これが夢だというのならとっくの昔に目は覚めている(さぁ、愉快なパーティーを楽しみましょう㊹)
いつも読んでいただきありがとうございます。次回は9/22(木)投稿予定です。台風過ぎ去りましたが皆様大丈夫でしたでしょうか?幸い作者の地域は一度停電はしましたが大惨事にはならずほっとしております。(電気の普及も早く済んだのでよかったです。)
人差し指で触り何かしら魔法がかかっていないか確認してから手に取ったそれ。
ティリエスは取り敢えず他の人間達に気づかれないようにしつつ、自分には何も感じ取れないそれをしげしげと眺める。
ホルアクティに言われて今までの事を思い出せば、確かにこれをずっと肌身離さず持っていた。
なら・・・これには何かあるという事だ。
【鑑定】をしたいけど・・・ここには人の目があるからなぁ・・・。
ちらりと周りを確認する。殆どの人が今は王妃たちに目がいっているが、誰もかれもがそうではない。
こっそり持っていく?でも本自体が大きいからそれこそ注目されそうだし、何より重い。
自分の腕だけで人に気づかれなく人気のない場所に運ぶのには少し無理がある。
どうしたものかと考えているとぬぅっと自分の頭上から視線を感じ、ティリエスは見上げる。
「何をされているんですかぁ?」
誰にも聞こえないようにオーガが小声で話しかけてくる。
すぐに声がかかるとは思っていなかったティリエスはえぇっとと言葉を濁しながら何と言おうか考えて横にちらりとみやる。
と、いつの間にか隣に居たレイがいつの間にか自分達のやりとりに気が付いたのかこちらに視線を寄こしていた。
いや、見ているというよりガン見じゃない?目を見開いて微笑んでるよ・・・。
何も言わずこちらへ微笑んでいるが目力が恐ろしく若干ホラーな彼に、悪いことはしていないがとりあえずティリエスはへらっと笑って誤魔化すように返しレイからゆっくりとオーガへと視線を向ける。
オーガもまたにっこりと笑っているがこちらはどちらかといえば、何をし始めようとしているのか気になっているという笑みでこちらを見ていたので観念したように小さくため息を吐いた。
「ホルアクティがこの本から変な気配がするというんですの。」
「このボロい本が?」
「成程、妙な気配はここからかぁ。」
オーガが本をジッと見つめていると横から声がかかりそちらをみれば、先ほどより近くに寄って来て同じようにその本を見つめる。
というか近っ!
至近距離のレイに思わずのけぞろうとしたが、レイの手が自分の腰を持ちその場から動かないようにされる。
そんなレイの行動にオーガは呆れながらも話しを進めた。
「この男も気配に敏感ですから、気のせいではなくほぼ間違いなくこれには何かあるんでしょうねぇ・・・それで貴女の力を使おうとされたと?」
思いもよらない言葉にティリエスが驚きオーガを見れば、「あぁ、お父様達とは情報共有はしているんですよね。」と答えられティリエスは成程と納得する。
「その通りです、これがなんなのか調べようとしたんです・・・でも、人の目があるのでどうしようかと思いまして。」
「で、あれば・・・。」
そう言ってオーガはある場所に視線を向け、ティリエスもまたそちらに向ける。
そこにいるのは先ほどまで落ち着いていたのに今は酷く暴れているエスカリーナといつのまにか書簡を読み上げたのか、厳しい目で見つめる王妃が居た。書簡は手元にはなく暴れている彼女の前、床に置かれているのが見えた。
「あそこ。あの女の血が書簡に落ちた後が狙い目ですよ?」
「?」
「まぁ、あまり良い光景ではないですがねぇ。」
一体何が始まるのか。
そうオーガが呟いている間に故意に傷つけられた彼女の指から血が滴り落ち書簡にその血が落とされた瞬間、彼女の中心に魔法陣が展開され光が彼女を包むと同時に彼女から悲鳴が上がる。
悲鳴というより寧ろ断末魔の叫び声にティリエスはびくつく。
「魔法や女神がらみの契約は反故にしたときには相当な痛みを発するみたいなんですよ。だから殆ど反故にしようなんて行為しない、特に女神絡みはね。それに契約の期間が長い分反動も大きいと聞きます。10年ものの契約なんて呪いに近いでしょうねぇあんなに痛がってますし。まぁ、兎に角。暫くあれは続いて人の目も音も誤魔化せるので今がチャンスですよ?」
オーガがけろりとそう言って微笑む姿にティリエスは引きつるのが分かった。
断末魔をBGMに作業しろってか、この人も存外鬼畜じゃん。
でも彼の言う通り、確かに今であれは人目も気にせず能力を使っても問題ないのでティリエスは極力気にしないように目の前の書物だけを見る。
「・・・【鑑定】。」
静かに呟くとティリエスの眼が輝き金色の瞳で代物を見つめると何時ものように鑑定結果が頭の中に浮かんでくる。
封じの書★★★★★★★★★☆→文字通り封じるための書であり、書物に対象の名前と概要を書き対象の概要通りの事、モノを本の中へ封じることが出来る代物。主に刑執行者に使用することが多かったので一部の間では呪いの類だといわれ畏れられてきた。
しかし、この封じの書を使用するにはいくつかの条件がある。
一つ、対象者の目の前で項目を見せる事
一つ、使用者の魔力量と能力によって封じれる事柄やものの範囲が変動し、使用者の能力以上のものは封じることはできない。
補足として書の見た目も変わり能力など低い物が使えばみすぼらしい書物に見え、逆に能力が高い者が使用すれば一級品に見える。さらに能力以上のものを封じれば心身ともに支障をきたし、最悪使用者が命を落とすことにもなる。
そして、これを使用できるのは血筋に関係しており、現在の該当する家門はロンマンディリ家のみである。
思ったより詳細な内容に驚きながらも鑑定結果をそのまま2人にだけに伝えると、オーガは一度目を閉じ「そうだったのか。」と一言呟いて目を開く。
オーガの呟いた言葉にティリエスは首を傾げ、レイは静かに何も言わずオーガを見つめていると、彼が続けて口を開く。
「ティリエス嬢、これに封じられているものの解放手順は解りますか?」
「え?えぇっと―――。」
解除方法をオーガに伝えると、彼は礼を言いその本を手に持つ。
彼の行動に首を傾げていると、彼は何時ものように飄々な顔をしていた。
「ちょっと、これ貰いますねぇ。」
そう言って踵を返したオーガにティリエスは「えっ?」と困惑した声を出すと、オーガが振り返った。
「オーガさん、それをどうするんですか?」
「・・・何、ちょっとした自分なりの決着を着けにいくだけですよ。」
そう言って彼が進んだ先は丁度彼女の魔法陣も消え、苦しく悶えている様子が見えた彼女達の元だった。
急に前に出てきたオーガに誰もが注目する中、オーガは王と王妃に頭を垂れる。
「そなたは確かアメジスト商会のオーガだったか、どうした急に、申せ。」
別段怒ることなく王は静かにそう伝えると、オーガが顔を上げた。
「突然、申し訳ありません。ですが、早急にこの場で伝えることが出来たのでお伝えしたく参りました。このままよろしいでしょうか?」
オーガの問いかけに王は頷き、オーガは礼を述べるとある人物に目を向けた。
「そこに囚われている男の所業について、です。心当たりはありますよね?インクブス。」
今まで項垂れていた彼が顔を上げる、そこには恐怖の色を滲ませた男が其処に居た。
いつも読んでいただきありがとうございます。




