物語の主人公は新たな課題に頭を悩ませる。(パン職人を探せ!そして駆け落ちを阻止せよ!⑭)
いつも読んでいただきありがとうございます。次回は2/8(水)投稿予定です。
「随分と拗らせてるなぁ、お前達は。」
「僕は拗らせたいなんて思ってないんですが・・・。」
ディオスの言葉にエヴァイスはそう答えながら彼は自分自身の左頬をなぞる。
そういえば3日前に妙に片方だけ腫れていたのを思い出す。なるほど、あれは喧嘩して受けた怪我だったのか。
前が見えなくて派手に転んだと言っていたエヴァイスの言葉を真に受けていたティリエスは納得した顔をし、エヴァイスの方を見やる。
でも、このままなんていうのもなんだかな・・・、何とかして仲直りする方法はないのだろうか?
うーんとティリエスも考え始めた姿を見ていたディオスは何か閃いたという顔になる。
「そうだティリエス。」
「?なんですか大叔父様。」
「実は昼食を抜いたやつが1人いてな。そのパンを持っていってくれないか?」
「・・・・えぇ、構いませんが。」
え?私が?
ディオスの言葉にティリエスはなぜ自分がと思いながら返事をする。
彼女の返事を聞いて満足そうに頷いたディオスはすぐに周りの部下とエヴァイスを集め話しを始める。
どうやら今回の義手の失敗を参考に次はどのようなもので試作を作るか改善策について話し合っているようで、ティリエスは蚊帳の外となったので仕方ないなぁと思いつつ、隣で既に持っていくものを準備していたシナウスと共に部屋を出ていった。
魔塔ではディオス達がいた部屋にほぼ入り浸るかたちだったので書庫の場所を把握していなかったティリエスはシナウスの案内でディオスに言われたとおり書庫へ向かう。
立地は遠くで正直不便な面はあるが内装は一球ものでこったものだとティリエスがマジマジ見ていると先に歩いていたシナウスの足が止まり、自然とティリエスも止まった。
「姉様・・・ンンッ、失礼しましたお嬢様。こちらの部屋でございます。」
「ありがとう。」
品物を持っているシナウスの代わりにティリエスが扉を開ける。
古い本特有の匂いが鼻を掠める。
ティリエスが一番よく嗅ぎ慣れた匂いであるその匂いに何処か安心感を感じながら部屋入ると大量の書庫に圧倒される。
扉が小さい分こじんまりした書庫を想像していたけど・・・一番広くて貯蔵量も多そう。
それよりも・・・。
キョロッと辺りを見回す。
ティリエス達が入ってきても中から全く人の気配を感じられず、本当にここに人がいるのだろうかとティリエスは疑いながらさらに奥へと進むと本が乱雑に置かれている机があるのが見えた。
気になったティリエスは一つ本を手にもつ。
「・・・これアンティクアリィの文字が書かれた本だわ。」
「へぇ、随分と懐か「そこにいるのは誰だ!」」
急に頭上から声が聞こえたティリエス達はパッと頭上を見ると本棚の高い場所にいる人間と目が合う。
「あれ?エヴァイス卿?」
そこには先ほどまで一緒の部屋にいたエヴァイスが顔を出して見下ろしていた。
ティリエスが言った名前に眉を顰めた彼はそのままバッと降りてきたのを見て慌てていると、彼は器用に腕と手を使い
物を掴み伝って降り、彼女の目の前の机の上で逆立ちして両手で着地しその場へと胡座を描いて座り込んだ。
猿のような運動能力に驚いていると、彼の脚を見てティリエスはもしかしてと口を開いた。
「もしかしてエヴァイス卿の・・・お兄様ですか?」
「・・・・そうだけど?」
ぶっきらぼうな物言いで目の前の彼は答えた。
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