物語の主人公は新たな課題に頭を悩ませる。(さてどこから手をつけるべきか・・・全部か?③)
いつも読んでいただきありがとうございます。次回は11/4(金)投稿予定です。
兎も角。
パースニップの件についてそれ以上聞き出せば、父が思わない場所で彼に対して不敬罪として尋問し聞かなくてはいけなくなると判断したティリエスはこれ以上は何も聞かなかったとそう彼に伝え、この話しはこれで仕舞にした。
元村長も思う事があったので大きく頷くとそれ以上の事を喋ることなく。当初の目的である作物の育成についてティリエスは教わることにした。
やはりフルクトースの実・・・今では砂糖として知れ渡ったシロップの木を生育した人だけの事はあり、やはり実のある内容を丁寧に話してくれる。
熱心にそんな話しを聞いていると元村長を探していた母の使いの者がやって来たので、畑の事について話すのは楽しいのか上機嫌で元村長は、母の使いの者が来て欲しいと言われると頷き、よろよろと立ちがって私に軽く挨拶して向かっていったのを見届けた後、私もまたある場所へと向かった。
「―――ということを聞いたんですけど、どうなんですかギリア?」
「・・・・・・・・・・・。」
やってきた厨房でギリアを見つけるや否や、先ほどの話しを搔い摘んで話すとギリアはバツが悪い顔をして視線を少し彷徨わせた後小さく咳ばらいをした。
最早その行動で己は黒ですと言っているようなもんだが、ティリエスは口をへの字にして彼の言葉を待つと、そんなティリエスの様子に誤魔化すことが出来ないと分かったのか観念したギリアはしおしおとしょげた姿を見せた。
「すみませんお嬢様・・・私も食べました。」
「やっぱり・・・どうしてそんなことをなさったんです?いくらお父様が寛大でも貴族の命に背く事はいけないと、貴方だって分かっていたでしょうに。下手をすれば罰したくなくても罰しないといけないことも出てくるんですよ?」
しょげているギリアに小さくため息を吐きながらティリエスはそう言い返す。
寧ろ私よりもギリアの方がそういう線引きには厳しい面を見せることが多いのに、どうして今回だけそんなことをしたのか理解できないでいると、未だ俯いているギリアからぶつぶつと何かを言っている声が聞こえ、ティリエスは思わず眉をひそめる。
「・・・・・―――て、そ・・・・・から―――。」
「?・・・ギリアなんて言っているんです?」
小さすぎてよく聞き取れなかったティリエスは聞き返すと、急にギリアがバッと顔を上げたのでティリエスは思わずのぞけった。
「だってお嬢様!新しい食材が!しかも誰も口にしたことがないようなものが目の前にあるんですよ?!それを食べられないなんて!俺にとっては拷問ですよ!!」
ギリアは我慢していたものを吐き出すように言い切ると天を仰いだ。
そんな彼の姿にティリエスは目が点になって数秒後、そういえばギリアは元々こういう人間だったことを思い出した。
普段は真面目気質だが料理に関することには変態、そして探求心が人の倍以上ある人間。
そんな人間が馬の如くぶら下がったニンジンに手を出さないという選択はないのだ。
ティリエスは大袈裟に天を仰いているギリアにふぅと息を吐く。
「・・・まぁ、もう過ぎた話しです。お父様には言いませんが気をつけて下さい。ここの領民であればとやかく言う人間は居ませんが最近は色々な人が来てますからね。」
王城での事件後南の公爵家、つまり宰相とは犬猿の仲であるという風に噂されていたが、それは宰相が第2夫人を信用させるためのカモフラージュだったという、一体どこからそんな話しが出てきたのか謎だが、貴族の中では北と南の公爵は実は犬猿の仲ではなく友好関係にあるということになっているらしい。
そうなれば南についていた貴族の態度にも変化が訪れる。
まぁ、一言でいえばごますりである。
様々な新しい調味料や菓子類という娯楽品のことも相まってこれを機に北の公爵である私達にお近づきになりたいという人間が出てきた、というわけだ。
殆どお父様が査定してから領地に招待しているから今の所変・・・甘い蜜だけを吸おうとする貴族が招待されてはいないし、皆礼儀を知った貴族達ではあるが領民に対してもそうなのかいうと微妙な部分もある。
貴族の方が上だという古い風潮をまだ思っている貴族も中にはいるからだ。
だから父もそれを懸念しその辺りはどうにか調整して貴族たちに来てもらっているが、全て父の思惑通りに上手くいくというわけではないし用心に越したことはないのだ。
「・・・お嬢様の言うとおりです。今回の事は己の欲望を優先してしまった、肝に命じておきます。」
「そうしていただけると安心しますわ。・・・さて、この件はもう終いですわ。元村長さんにもそのように話しましたし。それでギリア今度は一体何を悩む事があったの?」
そう、ここへ来たのは忠告も兼ねてだったが本当の目的はギリアが珍しく相談したい件、何かを作りたいが良いアイデアが浮かばないとかでこうしてやってきたのだ。
ティリエスの言葉にギリアはコクリと頷く。
「製法の件で・・・お嬢様、硬いブレッドを柔らかく作り上げるにはどうしたら良いのか、何か知恵はないでしょうか?」
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