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題名はまだない。何せこの物語はまだ途中なんで!  作者: ちゃらまる
第2章~誕生編~
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まさかこんなことになるなんて誰が想像できますか?(今はただ気持ちの整理をさせてください。①)

いつも読んで頂きありがとうございます。

少し早めに書けましたので投稿します、あと前回の話しも読み返して気になる箇所はちょこちょこ直していく予定です。ただ大まかな話の流れは変わらないように訂正と加筆していきます、ご了承お願いします。






さて、一体これはどういう事でしょうか?


今日も今日とて暗い部屋の中私は独り問答を繰り返している。


ただ暗いといってもここは全くの暗闇ではない。ほんのりと常夜灯の役割を持っているランプが部屋を灯しているので家具の位置やベッドについている柵の輪郭も分かるし天井の上にちりばめられた色とりどりの石の光がキラキラと瞬いているのも見える。


当たり前の事なのかもしれないが、そこに横になっている私には家の者の配慮のお陰かランプの光が顔などに当たって眩しい思いをしないように光を上手く当たらないようにしている為私の周りは薄暗く感じる程度だ。


上の天井を見るだけでは退屈だ。

なので他に何があるのか歩いて見てまわりたいのだが、生憎と身体が思うように動かないので結局私は見飽きてしまった変わり映えのしない天井を見ていることしか出来ないでいた。



なぜ自分の身体が動かせないかって?


理由は簡単だ。


何せ今、私は赤ん坊だからである。



赤ん坊・・・その言葉に私は思いっきりため息をしてしまう。

そして少し前の出来事を順を追って私は確認するように自分の記憶を思い出し始めた。





あの日…そう。


私が親友と電車に撥ねられあっけなく死んだあの日。

それより以前から見ていた夢で登場した女の人と対峙した。


女性の名前はカナディア。

彼女はアドルフさんを自分のものにしようと画策を企て悪事に手を染めていた。


その悪事の脅威を晒されていた彼らの前に私が様々な(チート)方法を駆使して彼らを助けることとなる。

そして、彼女は最後の最後己の死と引き換えにした呪いをアドルフさんの最愛の人リリスにぶつけるが結局失敗。最後に私と対峙して消える瀬戸際、体を欲した彼女に襲われそうになったが逆に返り討ちを果たし、彼女は完全に消滅した。


悪事の元凶が居なくなりすべてを解決したと思っていたのに、光に包まれて意識を手放した私が次に目を覚ました場所がとある一室、つまりこの部屋のベッドの上だった。


最初はよく分からないでいた、てっきり私は死後の世界を思っていたからだ。


そして落ち着こうと自分をよく見れば赤ん坊になっているではないか!

確かに意識を手放す前に子供の姿になってはいたが更に縮んでいる事実にその場で固まってしまった。




これは所謂転生した…ということなのだろうか?


暫くは混乱していたが、ある言葉が私の頭を占める。


転生。


1度確実な死を体験した後生前の記憶を持ったまま生れなおす。


そんなまさか私が小説みたいなことに?……マジか?

確かに死ぬ前に夢で異世界へダイブしてる時点でちょっと普通とは離れてしまっているが・・・・そんな都合よくホイホイと遭遇できるものだろうか?


不思議ホイホイ・・・・・・な、駄目だ自分の名前だけ思い出せん。


生前の記憶は・・・・あるといえばある。

こことは異なった世界で生き、勉強をし、仕事をし、たまには娯楽を楽しんだ記憶はきちんと思い出せる。私の人生に関わった人達のことも思い出せる。

ただ一つだけ自分の名前はなんだったのか思い出せない。



親友の名前、愛称・・・更にはそんなに仲がいいというわけでもない上司の可愛がっていた御ぬこ様の名前だって思い出せるのに・・・・ぐっ、なんてこったい!私は御ぬこ様の名前以下ってことなんかいっ!


一体なんという名前だっただろうか?喉に骨がつっかえる感じでもやっとする・・・が調べる術がないので諦めるしかない、・・・はぁ。でもそれよりも問題は山積みなんだよねぇ。




実は名前が思い出せないこと以上にもっと厄介なことが発生している。

私はそれに頭を抱えていた。


それは、私という自己意識がまだ赤ん坊というあやふやな存在のせいなのか、常に意識が保てないこと。


徐々に意識の覚醒であればまだよかったのだが、私が前世の記憶や知識、経験があるせいか意識がはっきりする時がいつも突然すぎるのだ。正直、私は急に我に返る感覚に心臓に悪い。


けれど、私がこうして意識が現れるときは決まってこの誰もが寝静まった夜中なのでだんだん私も馴れてきたということがまだ救いなのかもしれない。

変な行動をとったとしても誰に見られることはないのでそこは安心出来た。


なので結果、いつも独りでこの部屋で過ごすことになる。


こうも結構時間が経つと・・・・暇だ。


意識が浮上したら眠気も飛ぶようで私は仕方ないので、天井をぼんやりと見つめる。


私はふと、あまり考えようとしなかった死別した親友や前世の両親の事を想う。



私はこうして生まれ変わったけど・・・・・・きぃちゃん、今、どこにいるのかな?

死後の世界なんだろうか・・・。あんな怖い思いしたのだから彼女にはどうかそれを忘れるくらいの良い所だといえる場所に居てほしいな・・・。

というか私だってあんなに恐い思いして死んじゃったから、ご褒美とか期待してたのに。


もしかしたらさ、両親にも会えるかもしれないという期待で胸が膨らんでいたのに・・・・。




期待だけでつるりんなお胸も膨らみそうになっていたのに・・・・、今じゃ以前より真っ平だ・・・へ、へへへ・・・・・っ。


と、冗談を思っていたら急にぽろりと涙が溢れ私は小さな手をなんとか動かして涙を拭う。

拭っても拭っても涙が次から次へと溢れてこぼれ落ちていく。



寂しい・・・・。

寂しいよ・・・・きいちゃん。


独り、ここに取り残されたようになってみたいで、寂しい。


暗闇も前より、怖いよぅ・・・・きぃちゃん、会いたい。


涙を拭いながら私は本音を心の中で吐露する。

ぐしぐしと泣いてみっともないが、これが今の私だった。


親友が居なくなり。

自分も死んだ後突然意識が戻って気が付いたら赤ん坊に生まれ変わっている。

そんなのすぐに順応できるわけがない。

それに意識が保っているときに誰一人いない空間にいるのは・・・思いのほか辛かった。



先に言っておくが決して親に放任されているわけではない。以前何度が今の状況が突然怖くなって大声で泣いたことがある。

泣き止まない私を必ずといっていいほど両親が飛んでやってきて私をあやしてくれた。


大丈夫、大丈夫と。


私の不安を少しでも取り除くようにずっと背中を擦ってくれる両親に私はほっとしたことも感謝したこともある。


だが、それだと両親が大変だ。毎夜毎夜夜泣きされて寝不足になるだろうし、日中は2人ともそれぞれ仕事がある。意識がない時は仕方ないとしてこうして自分の意識がはっきりしている時だけはせめて優しい両親の負担はかけたくなかった。


それに・・・・・どうせすぐ意識を失う。


私は泣きながら冷静に最近のいつものことを思い浮かべた・・・・その時だった。



ギィィィ・・・・。



そう思いながら泣いていると何処からか扉がゆっくり開く音が聞こえた。


き、来た!また来た!


私はその音で反射的にピタリと涙が止まり、恐怖を感じてすぐに目を閉じ息を潜める。





ひたり・・・ひたり・・・と一歩一歩私の元へと近づいてくるそれに神経を尖らせる。

静かな足音が止まり、寝ている私の頭上から視線を感じ取る。



ま、まただ・・・見られている。



このような生活を送るようになってしばらくたったある夜―――—―。



いつものように泣いている私の元で誰かがやってきたのが切っ掛けだった。

この時私は、私のすすり泣く声をたまたま聞いて使用人が様子を見に来たのだと思った。

泣いているのを悟られたくなくて咄嗟に目を閉じたのだが・・・・・。


何故かその人は私の様子を見て何かするわけでもなく確認して去るという事もなく。

この様に私の頭上からじぃっと見つめ・・・・そして。


『グスッ・・・・・グスッ・・・・。』


何故だか静かに泣き始める。

いつも意識が浮上するこの時間帯に誰かがやってきては、私の顔の見つめて、泣き始める。


今日みたいに1人だけの時もあれば、時には複数の人がやってきて合唱みたく皆すすり泣きするという夜もある。



とにかく泣いていても私から目を離さないように視線を常に感じる。目を閉じている分それがより分かってしまう私は身体が震えてしまわないようになんとか保つことしかできない。




だって・・・これってさ・・・。



俗にいう幽霊とかお化けのありきたりな登場だよね・・・滅茶苦茶怖いです。


だってさ、考えてもみてよ。

夜中に小さな赤ん坊の周りを取り囲んで泣かれるなんて・・・・気になるが何をされるのか分からなくて怖くて目が開けられない。


こうなると知っていれば知らないあの時に目を閉じずに開けて確認すればよかったとものすごく後悔していた。



今の私が出来ることは己の矜持を守るためお漏らしをしないようにするしか・・・ない。

強く握った拳がひどく汗をかいていることを感じながら私は更にきつく目を閉じた。


そうだ・・・また、()()をしよう。


こんな状態の私でも最近出来るようになってきたことをしようと思い、私は幽霊に気付かれないように深く静かに息を吐いた。





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