物語の主人公は新たな課題に頭を悩ませる。(さてどこから手をつけるべきか・・・全部か?⑰)
いつも読んでいただきありがとうございます。次回は12/12(月)投稿予定です。
「っていうか、やっぱりレンレンは驚かないよねぇ。」
驚いているティキに対し冷静なレイの反応にグリップはこういう反応になると分かっていたようにそう言いながらソファにどかりと座ると、ティリエスが淹れて差し出したお茶のカップを受け取る。
そんな彼にレイはニヤリと笑う。
「貴方の気配はなんとなくわかっていましたからねぇ。」
「だよね~流石レンレン。」
「まぁ、お前の気配を消し方もなかなかだと思うがな。」
男同士笑い合いあっているのをティリエスが眺めていると急にすくっとティキは立ち上がるので誰もが彼女へ視線とやると、ティキは険しい表情でグリップの近くへ行き仁王立ちにした。
彼女の様子が変わったのをティリエスは瞬時に見抜き何事だと黙ったままティキとそんな彼女を見つめてニコニコと笑みを浮かべるグリップを見比べる。
「グリップさん・・・どうしてっ!」
怒りを押し殺すように絞り出して最初に話し出したのはティキだった。
「え?何が?」
「何が・・・何がじゃないです!グリップさん今度隊の変更で総隊長へ任命されるって言っていたじゃないですか!血を滲む特訓をして掴める地位なんだって、それを喜んでいたのにどうして?!」
え・・・なにそれ初耳なんだけど・・・ていうかなんでティキさん・・・じゃなかった、ティキが知ってるの??
ティリエスは彼女の言葉に内心驚いていると当事者であるグリップが「あぁ~それ」となんてことないように間延びで答えた。
「この前の手紙に書いてたやつね。確かにその時はよっしゃー!って思ったんだけどさ~・・・。」
そう言って、グリップはジィっとティキの方を見つめる。
その真っすぐに見つめるグリップの眼にティキは怒りを鎮めその眼で見つめられるのがいたたまれないのかティキは眼を逸らした。
そんな彼女にグリップはほんの少し微笑んで口を開いた。
「自分の家の騎士をしているより、まぁ俺にもしたい事や欲しいモノが出来たからね~。」
「したい事に・・・欲しいモノ?」
「?」
ん?今の役職捨ててもいいほどそんなお眼鏡叶うものこの領地にあったっけ?
ティリエスがそんなことを思っていると愉快そうにレイは笑い声を漏らす。
「ほほぉ?そういうことか・・・なにやら面白くなってきたなぁ?」
女子2人はピンと来なかったがレイだけは彼の言っている内容を理解したのか、一瞬だけキラリと不自然に瞳がひかり先ほどより面白いものを見つけたと言わんばかりの笑みを浮かべていた。
え?何?ちょっとわかんないけど?どゆこと?
思わずグリップを見やるが彼はただ苦笑するだけだった。
「まぁ・・・それは何かとは言わないけど、一番の近道がティリエスちゃんの護衛の仕事だったってわけ。だからこれで良いんだよ。」
皆に聞こえるように言うが、視線はティキの方を向いているので彼女に言い聞かせるように言うグリップにティキはまだ納得していない様子だった。
「でも、だからといって今まで積み上げてきた貴方の地位を捨てるなんて・・・。」
「うんまぁ、そこはラディンやヴォルとかにアホ連発いわれたけど・・・まぁ皆納得したし俺がそれでいいって思ってるからそれでいいの!はい!この話しはおしまい!」
強引に話しを終わらせた彼にティキは助けを求めるようにティリエスの顔を見つめる。
ティキの願い虚しくティリエスは静かに首を横に振った。
「ティキも思う事はあると思いますが、彼の人生をどうこういう事は出来ないわ。それに私は彼を護衛にと任命する予定ですし彼に帰られても困りますから。」
「・・・・・畏まりました。」
ティキはこれ以上自分が言っても彼の考えは変えられないと判断したのか渋々頷くとソファに静かに座った。
う~ん・・・昨日の話しからでもグリップさん何もいってなかったからなぁ・・・、というかこの2人手紙をやりとりする仲だったんだ・・・グリップさんそういう律義なやりとり嫌いそうなのに・・・以外だ。
そんなことをティリエスが思っていると一つ手を叩く音が耳に入りそちらをみるとレイが両手を叩いた姿でこちらを見つめていた。
「少々今後の事で楽しみになってきましたが・・・お嬢様、そろそろ話しを進めてはどうでしょう?彼の事でこのように畏まった席を設けたわけではないでしょう?」
彼の言葉にハッとすると、何時しか真剣な表情でこちらをみつめる3人の視線にティリエスも冷静になり、一つ息を吐いた。
「・・・そうですね、そうでした。それでは揃ったことですし少し話しは長くなりますが、正直突拍子もなく私も理解していない部分もあるんですが、・・・実は―――。」
そこから私は、彼らに今までの事を話し始めた。
自分には今以上に生きた今の世界ではない別の世界の記憶を持っているという事
こちらへ生まれ変わる前に両親や祖父母を助けた出来事があるという事
記憶を持ったまま産まれ今まで生きていたが、それが私の他に後2人も居る事、しかも自分達はこの世界をもう一度やり直すために女神の力を使って回帰していた事
それらを彼らの反応をみながら順を追ってティリエスは話した。
3人とも口を挟まず静かに彼女話しを聞き入れ、ティリエスが話しを一区切りできた頃にはお茶はすでに冷めきっていた。
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