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題名はまだない。何せこの物語はまだ途中なんで!  作者: ちゃらまる
第5章〜王都生活編〜
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物語の主人公は新たな課題に頭を悩ませる。(さてどこから手をつけるべきか・・・全部か?⑦)

いつも読んでいただきありがとうございます。次回は11/16(水)投稿予定です。



「ほ、本当ですの?」


思っても見なかった返答にティリエスは思わず聞き返した。

実はティリエス自身でもこっそり独自に鑑定の能力を駆使して調べていた。

けれど、どんなに書物を読み込んでも調べても自分の能力では一向に進展がなかったのだ。


なので彼の言うことに思わず耳を疑ったのだ。

そんなティリエスの驚きに元村長は穏やかに笑う。


「出来るとも。ほれ弟子よ、前にも話しはしたと思うがのぉ。ほれ、ここいらの土が真っ新な雪のようじゃと。」


そう言って彼は頭上を見上げたのでティリエスもそれに倣い頭上を見やる。そこには風で葉を鳴らす生い茂るパースニップの木々がそこに立っていた。


「確かに植物にとっては障害も何もないよく成長する・・・見た通りじゃ。じゃが、じゃからこそこの子は大きな欠点をもっとる。」

「大きな欠点ですか?」

「病気もなんも持っていないからのぉ、誰にも言わんかったが・・・素直に育ちすぎての、強い実がついとらん。確かに前に比べれば大きくなってはいるが最初に比べてな・・・ほれ。」

そう言って彼が指さした場所をティリエスは見る。

パースニップの木の下を指さした場所には実にならず木から落ちた小さいどんぐりの実ぐらいの実があちこちに落ちてそのまま萎れ枯れているのが見えた。


「倉庫に保管している物も弟子の持っている物と比べると艶もハリの元気がない・・・一目瞭然じゃ。」


確かに今生っている実を見れば色も関係しているが明らかこちらの方が目を引くほど存在感そして元気があることにティリエスも初めて気づかされた。


「・・・本当ですわ。」

「良すぎる土もこの子らにとってはある意味毒じゃ、なるにはなるがまるで個性が感じられん・・・じゃから、少しストレスを与えるんじゃ。」

「お師匠様、そのストレスを与えるにはどうするんですか?まさか木に刺激を与えるんですか?」


そう言うと、彼はホホホと控えめに笑った。どうやらその答えは違ったらしい。


「そういう方法をとる植物もあるが今回は違うのぉ。この子の場合は薬をあげなならん。」

「薬ですか?」

「そうじゃ、ある水を与えればこのような実がつく可能性が出て来るじゃろうな。」

「水?」

「わしらの村ルル村にはシロップの木があるじゃろ?その木にだけはちょいと変わった水を与えておるんじゃ。あの水は木にとって刺激になるようでの、それでシロップの木も直ぐに枯れることはなくなったんじゃ。あれを与えればええ。」


その説明にティリエスはどうやら普通の水ではないのだと理解し、彼の言う事に成程と頷く・・・が直ぐにある問題が浮上する。


「でも、その水を汲むのにルル村まで行くには遠すぎですわ。この辺りにも存在していないんでしょう?」


ここから馬車でも時間がかかる。

変わった水と言う程だろうし、ここいらにある水にはないだろう。

ティリエスの問いに何の躊躇もなく彼は肯定した。



「そうじゃ、この辺にはない。その水は山からの湧水じゃ。それまでの水路を作り流して与えておる。でも、この水は濃度が実は変わるんじゃ。」


濃度?


「山の頂上にいけば行くほどその水の濃度が濃いんじゃ色で分かる。昔試しに掘ったらほんの5メートル場所変えるだけでも違ったんじゃ。それにこの子は水はあまり好かん体質じゃ。じゃからその成分が濃く溶け出ている水をほんのコップ一杯与えればええと儂は考えておる。」


「そうなんですね・・・それなら何とかなりそうですわね!では早速日時を決めてそれを採取しにいかないと!因みにお師匠様、その山はどこになるんですの?」


その言葉に打開策を見出し、ティリエスはそれが何処にあるのか聞くと彼は目をウロウロさせた後ある場所で止まりスッと指さす。


彼の指先を目で追いその先を見たティリエスは何処の山なのか分かった瞬間、一瞬驚いて目が見開き、そしてその事実にだんだんと目が据わっていく。


「お師匠様・・・。」

「ん~?」

「あそこって確か・・・禁足地とされている山の一つですわよね。」


彼が指さした場所。

そこは我が領地と封印されている土地との境目である、所謂足を踏み入れてはいけない山脈の山という事を彼に指摘する。


そう言うと彼は何てこともない様子で口を開いた。


「なぁに、ちょっとこっそり登れは大丈夫じゃて。結構登ることになると思うが、まだ儂も現役じゃ。」

「・・・・・・・・・・・。」


その言葉にティリエスは一気に不安になったと同時に彼に、ある事をもう一度伝えるために口を開く。


植物に関しては流暢に話すがきっと彼は忘れているだろう事実を再度知ってもらわないと・・・うん。


「お師匠様。」

「なんじゃ?」

「私、その禁則地を設けた領主の娘なんですけど・・・流石にルールを破ることは・・・ちょっと・・・・。」

「・・・・・・・・・・・・・・・・。」

「・・・・・・・・・・・・・・・・。」


無言のまま2人は互いを見合わせる。そして暫くして彼が驚いた目でこちらを見つめた。


「弟子よ、お主・・・領主様んとこの娘じゃったんかっ!?」

「やっぱり忘れていたんですか・・・・。」


このセリフを聞くのも2度目だなと思いながら彼の質問にこっくりと頷いたのだった。


いつも読んでいただきありがとうございます。

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