これが夢だというのならとっくの昔に目は覚めている(さぁ、愉快なパーティーを終わらせましょう①)
いつも読んでいただきありがとうございます。次回は9/28(水)投稿予定です。
忌々しい国の法に護られ10年もの長い長い間王城に籠った側室エスカリーナは、最後はあっけなく掴まり牢へと送られた。
10年という長い間王でさえ何もできなかったそれを成し遂げたのは、叔父に殺されかけ逃げおおせたロンマンディリの血を引く正当な後継者である若者が北の公爵であるアドルフと結託し王や王妃の命を護ったのだと大々的に報じられた。
この事実は国の、何より貴族達に大きく関心を示した。
中立派を除く側室へ寝返ろうかと考えていた立場の弱い貴族たちはこれにより貴族たちの間で起きていた派閥は一気に王側へと傾き、聖国アストレイアはほぼ一枚岩となったのだ。
のちにオーガスタもといオーガは「膿をほぼ出し切った後の再出発としては良い、諸々の計画は順調にうまくいったようで良かった。」と至極満足そうに笑みを零したという。
そして、密かにエスカリーナの指示を受け、裏で糸を引いていたインクブスの数々の悪行もまた公となった。
自身の兄弟殺し、少なくとも3人の妻への虐待そして殺害、実子にも同じように虐待、殺害未遂。そして何より驚かせたのは、あの紅き魔女といわれた女性と最近記憶に新しいエルフの女性達を使い非人道的行為を繰り返していたある子爵家の人間を裏で資金を渡し自身の手が汚れないように指示していたという事だった。
「――――以上が報告となります。」
「・・・・そうか、・・・ようやく終わったんだな。」
王と貴族が議会を交わす間、円卓の間にて現王であるテオドシウスは報告された内容を聞き小さく息を吐いた。
重要貴族達もまた王のそのため息に同調し安堵の息を吐いたと同時にもう彼女達に脅かされることはないのだと歓喜する。
「それで、2人の処分は如何されるおつもりで。」
「勿論死刑とする。」
1人の貴族の質問に王は即座に答える。
王の言葉に誰もが「情状酌量の余地なし、妥当である。」と返事を返し、いつもとは違い緊張が途切れた空気の中アドルフは難しい顔をしたまま王は見逃すはずもなくアドルフに目をやる。
「どうした、ルーザッファ。難しい顔をしているが?」
「・・・・いえ。」
「・・・そうか、では、今回の件での議論は終わりとする。刑の執行は3日後執り行う、以上だ。ルーザッファ、そなたは私と来て欲しい。」
王の言葉に全員が立ち上がり礼をした後、王は部屋を後にしアドルフもまた王へついて行った。
暫く廊下を歩いて、人気の少ない場所に差し掛かると黙っていた王が後ろ振り返ることなく口を開いた
「さっきは皆の前では聞けなんだが、何故そなたはどうしてそのような顔をしているんだ?憶測でもいってくれるか?アドルフ。」
廊下を歩きながら尋ねるテオドシウスにアドルフは少し思案した後、王の背中を見つめた。
「今までのことを考えると少し、単純すぎると思いまして。」
続けてアドルフは言う。
「確かに、あの女はここに居る間拙い計画もしたこともありました。それがあったから私達もある意味対策が出来今に至ります。ですが、昔はもっとあの女は綿密でした。誰もがあの女の策に翻弄されていた。」
「それだけ、我らが力をつけたというのは?」
「それも勿論あります・・・ですが、年々と共に拙さは増え1年ほど前からはそれが見え始めました。インクブスが隣にいたというのに。彼女達はどうして急にそうなったのか。」
「まさかとは思うが、彼奴らも裏で誰かの指示があったというのか?」
王もその可能性に気がつき立ち止まって振り返りアドルフにそう言うとアドルフは否定せず王を見つめる。
「でも・・・その方が辻褄は合う・・・か。」
「はい。」
そう言うと、ふぅっと王は息を吐いてアドルフに声をかける。
「もう、言葉を崩す。なぁアドルフ、もうお前俺の代わりに王やってくれない?もう嫌だよ、俺。子供にも俺の奥さんにも危険な事に巻き込まれるの!もう、本当代わりにして!俺田舎に引っ込みたい!」
急に口調を変え駄々をこね始めた王に、アドルフはこめかみを抑え眉間に皺寄せる。
そう、彼は貴族達の前では威厳さは見せるが友人、それも身内並みの関係の人間にはこの口調である。
「無理です、私も娘も王位継承権破棄したばかりですよ。それに、色々立ち回りも策略も貴方だからうまくいったんです。もっと自信を持ってくださいよ。」
「そうは言うけど、俺、今回は本当に、本当に!ダメだと思ったんだよ、もう俺の身体をあの女に差し出さなくちゃいけないのかと思ったんだから!でも王妃が頑なに俺の裾を掴んで離さなかったから俺も安易なことをしなかったけど、本当に俺!困ってたんだからな!」
それなのにまだなんか裏があるのかよ!とアドルフの周りに誰もいないことを良い事に王は叫ぶ。
そんな王に対し、若干面倒臭いと思いつつももう腐れ縁なのでアドルフは気にしないでおく事にした。
「なら、王妃に感謝ですね。」
「本当だよ、俺、あの子がいなくなったら愚王になる自信だけはあるもん。」
「そんな自信捨ててください・・・と言いたいところですが、私もそう思うことはありますので否定できないですね。ですが、王よ。」
「何?」
「何時でも我々が支えますから、今回もそうでしたでしょう?」
「・・・分かっているさ、でも、解放されたと思ったのにまだあると思ったら気が滅入っただけ、許せ。」
そう言うと、王は何時もの表情に戻り口調を戻す。
「それはそうと、王妃から預かった代物についても話しを聞きたい。ディオスも待機させている。」
「娘も呼びましょうか?」
「いや、それには及ばない。後彼女には王妃自身からお礼を言いたいそうだし後で時間を設けさせたい。それに今日は娘がお前の娘に会いたいといっていたから、今頃は娘のところだろう。」
「王女が?」
アドルフは驚いて聞き返す。
「あぁ、お前が驚くのも無理はない。何故か娘はお前の娘に会うことを今まで拒んでいたんだからな。娘に拒まれてからずっと近くで見ていたが、お前の娘ティリエスに別段劣等感も憎しみの感情も持ち合わせていないということは分かっている。でも、何故今まで会うことを拒んだのか私も不思議に思っている。」
「確かに不思議ですが・・・きっと、娘には問題ないことでしょう。」
「そうだな。私達のように仲が良くなるだろうさ。」
「・・・・・・・・・・・・。」
「いや、アドルフ。そこでなんで黙る?え?お願いうんと言ってくれる?あれ?アドルフ?おーい?」
王の困惑の声に返事を返すことなく、歩き出したのだった。
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