物語の主人公は新たな課題に頭を悩ませる。(さてどこから手をつけるべきか・・・全部か?㉒)
いつも読んでいただきありがとうございます。次回は12/23(金)投稿予定です。
「ティリエス、その会話を聞いたと言う場所はどこだい?」
「はい。こちらですわお父様。」
「・・・・なんだか少し拍子抜けしたな。」
「何が?ガルグ。」
外へ出て先頭に立ち案内するティリエスとその彼女へついて行くアドルフの後ろ姿をさらに護衛がてら後ろからついて歩き眺めながらポツリと漏らしたガルグの言葉に、隣を歩くシーヴァが反応する。
小さな声だったので前を進む2人には聞こえておらず、前に注視しながらガルグはそのまま話しをし始める。
「いやだってさ、シーヴァも聞いただろ?お嬢様の事、そりゃあアドルフ様の周りにいる人は夫人も含めてなにかしら凄い人達がいるからその影響があってかもしれないけどさ。」
「そうだな・・・確かに偶然がこうも良い方向にいくなんてこと、何度もそうはないし。恐らくだが幼いながらもお嬢様は直ぐにその物事の本質を見抜く天才なんだろう。それに傍にはその専門の熟練者である、大人達もそれに気が付く人間が多かったから・・・という背景もあるんだろうが。」
「でもさ、帰還する前にその報告を聞いた時さ正直俺、お嬢様の事結構澄ました顔で大人顔負けの事を言って論破するちょっとかたい子供かなってイメージに思ったんだよな。ほら、大人に楯突く子供とか我が強い子供?とまぁそんな感じにお前も正直そう思っただろ?」
「うん・・・まぁ、確かに少しは思ったな。でも実際に会えば全く真逆だったけどな。」
そう言って、話すシーヴァは前のティリエスを見ると父親であるアドルフに何か会話をしているようで、その姿は何処からどう見てもただの子供それだった。
「普通の子供と変んねぇ。幽霊が怖いから一緒に調べて欲しいだなんて可愛いもんだ。それに、お嬢様全然謙虚だし王都にいた他の子供の方が威張っていたぜ。俺、貴族の子供基準があんなのかと信じかけた時、お嬢様にどう接すればいいのか本気で寝ずに考えたことがあるぞ。」
そう言ってガルグは少しげんなりしながら遠い目になる。
「もうあんな風に子守りするのはごめんだ」と彼がぽつりと漏らした言葉にシーヴァもまた同意見だと頷く。
「うん・・・俺達の故郷の領主のご息女はとても稀有な存在だという事だ。」
「な?確かに大変な事も多々あったけど・・・俺もここの領地出身でよかったって思うよ。」
昔を思い出ししみじみと語っているなか、シーヴァはでも・・・と前の2人をみやる。
アドルフ自らどうしてわざわざ彼がわざわざ仕事の手を止めてまで調べに行こうと言い出したのか理解出来ずにいた。
確かに仲の良い親子なら今見えるこの光景もおかしいことはない。だが、アドルフは手が空いているならまだしも多忙な時期、ましてや王都で起こった後のごたごたで普段以上に多忙となっているはず。
ひと昔であれば、例えば俺たちや信頼おける部下にこのような些細なことを調べさせるのに・・・。
この話しの何が気になったのか・・・それとも、予期せぬことが起こっているといつもの良くない勘が働いたのだろうか?
・・・用心したほうが良いのかもしれないな。
「着きました、この建物です。」
ティリエスの声にシーヴァがハッとして更に奥に目をやると、それはこの屋敷に設置されている保管庫の一つである建物だった。
「ここか・・・確か例の人参が保管してある倉庫だったな。」
人参?・・・なるほどこれの事か。
アドルフの言葉にシーヴァがふと上に目にやるとそこには人参を生やした大きな木がそびえたっているのが見え、これが以前報告があった奴かと納得する。
「戸が少し開いているな・・・ガルグ、どうだ?」
先ほどから何も言わないガルグにアドルフが声をかけると口を開く。
「・・・確かに何か話し声が聞こえます・・・1人、いや2人ですね。」
「え?」
ティリエスは人数を聞いた途端びっくりした様子で思わず声が出、アドルフは少し考えると口を開く。
「殺気も感じられないし・・・賊ではないようだが、一応警戒を。武器の使用は許可しない。」
「「ハッ!」」
「お、お父様。」
「大丈夫だ、ちょっと見てくるだけだから。」
不安がるティリエスにアドルフはそう言って3人は気配を消し、扉の近くで待機して中の様子を伺う。
すると何やら談笑しているのか、薄暗い倉庫の中から声がする。
「幽霊・・・ではなさそうだがな。」
3人は見合わせて中へと入っていった。
「誰だ!そこにいるのは!」
「へぎゃ?!」
「ギャッ!な、何よ!びっくりするじゃない!」
ガルグの言葉に驚き声を上げた人物を3人が確認して思わず驚きもう一度確認する。
驚いたままアドルフが口を開いた。
「貴方はルル村の村長のラーソさんとラニングの子馬じゃないか?」
アドルフは困惑したまま1人と一頭を交互に見つめる。
「ってか、馬・・・喋ってなかったか?なんで?」
アドルフの困惑した理由と疑問を口にしたガルグにシーヴァはただただ黙って驚いたまま動かないでいた。
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