・・・・まぁ、俺の場合脚の代わりに腕が頼りだからな。あいつより体躯が良くなっても可笑しくはないさ。俺だけじゃ無い、他の奴らも大概そういう輩が多い。」

恥ずかしげに少し早口に言う彼に、目をぱちくりさせたティリエスは彼が怒っていないことに安心すると貴族特有の挨拶の姿勢になったが、挨拶しようとしたティリエスを彼が止める。


「いい。あんたの名前知っているから。俺はニルアルだ、見ての通りエヴァイスの兄だ。」

ニルアルはそう言って小さく咳払いした後、「で?」と言葉を続ける。


「それで、ルーザッファの令嬢がどうしてここにきたんだ?いつもなら他の奴らと居るだろ?」

「大叔父様に頼まれたんです。ここにいる方が何も食べずに篭りっきりだからパンの差し入れをするように言われまして。」

「ディオス様が・・・ふーん。」

タイミングを見計らったようにシナウスがお茶と一緒に皿の上に乗ったパンをニルアルのそばへ置く。

ニルアルは目を細めてそのパンを手に取る。

ふんわりとした胡桃パンをしばらくしげしげを見た後一口食べる。

じっくりと咀嚼した後続けて食べるのでどうやらお気に召したようだ。

「これって、エヴィスが作ったんだろ?」

「ご存知でしたの?」

「ここ最近魔塔の話題だからな。・・・そうか、あいつこんなに美味しいものが作れるようになったのか。」


あれ?なんだか・・・。


「ニルアル卿は最近エヴァイス卿と喧嘩をされていると聞いておりましたのでパン職人には反対されていると思っていたのですが、今見る限りなんだかご自分の事のように喜ばれていますわね。」


ぴたりと食べることをやめ、しばしそのまま黙っていたがニルアルはパンを皿の上に置きお茶を飲む。


「・・・・俺は反対なんてしていない。」

「え?」

「反対なんてするわけないだろう、あいつの決めた人生の選択に俺が怒るなんておかしい話だ。」


思っていた反応ではなかったティリエスが首を傾げているとシナウスはニルアルの空になったカップへ新しくお茶を注ぎながら口を開いた。


「もしかして貴方方が他とは違う人として言われる、その事で自分達ではない違う場所へ行こうとするエヴァイス様の邪魔をしないようにニルアル様はエヴァイス様と疎遠されるおつもりでそのような行動をとられたのですか?」


「・・・・・・・・・・・・・・・。」


シナウスの言葉に黙ったままのニルアルの様子を見て図星だとわかる。

でも、どうしてそんなことをしたのかティリエスは理解せずにいるとややあってニルアルが口を開いた。


「・・・・俺の見目では直ぐに差別対象とわかる。外へ行こうとしているあいつの重枷にはなりたくはないからな。俺はこのまま魔塔に居るつもりだしあいつとはこのまま別れた方が良いんだ。」

「・・・ニルアル卿。」

「それが最善だと思っている。そう思ってあいつを遠ざけたのに・・・あいつ、優しすぎるんだよ。」


そう言って、持ってきたパンを選んだのはエヴァイスだろうと言うことをニルアルが聞くのでシナウスは迷いなくそうだと答える。


「俺の好物が入ったパンなんだ。どんなに冷たくつき放してもわかっちまうんだろうな。こういうとき双子って厄介だ。」

「・・・・・・・・・。」

「だからもうあいつが嫌いになるようなことをするのは辞めるつもりだ。その代わりにあいつをどんなことをしても助けるってそう決めたんだ・・・それで、あんたに頼みがある。」


と、ティリエスに対してかしこまった態度を見せたニルアルにティリエスは目を丸くさせる。

「あいつの目が見えるようになるための力を貸してくれ。」

「え?でもそれは「誤魔化すなよ、あんたはもう分かっているんだろう?どうやったら色が見えるようになるのか。あんたにはその知識が備わっている、そうなんだろう?」・・・・・。」



確信めいた言葉にティリエスは隣にいたシナウスと思わず見つめあった。


しばらく見ていたがシナウスが目を伏せたことでティリエスは今度はシナウスから目の前にいるニルアルをじっと見つめた。

射抜くような目を暫く見ていたティリエスもまた目を伏せて小さく息を吐いた。


「・・・・大叔父様ですわね、貴方に入れ知恵したのは。」


今の状況を意図的に作ったと思われる人物の名を口にした。


いつも読んでいただきありがとうございます。

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