表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
題名はまだない。何せこの物語はまだ途中なんで!  作者: ちゃらまる
第4章〜解明編〜
315/746

これが夢だというのならとっくの昔に目は覚めている(さぁ、愉快なパーティーを終わらせましょう⑨)

いつも読んでいただきありがとうございます。次回は10/17(月)投稿予定です。




「さぁこちらです、お急ぎください。」

「ま、待って。」


草木も眠る深夜、何処かの森の中を2人は明かりもつけずに奥へと進む。

前を先導して歩いている人物は、深くフードを被っており顔はわからないが風貌からして男であり、後ろから時折転んでしまいそうになるのを堪えながらも前の男について行っている人物は、暗闇の中を歩いたせいかあちこちボロボロではあるが先ほどまで地下牢に囚われていたエスカリーナだった。


歩き慣れない獣道をひたすら歩き続けたエスカリーナは疲労も濃く、出来れば今ここで己の身をしゃがみ込んでしまいたいと幾度となく思ったが、その度に今の自分の置かれた状況を思い出し、その重たい身を引きずるようにがむしゃらに動かした。


今ここで敵に捕まれば間違いなく死罪なのだ。この一時的な苦痛などどうってことはないと彼女は自分自身を奮い立たせると同時に不幸ながらも幸運だったと彼女は胸の内で呟く。


初めこの国に忍び込めた時はよかった。

自分の協力者が自分に手を差し伸べてくれていたから、己の考えた事が何もかも上手くいった。

あの方のように忠実に己に仕える駒の存在も見つけられ後は事を順次に仕込んでいけば良いとほくそ笑んでいた。

だが、段々と己の雲行きが怪しくなっていった。


それが見え始めたのは紅い従順な駒、私の駒であったというに、彼女が欲しいと思った男・・・北の公爵、そしてその一族にまんまとしてやられることとなった。彼女が死んだのは彼女の欲を出したせいでもあった。

トカゲの様にあの駒を見殺しにし、己には害が及ばなったがまずは公爵家に連なる人間を殺す事ができなかったことから自分の計画が綻び始めた。


そして今度は遅れて、同時に内側である貴族を腐敗させるように見目は美しい奴隷を使って堕落させていた黄の駒もまた、北の公爵に悟られ潰された。

その後の白い駒も潰され、次第に私のために動く駒が徐々に減っていき焦っていた。

丁度その頃になると、協力者の援助もあれだけ頻繁だったのが徐々に減っていた。

私はますます焦った。

そして焦って行った今回の結果は・・・自分の思い描いていたものとは真逆で最悪なものとなった。


いや・・・親に捨てられなけなしの金のために己の花を売っていたあの地獄ほどではない。

エスカリーナは闇の中で己の今までの人生が映し出されるのを恐れ首を振った。


あそこにはもう戻りたくない。けれどこのまま牢にいればどのみち待つのは死刑だと理解していた。

発狂するインクブスをよそにどうにかして生き延びなければと思っていた矢先、あれだけなんの音沙汰もなかった協力者の手下が現れたのだ。


勿論、エスカリーナは迷う事なくその手を取った。

自分も連れて行けと騒ぐインクブスを躊躇なく殺したのもエスカリーナだった。



正直、自分は切り捨てられたのだとそう思っていたエスカリーナは、まだ己に利用価値があるのだと知りニヤリと笑みを浮かべていると、案内の男が立ち止まった。


男のそばまで行くと先に見えたのはこの先に続く道だった。

「この道を行けば・・・帝国に戻れるのね。」

「あぁ、その通りだ。」

男は短くそう言って歩き出したので続いて自分も歩き出す。


道があるとはいえ森の中を歩くエスカリーナの足取りはおぼつかないものだったが暫く無言で歩いていると、何か大きな物体がみえ、エスカリーナは思わず身構えたがある紋章に気がつく。


まさか直々にお見えになられるなんて!


エスカリーナは疲れていた身体を忘れたかのようにその紋章が描かれた馬車へと駆け出し、その前でひざまづいた。

するといつの間にか控えていたのか、従者がその扉を開けると1人の人間が降りる。

暗がりで顔や姿はほとんどわからないがエスカリーナは誰が降りて来たのかすぐに理解する。

「久しいわねぇ、お元気だったかしらぁ?」

「は、はい。我が主人。」

女性特有の甘ったるく明るい声で声をかけられエスカリーナは即座にそう答えると、主人と呼ばれた人物は小さく笑う。


「貴方のことは気にかけてはいたのよぉ、だけど妾が動いちゃうと、相手に気づかれそうになったのよね。」

だから何も助けられなくってごめんなさいねと、悪びれなくそう告げる女に対しエスカリーナはそのような態度に何も疑うことなく更に深く頭を下げる。


ただその言葉でまだ自分は価値があるのだと更に確信めいた思いで笑っていた。

「い、いえ!こうしてお助け頂いただけで感謝の言葉しかございません!」

「あら?そう?それは良かった・・・ところで。」


先程とは違い、どこか重圧を感じるその言葉でエリカリーナは笑みを止める。


何か気分を損ねたのだろうかと目の前の女性に対しじわりと嫌な汗が落ちる。


女性は一歩前へと歩み出す音に身体がびくついた。


「貴女、子供は宿せたの?」

その言葉にエスカリーナの身体は硬直した。


いつも読んでいただきありがとうございます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ