これが夢だというのならとっくの昔に目は覚めている(さぁ、愉快なパーティーを終わらせましょう④)
いつも読んでいただきありがとうございます。次回は10/5(水)投稿予定です。
「落ち着いた?2人とも。」
「はい、お兄様なんとか・・・。」
「えぇアイル様、中々涙が止まらなくて、お恥ずかしいですわ。」
あれから2人して暫く涙が止まらず抱き合って暫く泣いた。その間アイルはただ黙って2人の背を落ち着かせるようにずっと撫で続けていた。涙も治まり落ち着きを取り戻したころ、ずっと黙ってまってくれた彼に申しわけないように言う2人にアイルはすぐに首を振る。
「そんなことを思うわけないよ。君達の歩んだ道や過去の事を思えば・・・・いや、過去というよりは未来だというべきか。」
「未来?」
「ティリエス、貴女が・・・ナナだった頃何処まで覚えているの?私がきぃちゃんと呼ばれていた時は覚えているのよね?」
2人の言葉に一瞬だけ考えを巡らせ彼らの言葉と己の今までの境遇に、ティリエスもまた口を開く。
「私は覚えているのは、きぃちゃん・・・ごめん今はこっちの名前で呼ぶわ。アステリアとこことは違う人生を歩んでいたのは覚えている。その記憶のまま、私は今ここにいます。」
「そう、あの時代の・・・。」
「私は、何の因果か分からなかったけど自分が転生したと思ったの。私が自我を取り戻したときも普通のこの年齢からしてあり得ない歳だったし、記憶はあったから違う時代という事はすぐに分かったから。あの世界には魔法なんてものはなかったし・・・でも、2人の話しを聞くに少し違うんだよね?」
ティリエスの言葉に2人は頷くとアステリアは掌を上に両手の腕を見せる。
そこには左右それぞれ薄っすらとだが五芒星の上を渦巻いている模様が見えティリエスは「これは?」と彼女に質問する。
「【時巡りの糸と女神の救済】よ。」
「時巡りと・・・救済?」
「えぇ、王家は代々女神の祝福を授かっているの。父も兄も私も、何かしらの女神の力の一端を授かっているわ。本来であれば私も授かる運命だったけど2度目はただの名残だけ。もうこれは使ったから効力もないし模様も以前に比べたらうっすらとしているだけ。私とアイル様そしてティリエス、貴女と一緒にこの力を使ったの。」
「ティリエスにはその記憶はないけど僕達は一度時戻りを行っているんだ。」
「時を戻っている?」
「えぇ、私とアイル様、そして貴女にこの力を行使したの。これから起こる未来を変えるために、私と貴女は救済の力で女神の導かれ降り立った世界でこの世界を変えるための力と突破口を見つめるために時空へ渡り、アイル様には私達の死後どうなっていったのか見続けて頂いたわ。」
「未来って・・・待ってアステリア、アイルお兄様、私が今生きているこの世界の未来は自然の摂理を曲げないといけない程の危機的な事に将来直面するってことなの?」
その言葉に2人の表情が暗くなり、それが嘘ではないのだとティリエスはその事実に対しショックを受ける。
「あまり知りたくはありませんがこれだけ聞かせて下さい・・・2人はご存じですよね、今後私達はどうなっていったの?」
「・・・あの時も様々に対策はしたわ。でも結局どうすることも出来なくて私達が死んだのは貴女が24になる頃、処刑だったわ。」
「24って・・・しかも処刑。」
あと20年も生きられないのか?マジか嘘やん。
自分の寿命を知ったティリエスはまたもやショックを受けているとアイルは「でも」と口を挟む。
「僕達の1度目に起こった出来事は変わっているよ。勿論良い方向に。」
その言葉にティリエスは落ち込んでいた顔を上げアイルを見る。
「先ず僕は一度目は望まない子供として帝国の皇子として生を受けた。そして、婚約者としてアステリアと出会い婚姻したんだ。」
「お、お兄様が帝国の皇子?!」
今の地位とは明らかに変わっている事にティリエスは驚く。
でも一国の王子が他国の伯爵家の息子になっているって、どうしてそんなにも変わっているのか不思議だ。
「でも、今と前では天国と地獄の差もあるよ。僕達一族の能力を帝王は知っていた。その能力を欲しがった帝王は隠れて暮らしていた母上とお祖母様を見つけ、抵抗した母の前でお祖母様と好きだった人を殺され無理やり帝王の側室にされた。連れてこられた母には勿論、味方なんていなかったさ。衰弱しきった状態で僕を産んですぐ死んだ母上の後は僕も随分迫害されたよ。2度目僕が自我を持ったのは2歳の頃。伯爵家で目覚めた時には随分驚いたさ。」
一度言葉を切り、アステリアの方を見た後アイルはまた話し出す。
「一度目とは違う幸福な場所に僕は幸せに思ったこともあったよ。でも同時にあそこから始まると思っていたから・・・、最初から全くの別で今まで考えていた僕の計画はすべて無駄となった。僕はアステリアの元へは容易に行けない場所から始まってしまった時、僕は正直絶望もしたんだ。一番何が何でも助けたい人は彼女だったから。そして幸福を感じてしまったことを恥じた・・・子供の身体で何も出来ないこともあって1年が過ぎてしまった頃はもう絶望しか思えなかった。そんな時僕はティリエスに出会って考えを改めることが出来たんだけどね。」
アイルの言葉に、そう言えば彼と出会った時に彼は酷く何かに怯えまるでこの世の終わりのような表情をしていたことを思い出す。
「アイル様が帝国に居ないこと、ティリエスも戻れば手紙を書くと約束してくれたのにそれがなかったから貴女は記憶なく戻ったのだと悟った私は・・・・勿論最初はショックでした。でも、どこかに貴方やティリエス、私を支えてくれた貴女が何時か私の元へくると信じで私は戻って来た時以前の記憶を頼りに切り抜けてきました。王城の中に居る人間の誰が味方で誰が敵なのか知ってましたから。」
「だから侍女が変わっているんだね。」
「えぇ、イーツは唯一私の盾になってくれました。厳しい事を言われ一度目は彼女の事を分かっていませんでした。彼女は彼女なりに私の事を護ってくれていたのに・・・だから、今度は誰が味方か見極めましたし、お母様達の危機回避にあたりましたが・・・今回は流石に駄目かと思いました。でも、前回とは違い魔法師ディオスが死なずに王城で私達の護りを担ってくれたことが大きかったですが。・・・そう、ティリエスの周りも大きく変わっていたわ。私が生まれる前に亡くなる運命だった方が大勢生き残っていました。その中に貴女の母親であるリリス夫人も含まれていたのよ。」
「え?!お母様も!」
「それだけじゃない、君の祖父母であるルドルフ卿にメイサ夫人、それに僕の祖父であるハーティスお祖父様も亡くなる対象だった。」
そんな・・・それじゃ一度目は母も祖父母もいない世界で私父と2人で生きる予定だったのか・・・あれ?でも確かに皆生きてるな・・・・ん?そういえば・・・。
「ここからもう既に出来事が改変されているんだ。僕達の時間を遡れるのは産まれた瞬間からだ、だから、産まれる随分前に亡くなる運命だった人物達はあきらめざるを得ない状況だと思っていた・・・そう3人で話していたんだよ。それなのに、どうしてこんなに違うんだ?僕達の他に記憶を持った人間の仕業・・・でも、それなら前回と違う動きを見せるからもっと目立っても可笑しくないのに・・・。」
「そうね、何なら記憶をもつ者として私達に接触をはかってもおかしくないわ、それがないのは・・・何だか不気味ね。」
「・・・・あ。」
ティリエスはそこまで言われある記憶を思い出し思わず声を上げた。
2人は声を上げたティリエスを見やる。
しまったと口を手で閉じたが、2人の目を見るや否や誤魔化すなんてことは出来ないと観念し口から手を離すと、右手をそろそろと上げる。
「あの・・・多分それ、私が色々したからだと思う。」
「・・・ティリエス。」
「・・・ひゃいっ。」
ゆっくりと自分の名をアイルに言われ裏返った声で返事をするとにっこりと笑ったアイルの顔がそこにあった。
「知っている事・・・話してくれるね?」
「・・・・わ、分かりましたわ。」
彼の笑顔の圧に負け、ティリエスは自分が偽妖精をした出来事を2人に包み隠さず話した。
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