これが夢だというのならとっくの昔に目は覚めている(さぁ、愉快なパーティーを終わらせましょう⑩)
いつも読んでいただきありがとうございます。次回は10/19(水)投稿予定です。今回も暴力行為・流血表現あります、ご了承下さい。
子供。
その言葉にエスカリーナは自分の口がカラカラに乾くのが分かった。
勿論、己の血筋など重要視されていない。
その子供の父親が重要だった。
王の子供、目の前にいる彼女はそう言っているのだと。
自分の価値はもうそこにしかないのだと悟った時、ここで否を答えることが自分の死へと繋がるのだとエスカリーナは悟った。
「そ、それは・・・。」
ゴクリとなけなしの口の中にできた唾を飲み込み、エスカリーナは顔を上げた。
思った以上に彼女の顔が近くにありエスカリーナはほんの小さくだが悲鳴を上げた。
一目見れば上等な扇子とわかるそれで口元を覆う主人と呼ばれる彼女の眼は不気味なほど見開きまん丸くさせ、己のことを瞬き一つせず無機質に見つめ続けるその姿にエスカリーナは恐怖した。
思わず、そっとエスカリーナは己の胎の上を擦った。
そして意を決して目の前の人物に口を開く。
「子は・・・子は・・・宿せました。」
「それは・・・本当?」
未だその眼で見つめる主人に、エスカリーナは恐怖で震える身体を押し込め再度頷く。
「・・・報告では相手が拒んだと聞いていたけれど?」
エスカリーナはその質問に答える為に、また一度唾を飲み込む。
「はい・・・王も所詮は男でした。」
「どういうことかしら?」
「・・・・惚れた女の為に身を差し出したというわけです。」
そう言ったエスカリーナの言葉に、目の前の女性はカラカラと声を出して笑う。
「それはそれは。でも、貴女程の手管に長けた者がお情けで抱かれるなんて、一番屈辱でしたでしょうに。」
その言葉に己の拳に力が籠る。
確かに屈辱だった、勿論本当に彼女の言った事が事実であれば勿論そうだ。
だけど、私とあの男とは関係が持てなかった。
屈辱を味わうそれ以前にあの男は頑なに自分を抱こうとはしなかったのだ。
だから、本当はあの男の血がこの身体に宿ることはない。
でも、赤子が出来たのは本当だった。
既に快楽を知り尽くしたこの身体が禁欲などできるはずもなく、エスカリーナは彼女達の目を盗んでは、自分が買った男と寝所を共にした。
エスカリーナ自身何も意図していなかったが王が自分に靡く事がない腹いせの様な思いで彼より見目の良い男達を、だが悔しさも相まって必ずといいって良いほど男達の瞳や髪の色は王に似た男達を必ず使っていた。
最近月ものが来ないことから、エスカリーナは誰にも悟らせる事なくその可能性を調べ懐妊した事は知っていた。
己の腹が大きくなれば、不貞と分かればそれこそ相手には有利な状況を作り出してしまう。
堕胎も考えたが、リスクの大きさからできないと判断したエスカリーナは焦った末、今回王妃に最後の切り札を使い事を大きくし王に自分を抱くように仕向けたのだ。
一度抱いたと事実があれば後はどうとでもなると思い結局はその計画も頓挫してしまったが・・・けれど好都合だ。
事実をその事を目の前の女は知らない上に、自分は助かると確信めいた思いをエスカリーナは思う。
子供が授かった事実を証明すれば自分が殺されることは先ず無い。後は生まれるまでの時間は稼げたのだから。
その間にまた己の価値を高めたら良いのだ。
そんなことを考えていると、エスカリーナの胎に何かの石を近づけさせた従者はその石に光が灯ったことを確認すると、「間違いないようです。」と主人である女にそう伝える。
それを聞いた主人は近づけていた顔を引っ込めるとにこりと笑ったのが見え、エスカリーナは胸を撫でおろした。
「よくやりましたわ、エスカリーナ。流石ですね。呪具で占い貴女とあの一族の男と最も相性が良かった貴女を送り込んだかいがありましたわねぇ。」
満足そうにいう彼女にエスカリーナは頭を下げお礼を言う。
一気に上機嫌になった主人にほっとしていると、扇子を閉じる音が聞こえた。
「じゃぁ、始めましょうか!」
「え?」
明るく言い切った言葉と同時にエスカリーナは自分の腕を掴まれ立たされたことに驚く。
一体何が始まるというのだろうかと思った時には両脇に立つ従者にズルズルと連れていかれ、エスカリーナは困惑な声で主人を呼ぶが、彼女はにっこりと笑っているだけだった。
乱暴に放り出され、何がなんだかわからないままエスカリーナは口の中に詰め物を入れられ抵抗しようにも従者が仰向けにしたまま両手両足を折れるのではないかと思うほどの強い力で押さえつけられる。
「んーーー!!!んーー!!」
暴れようと身を捩らせるがびくともしないそれにエスカリーナは己によっては何か良くないことが起こると直感で理解した。
逃げようとする中エスカリーナが辺りに目を配らせると周りには黒づくめの人間が自分達を取り囲んで何かを始めていた。
主人だけは楽しそうに事の成り行きを見ていたが、さも今思い出したように口を開いた。
「そうそう、今から魔法で赤ちゃんを取り上げちゃうからね。」
「っ!」
「早く貴女も見たいでしょう赤ちゃん?だから、頑張って耐えてちょうだいね?」
そう言われた瞬間周りには禍々しい魔法陣の描かれている線が青白く光だし、その光が己の体に集まっていくのが見えた。
周りの術者の言葉と呼応して発せられていたその光が段々と自分の腹へと集まる。
何が始まるのか、この後何が起こるのか。
逃げることもできずされるがままのエスカリーナは恐怖の頭でそんなことを思いながら自分のお腹に集まる光を凝視する。
そして集まり光がフッと消えた瞬間から己に変化が見え始めた。
「んっ・・・んーーーー!!!」
急激な痛みと共にエスカリーナは己の腹を凝視する。
段々と不自然に膨らみ出す己の腹。
急に恐ろしくなって逃げようともがくエスカリーナだったが、他の変化に己は悲鳴を上げた。
見える己の手が徐々に皺を増やし、細枝へと段々変化していることに気がついた彼女は己の顔を触り、己の顔もその瑞々しくハリのある肌が皺くちゃな老婆な肌へと変わってしまっていることに気がついた。
それとは比例し腹は大きくなる。
エスカリーナは恐怖で震え息を荒くさせながら涙を流したとき、また可愛らしい声が聞こえた。
「嬉しいでしょう?もうすぐ赤ちゃんが誕生よ?よかったわね、エスカリーナ。」
「っ!」
最後の頼みの綱に主人と呼び敬愛していた彼女へ手を伸ばそうしたその刹那ーーーーー。
「っっっ!!!」
腹からメリッ・・・と嫌な音を聞いた最後、エスカリーナは己の肉が裂ける音と声に出せないほどの痛みを味わった後血飛沫をあげて絶命したのだった。
いつも読んでいただきありがとうございます。




