物語の主人公は新たな課題に頭を悩ませる。(さてどこから手をつけるべきか・・・全部か?②)
いつも読んでいただきありがとうございます。次回は11/2(水)投稿予定です。
こっそり誤字脱字を教えてくださった妖精様ありがとうございます。
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確かに彼らの言い分も分かるし、私が説得しても彼ら全員の心を動かせるとは思えない。
それなら、シナウスの提案を実現させた方が良いと私自身も思った・・・けどなぁ。
「どうやってシナウスを私の従者として採用させたら良いんだろう?」
そう、問題はシナウスをどうやって父に紹介すれば怪しまれないか、それが一番問題だった。
彼はこの世界では何の経歴もない、立ち振る舞いは従者として完璧であるが身分を証明するものがないのだ。
当然、何者なのか父は調べるだろう。
その辺りは徹底しているのでごまかす事が出来ないのは明白だった。
その父をどうやって出し抜けば良いのか、一つだけ方法があるといえばある・・・が。
「まだ、決めかねているんですよねぇ、本当にその方法が良いのか・・・。」
一度、2人に相談してみようか。
私と同じ2度目の人生を生きている2人の顔を思い出しながらティリエスはそんなことを呟いていると、誰かの気配を感じ取りティリエスは後ろを振り返った。
「おぉい、弟子ちゃんやー。水やりは上手くできたんかいのぉー?」
「村長さん!」
やってきたのはルル村の元村長さんだった。
彼の肩には自分の霊獣であるホルアクティが乗っており、そういえば己が種から育てた畑の水やりが終わった後元村長さんを呼んできてもらう様に頼んでいたことを思い出す。
相変わらず畑以外の場所ではよろよろと今にもこけそうな状態で歩いている彼に若干ヒヤヒヤしながら見ていると、ティリエスの育てている一帯の畑の前に跪く。
ひざまづいた途端、のほ〜んとした表情は一変し彼の顔がキリリと強面の顔へ豹変する。
心なしか体躯もがっしりに見えるから別人に思えるほど・・・一体なんでこんなに変わるんだろう・・・・謎だ。
「うむ・・・弟子よ。やはりここの畑の土はええ状態じゃな。でも不思議じゃのー?」
「不思議なんですか師匠?」
弟子と言われたので師匠呼びで元村長に声をかける。
因みに弟子になった覚えはなく、今日初めてそう呼ばれた。
そんな彼を気にする事なく、ティリエスがそう聞き返すと迷う事なく彼は話し出す。
「土っていうのはその場所その場所で違うもんじゃ。たった1メートル先の土でも違う事だってあるんじゃよ・・・けんど、この一帯の土は綺麗なんじゃ。真っ新でまるで雪のようじゃ・・・けんどバランスよく栄養も行き届いとる。こんな土にしようとするには並大抵な者には出来ん事なんじゃよ。」
「・・・・それは不思議ですね。」
とある存在がティリエスの頭の中で一瞬過ぎったが、ティリエスはそれを黙ったまま彼の言葉に頷くと彼は首を傾げながら不思議だと何度も呟いた。
「薬草園の土も似たような状態だとエルフの子らも不思議がっておったが、この土じゃとどんな食物でも育つまるで魔法の土じゃ・・・じゃからほれ、これを見てみんしゃい。」
そう言われ、ホルアクティとティリエスは言われた先には大きな巨木がそこに立っていた。
優に樹齢300年は超えていると思われても可笑しくないその巨木はティリエスが試しに埋めたパースニップの枝の成長した姿だった。
報告によるとこれ以上木が成長することはなく、変わらず蒼い葉は瑞々しく幹は深い緑である。
変わったことといえば8本あった木はそれぞれ互いに捻り混じり合っている、まるで連理の木のように成長し4本の巨木としてそこに立っていた。
「最初に見た後から随分と大きぃなっての、実もまた生り始めておるの。」
「そういえば、カラフルな人参のような実はどうしたんですか村長?」
「師匠じゃで弟子よ。」
「師匠。」
言い直したティリエスにうむと納得したように頷くとスッととある場所へと指差す。
見れば指差した先には倉庫が見えた。
「あそこに保管してるのぉ。あの人参もどき、保管して数ヶ月経つが腐らん。色がなにぶんどキツイからのぉ毒があるんじゃと危険視する奴もおるから領主様が念の為食す事を禁止しておるが儂はあれは良い果物じゃと思っておるんじゃがなぁ・・・。」
「そうなんですね。」
「そうじゃ、それにのぉ・・・これは弟子にだけに言うんじゃがな?」
と、元村長はティリエスに前置きを言うと耳元に口を寄せた。
「儂ともう1人、気になってあれを食べたんじゃよ。」
「・・・・・・・・・・・・。」
良いのか?私、その領主の娘やぞ?
まさかのカミングアウトにティリエスは何も言えずに黙る。
嬉しげにあれは美味かったと話す彼を見ているとウキウキした様子で話し出す。
「料理が上手い男でのぉ〜そのおかげもあるかもしれんが、なんていうか人参の味が濃くねっとりとして甘いんじゃよ。しかも食べた後身体が楽になったり妙に頭も冴えてのぉ、あれは妙薬じゃよ〜。」
「そうなんですね。」
「そうじゃ、きっとあれは凄いものじゃよ。」
確かに、あれには魔獣を本来の能力を取り戻すほどの効果を持った食べ物ではあるので間違いない・・・というかもう1人って絶対あの人に違いない。
「・・・・ギリアにどういうことか訊かないとね。」
楽しげにしゃべる彼にティリエスはもう1人パースニップを食べたという思い当たる人物にティリエスは遠い目を向けながら、領主の命令に背いた行為を本人にバレたらどうするんだろうと少しばかり心配になる。
現に目の前で暴露してるし・・・とにかく、彼には口止めを・・・ん?今・・・?
とりあえず彼に会ったらとりあえず事情聴取するかと思っているとフッと何かが横切った気配がし、ティリエスはそちらに目を向けたが既にそこには誰もおらずただ草木が風で揺れているだけだった。
「弟子よ、どうかしたのか?」
「・・・いいえ、なんでもありません。それより師匠。」
「なんじゃ弟子よ?」
「私、その領主の娘なんですけど・・・バラしても良いんですか?勝手に食べたこと。」
その事を指摘すると元村長は数秒何を言われたのかわかっていなかったが、理解した途端、いつもの顔つきに戻り目をまん丸くさせて口元に手を当てた。
「弟子よ、お主・・・領主様んとこの娘じゃったんかっ!?」
・・・・え?まさかのド忘れか?!
元村長の言葉に2人ともが衝撃で黙ったまま固まり互いに見つめる。
「・・・父には言いませんよ?さっきのことは。」
「・・・なんじゃぁ、道理で領主様みたいに凛々しく賢い子じゃと思ってたんじゃよ。」
黙って食べたことは言わないことを言うと元村長はとってつけたように自分を褒めたので思わず苦笑いをしたのだった。
いつも読んでいただきありがとうございます。




