これが夢だというのならとっくの昔に目は覚めている(覚めたのなら、さぁ、素敵な毎日を迎えましょう①)
いつも読んでいただきありがとうございます。次回は10/24(月)投稿予定です。
「いや!もう少しここに居てよティリエス!あと半年ぐらい王城に居ても良いじゃない!」
「いやいやいや、アステリア様それ無理ですから泣いて懇願しても変わらないですから・・・ちょっ、服引っ張らないでくださ・・・って力強っいたたたっ!」
ティリエス達が帰る朝、馬車の前でアステリアに別れの挨拶をしていたティリエスだったが、アステリアはその言葉を無視し、ティリエスをまだここに居てほしいとただを捏ねてティリエスを困らせていた。
そんな娘たちのやり取りにテオドシウスは嬉しそうに笑う。
「ははは、私達のように仲良しになって良いことだな!なぁアドルフよ!」
「・・・・・・・・・・そうですね。」
テオドシウスの問いかけにアドルフは少し間をあけて返事をしたが、彼は特に気にせずに自分の娘の方へと向かう。
「こらアステリア。我儘を言ってはいけないぞ?」
「でも、お父様。」
「それにまた1か月後にはここへ来てもらう約束をしたのだろう?」
「・・・・むぅ。」
父にそう言われた手前、我儘を通すわけにもいかないアステリアは渋々ティリエスの服をゆっくり離したので、ティリエスはホッと息をついた。
「すまないなティリエスよ。娘は初めて友人が出来てついはしゃいでしまったのだ、許してほしい。」
「いえ、大丈夫ですわ国王様。アステリア王女様だってわかっていらっしゃいます。」
「そうか・・・それと領地に帰ってまたお主だけとんぼ帰りさせてしまうのもすまぬな。妻に贈ったあのアロマディフューザーの代物の事もあるが何よりまだディオスを王城から出すのは難しいのだ。」
そう、実は今回の帰省は一時であり、私はまた直ぐにこの王城へ戻ることになっている。
理由はさっき国王の言う通り、アロマディフューザーが今回王妃の呪いを解いた、ということもありディオス大叔父様達魔法師団直々にこれを作った経緯からアロマオイルのことまでを様々な解析に協力して欲しいと要請があったのだ。
本当はディオス大叔父様がそれにかこつけて領地へ戻ろうとしたのを王からストップがかかったことから私、そしてレイはまたこちらの王城に留まる事をお願いされたのだが、一度弟達の顔も見たいし領地のビールや魔獣たちの事もあるので一度帰還し1か月後に戻ることを許していただけるならとそう言って要請を受け入れた。
弟達とはまた暫く会えなくなるのは、ちょっと寂しいけど・・・まぁアステリアの事も放っておけないしね。
ここ数日、同じ部屋で寝ていたティリエスの横で何かにうなされ涙を流しながらくり返しひたすら謝る彼女の寝姿を思い出す。
何に謝っているのか私には分からないが、脅威が去ったとはいえ彼女の心がすべて癒せるわけではない。アイルお兄様は学園生活が始まるし、私が傍にいないととは思っている・・・まさか駄々を捏ねられるとは思ってはいなかったが・・・。
まぁ、王城内の生活もきっと充実した日々になるだろうとティリエスは色々な事に思いを巡らせていると父であるアドルフから声がかかる。
「そろそろ行かないと遅れてしまうよ。」
「はい、お父様。」
そう言ってティリエスは淑女の礼をする。
「では国王様後日お伺いする際はどうかよろしくお願いいたします。養生されている王妃様にもどうかお身体にお気を付けくださいませとお伝えください。」
「あぁ、必ず伝えよう。気をつけて帰るのだぞ。」
王にそう言った後ティリエスはアステリアの方を見やる。
「アステリア様。」
「・・・・分かっているわ、ティリエス。」
ティリエスが何かを言う前にアステリアは彼女をギュッと抱き着いた。
「必ず1か月後には戻って来てね。」
「えぇ、必ず。約束しますわ。」
「・・・・・・うん。」
そう言うとアステリアは静かに離れてティリエスを見つめる。
そこにはもう王女の姿があった。
「また、お会いできるのを楽しみにしております。その時は共に色々な事をしましょうね。」
「はい、その時を私も楽しみしています。」
「「素敵な毎日になるように。」」
そう言って2人は笑い合いティリエスは今度こそ馬車へ乗り込むと、王城を後にしたのだった。
「行ってしまったな・・・。」
「はい、お父様。」
彼女達が乗る馬車が見えなくなり、王がぽつりと言葉を零しアステリアは相槌をする。
「1つ、聞かせてほしいのだが。」
父の言葉にアステリアは父親を見つめる。
「そなたに継承した女神の力が失われた事に、ルーザッファ家の娘も関係しているのかな?」
「!」
言われた事にアステリアはほんの少し肩が跳ね上がる。
王はそれを見て、小さく笑った。
「我ら王族は大地の神の末裔にあたる、女神の力が受け継がないことはあり得ないからね。まだ、
話したくないなら良い、私も全ての事を把握していないが・・・きっと聡く何事にも先回りするそなたが裏で何かをしていたから、我らがここに居るのだとそう思っている。でもね・・・。」
王はしゃがみ込むと娘のアステリアのお腹にそっと右手で触る。
そこはナイフで傷を受けた箇所であった。
娘が刺され倒れたあの時、どれだけ己の力が不甲斐ないかと嘆いたか・・・。
「独りで傷つくのはもうよしてほしい。」
アステリアは父親の顔を見てはっとし、一瞬だけ泣きそうな表情を作ったがグッとこらえ父の手をギュッと握った。
「はい・・・お父様。」
「・・・うん、さぁもう中へ入ろう、お母様に顔を見せに行かないと。」
そう言って王と王女は城の中へと戻る。
戻る最中に歩きながら、王は考える。
今までのアステリアの行動に、ティリエスという少女が生まれてからというもの彼女達の領地、他領地そして国へと大きな動きが見え始めている事実。さらには、アステリアを真っ先に守った伯爵家の嫡男の存在。
彼女達は何か大きなものを背負わされているように王は感じ取っていた。
伯爵家の彼も何かを知る存在なのだろうと王は推測する。
彼はルーザッファ家の親類にあたる人間だった・・・ならとある事を理解する。
きっと俺がこんなことを考えている頃には彼女の父親であるアドルフは分かっているだろうな、彼は優秀だから。
それでも静観しているのは何か意図があっての事だろう、こちらでも様子を見るしかない。
そう結論づいた時、ふと王は少し欲を持ってしまい口を漏らす。
「ティリエスちゃん、うちの息子のお嫁さんになってくれたら良いのになぁ。」
「・・・・・・・お父様。」
ややあって、アステリアから声がかかった王はそちらを見やると、そこにはなんとも言えないという表情の娘の顔があり、王はその表情に「ん?」となる。
しばらくして、アステリアは表情を変えずに首をゆっくりと横に振った。
「お父様、国が滅びるからそれはダメですわ。」
「・・・え?」
「あの子の恋愛事情に関わると死人が出るからやめといたほうがいいですわよ。」
忠告されたことに王は目を丸くし固まっていると、アステリアは一度小さくため息ついたあと「忠告しましたからね。」
とそう捨て台詞を吐いて、父を残して王城内へと入っていった。
「・・・あの子に結婚迫ったら国が滅びるの?」
娘の言葉に王はよく分かっておらず一言呟いたのだった。
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