物語の主人公は新たな課題に頭を悩ませる。(さてどこから手をつけるべきか・・・全部か?⑳)
今日は少し短めです。いつも読んでいただきありがとうございます。次回は12/19(月)投稿予定です。
さらに翌日、自分の専属を決めると父と約束した日。
ティリエスは目的地である父の書斎へ赴くと、一度だけ小さく深呼吸し決意しドアノブをノックする。
書斎から入るように言われたティリエスはそのまま扉を開ける。
「やぁ、来たかティリエス。」
父に返事をしながら父の隣に立つ男性2人に目がいった。
風貌やがっしりとした体躯から鑑みて騎士達だと理解する。
「ティリエス、紹介しておこう。右はガルグ左はシーヴァだ、2人とも我が領地ガルグは騎士団総長シーヴァは副総長を務めている。因みに私の幼馴染だ。」
「やぁ!君がアドルフ様の娘か!噂は色々聞いているよ!」
「確かにアドルフ様の要素を受け継いでいるけど可愛らしいお嬢さんだ。」
2人がニカっと笑って握手を求めたのでティリエスはそれぞれ握手をする。
父の親しい人で陽気な人は結構珍しい・・・いや、もっと他にもいるんだろうけど、そういう人たちが霞むほど濃いもんなあの人。
ここにはいない常に商売を考えているオーガの存在を思い出し、ティリエスは内心口笑いをしていた。
「初めまして、父からご紹介に上がりましたティリエスです。以後よろしくお願いします・・・あの、私の噂というのは?」
ガルグの言葉にティリエスは首を傾げるが彼はあぁっと笑いながら口を開く。
「ほらあれだ、領地の特産品を考案したり、流通を広げたりしたんだろう?」
「えっ?!」
思わず父の方を見やると少々苦笑いを浮かべていた。
「すまない、夜通し呑んでこいつらとは親しい間からだったからつい・・・な。」
夜更けに戻ってきて夜通し呑んでいたの?!タフだな・・・っていうかあのお父様が押しに負けたの?!
まさかの父ポロリ発言にティリエスは口をあんぐりしていると、もう1人の男性シーヴァが口を開く。
「いや、お嬢様。君のお父様は最初はオーガ達がしたと言っていたんだよ?でも、あいつらだけじゃどうも腑に落ちないから酒の勢いで追求してしまってね。」
「アドルフ様が箝口令を強いたと言うほどだから、勿論口外はしないつもりだ・・・、でも知りたかったのには理由があったんだよ。」
ガルグがそう言うとティリエスの前で膝を着き急に頭を下げたのを見てティリエスは驚く。
彼にならってシーヴァもその場で同じように首を垂れた。
「お嬢様には感謝しかありません。貴女様が考えた事が私達の両親や村の人々に豊かさを与えてくれたんだ。」
「お嬢様は知らないかもしれません、この領地は確かに飢餓に苦しむことはありませんでしたが決して裕福ではありませんでした。それが貴女様の思いつきから商売や生産がまわり始め更には平民が勉学できる学舎まで立ててくださった。・・・・勉学に触れなかった私達をアドルフ様がこうして召し抱え面倒を見てくれたようにお嬢様も最大の感謝を述べます。」
「え?いや、その・・・2人ともどうか顔をあげてください。」
困惑したままティリエスは目の前の男2人に顔をあげてもらうように言うと右頬をかく。
「参りましたわ・・・私、そんな風に思ったことはなくて・・・ですからそんな感謝など。」
確かに商売を見越してことを起こした部分はあるので結果としてそうなっただけで、こう感謝されると正直居た堪れない。
こういう時、子供の純粋さのカケラどころか良心としての純粋さもない事に気がつかされる度良心が痛むティリエスにとって2人の言葉は重石のように思え素直に喜べないでいた。
せめて領民のために!とか思えばよかったけど全くそこまで考えてなかったしな。
そんなティリエスにガルグは首を横に振る。
「そんな謙遜なされる必要はないです!」
「は、はぁ・・・えと、ありがとうございます。」
困惑気味に返した返事した後、父であるアドルフからの咳払いが聞こえ一同そちらを見やる。
「そこまでにしてあげてくれ。娘はあまり大きく賞賛されると萎縮してしまうのだ、ともかくティリエスのした事によってこうして色んな人が感謝されているということだ、ティリエスもそれを覚えておきなさい。」
「少々落ち着きませんが・・・わかりましたわ、お父様。」
「うん、それじゃぁティリエス。君の護衛の人間を決める・・・というか確認なんだが、ティリエス、本当に彼らで良いのかな?」
アドルフの言葉にティリエスは姿勢を正した。
いつも読んでいただきありがとうございます。