物語の主人公は新たな課題に頭を悩ませる。(さてどこから手をつけるべきか・・・全部か?㉔)
いつも読んでいただきありがとうございます。次回は12/28(水)投稿予定です。(なんやかんや予定で年末年始どうしようか考え中、次回のお知らせの時お知らせします。)
まさか、こうもすんなりいくとは・・・。
ティリエスは目の前にいる騎士達が山へ向かうための散策準備している様を眺めながら心の中でポツリと呟く。
お父様達にとってはあり得ない出会いと出来事から5日後。
お父様はトリシネートと共に先ず行ったのは事情を知らない領地の騎士達への説明だった。
その時私はその場にはいなかったが後でトリシネートの話しによると、父の話しに最初は戸惑い、困惑した様子だったようだが、トリシネートが自ら話し父の真剣な表情に彼らも信じ今回の件に積極的な態度をみせた。
何より騎士である彼らは霊獣持ちが少なく、トリシネート達を相棒や家族として想っている人達ばかりだったということもあって彼らはすんなりと協力してもらう事ができた。
そして、今まで頑なに己のことについて黙っていたトリシネートの父ラニングはというとーーー。
「あんなに父上はしゃいじゃって、息子として恥ずかしいわ。」
「!トリシネート、もう自由に歩き回ってもいいの?」
後ろから聞こえた声にティリエスは振り返り、そこに立っているトリシネートを見ると、彼は私を見た後黙って隣に立つとある箇所を静かに見つめた。
その先には、ラニングと父が何やら会話をしながら部下に指示を出している光景だった。
そう、ラニングの説得はお父様がしたのだという。
どういう説得をしたのかはトリシネートも私も知らないが、1人と一頭の光景を見れば一目瞭然だ。
その後トリシネートは偶然とはいえ約束を破ったことで説教を食らい、一族のけじめとして暫くは自由行動を制限されてしまったが隣に立つ彼を見るとちっとも気にしていないようだった。
「昨日、お許しが出たのよ。まぁ、仲間が父上に直談判してくれたからだけど。」
「そう。良かったですわね。」
「・・・なんか分かったかも、あの時ティリエスがあんな顔をした理由。」
ポツリと漏らしたトリシネートにティリエスは何が分かったのか?と表情で問いかけると彼はティリエスの方を見ずまっすぐ見たまま口を開いた。
「アタシが喋ったダメと言われていた時、あんた微妙な顔をしてたの。少し苛立ちどころかすんごく怒ってたんでしょ?アタシの父上に。」
「・・・・・・・。」
「その時はよく分かってなかったけど、怒られることに腹を括ったら・・・なんだか誰かと話ししてみたくなってアンタのお師匠に話しかけてくだらない話しとかいろんな話しして・・・アタシ自分の分かっていなかった所でさ、何年もこういう機会我慢させられてたんだって。」
そう言ってトリシネートはひとつ息を吐いた。
「アタシはあの時のことで怒ることはないけど、もうそんな我慢は辞めるわ。だって他の人とお話しできるっていうのがどんなに楽しいことなのか知ってしまったんですものね。」
「・・・そう思ってもらえるなら、こうやって策を練ったかいがありましたわ。それはそうとトリシネートも山へ?」
「いいえ、父上に止められたの。険しい山にはアタシにはまだ早いって。失礼しちゃうわ、これでもアタシ足腰には自信があるのにね。でも・・・意外だったわ。」
「何が?」
「アンタも黙って1人で解決するような子と思っていたんだけど、まさかこれだけの人を巻き込むなんて。」
周りの人間を見てトリシネートがそう言うと、ティリエスも小さく笑う。
「私も、ちょっとは成長したってことですわ。」
「何よそれ。」
そう言って私たちが笑い合っているとこちらへ父がやってきたので、ティリエスはアドルフを見つめた。
「随分と打ち解けたようだねティリエス。」
「はい、私の新しいお友達ですわ。」
ティリエスの言葉にアドルフはそうかと一言漏らした後、トリシネートの方を見やる。
「ティリエスの事頼むぞ、トリシネート。」
「えぇ、任せて頂戴!アタシとこの子は相棒であり何より美を追求する同士なのよ!当然面倒見るわ!」
げ。やっぱり覚えてたか・・・逃げるのは無理かーくそ。
今回の騒動で忘れてくれないかと密かに思っていたティリエスは心の中で悪態をついていると、アドルフが小さく笑う声が聞こえた。
「そうか、なら安心だな。ティリエス。」
「はい。」
「・・・・・・いや、なんでもない。ティリエスの出立前には戻ってくるから良い知らせを持って帰ってくるからお母様達といい子で待っているんだよ。」
ほんの少し言い淀んだアドルフを不思議そうにみたが、ティリエスは父の言葉に元気よく返事をしたのだった。
いつも読んでいただきありがとうございます。