これが夢だというのならとっくの昔に目は覚めている(さぁ、愉快なパーティーを楽しみましょう㉖)
いつも読んでいただきありがとうございます。次回は8/8(月)投稿予定です。いつもいいねありがとうございます。
「それで、図書館にきてみましたが・・・・どのあたりの本でしょうねぇ?」
重厚な扉を開け入った図書館のその膨大な量の書物にティリエスとレイは少しばかり驚き、思わずレイが言葉を漏らす。
アイルは見慣れているのか驚かず、寧ろどこか懐かしそうに図書館の中を見ていると、スッと奥の方へ指差す。
「どうして霊獣が捉えることができるのかからだよね。それなら魔法や技量と錬金アイテム関係の書物は奥にあるから調べてみよう。」
「お兄様お詳しいのですね。」
「調べ物ならここは持ってこいだからね・・・まぁ、たまたま覚えていただけだけど。」
アイルのなんてことのない返事にティリエスは相槌をする。
それでも位置の把握なんてなかなかできない事だと感心しているとアイルはお目当ての本が収納してある棚の前で止まり探し始め、何か面白いものでも見つけたのかホルアクティはアイルの肩へと飛んでいった。このまま突っ立っているのも時間が勿体無いのでティリエスも彼に見習って目的の内容が載っていそうな本を探し始めた。
レイはティリエスの護衛兼サポートの為そのまま後ろへついていく。
「まぁ・・・確かに、様々な書がある分他より知識の宝庫と言うべきなんでしょうが、今回のことはもう既に他の人間が調べているのでは?」
「・・・・私もここにきて直ぐにそう思いましたが、レイ、見て。」
そう言ってティリエスは本が所狭しと仕舞われている棚の横板に人差し指でスーッと滑らせる。
するとそこには彼女の指を滑らした痕がくっきりと残っていた。
その様子にレイは彼女が何を言いたいのか分かり、成程・・・と一言呟くと辺りを見渡す。
「ここは随分と人の出入りが無いのですね、掃除にさえやって来ないとは・・・本当に王城内で保管されている場所なのかぁ?」
「どうでしょうか、ただ単に人手不足なだけではないのででしょうか・・・?まぁでも、レイが言った通りここはもしかしたら誰も調べに来ていないのかもしれませんよ?」
「では探せば何か見つかるかもしれませんねぇ・・・おや?」
ふと、レイはある場所に何かを発見しそこへ歩き始めるのでティリエスも何があるのか気になりレイの後をついて行く。
と、ある机に2人は視線を向ける。
「・・・どうやら、私達より少し前に出入りしていた人間もいたようですね。」
机の上に散乱して置いてある書物にレイは視線を寄こしながらティリエスにそう言う。
他の場所より埃の積もり方が少しだけ、ということはここに誰か調べものをしていたという事になる。
「内容は少々穏やかではないですね。」
【呪い魔法の全て】
【呪いの魔法・呪具】
【相手を呪う方法・解呪方法】
そんなに呪いたいのか・・・病んでるな、この人。
そこにあったのは呪い類の本ばかりでティリエスはうすら寒く感じる。
「お嬢様、この欄に錬金アイテムの内容が載った書物がありましたよ。」
思ったよりその机をじっくり見ていたのか、いつの間にかレイは近くの本棚で調べもの関連の内容のものを見つけたようでティリエスは慌ててそちらへ行く。
「本当ですね・・・あ。」
「どうされたんです?」
「この隣にある本、能力の事が書かれた本みたいですね。」
一番読みたかった本がまさかこんな近くにあるとは思っていなかったティリエスは内心ラッキーと思っていると、すぐあることに気が付いて顔が曇る。
「これ、貸出許可が必要な書物みたいですね。魔力が練り込んだ鎖でつながれています。」
よっぽど重要な書類なのか勝手に外せないようになっているその書物に残念に思いため息を吐いた。
鎖を強引に壊すと何か罠が発動するみたいだし、下手な事は出来ないな。
できれば持ち出して読みたいと思っていたが無理か・・・とがっかりしていると、レイが何故か自分の前までやって来て何故が徐にその鎖で護られている本を手に取る。
一体どうしたのかとそう思っていたその時だった。
「ふんっ!」
レイのかけ声の後鎖が何故が急に大きくなりティリエスは突然の出来事に驚く。
驚いたままでいるとそのまままるで風船のように膨らんだ鎖は軋んだ音を出してなんとパンっと大きな破裂音と一緒に粉々になってなくなっていった。
呆気に取られていると、レイがその本を持って踵を返しこちらを見るとスッとそれを差し出した。
「お嬢様どうぞ、こちらも読みたかったのでしょう?」
「あ・・・・。」
貴方、なんつーことをしてくれてんだ!
ドヤ顔のままで渡してきたレイにティリエスは口をあんぐりさせる。
「・・・レイ、あ、貴方それより大丈夫なの?あれ、魔法の鎖でしょ?」
なんの変化も見られないレイに恐る恐るそう聞くと当の本人は今言われて思い出したように本を持ちながら両手やら自分の足やらを見る。
「特に問題ないようですねぇ、といいますか私にはこのようなもの効きませんよぉ。」
え?結構しっかりしていた魔法だったはずだけど・・・・マジで?
なんてことないと言うのでティリエスはレイの魔法耐性の高さにさらに驚いていると、さらにずぃっと本を差し出してきたのでティリエスは思わず受け取る。
「大事ないのなら良いのですけど・・・でも、レイこれ貸出はしていないわ。」
「問題ありませんよ、なんなら夜にこっそり仕舞いますから。それにこれだけ人の出入りもない、管理人もいないのでは持って行っても怒られませんよ。」
「まぁ・・・それもそうですけど。・・・・でも後で良いので元に戻してくださいね。」
最後にティリエスが折れるかたちで本を受け取り、その後本を吟味した2人は後2冊の本を選ぶ。
「では、お兄様の元へ」
戻ろうと言おうとしたその時だった。
何か大きな物が倒れる音が近くで聞こえ、ティリエスとレイは何か起こったことを感じ取り急いで元来た道へ戻る。
「お兄様!!」
見ればアイルが倒れた側で蹲っているのがみえティリエスは慌てて彼の元へ駆け寄る。
「お兄様?お兄様!しっかりして下さいまし!」
ティリエスの声に反応して、アイルは蹲っていた顔を上げる。
同時にアイルに守られたホルアクティも顔を出す。
「ティリエス僕は大丈夫だよ。ホルアクティも無事かい?」
そう言うとホルアクティが言葉無しに何度もコクコクと頷いたのでアイルはホッとした顔つきでホルアクティの頭を撫でた。
「何があったんですの?」
「分からない。調べ物をしていたら何か視線を感じたんだ。振り返ったら僕たちに向かって何か光のような物が飛んできたから咄嗟に避けたんだけど、その拍子で棚が倒れてしまったんだよ。」
「・・・逃げたか。」
レイの一言で相手は逃げたのだと悟ったと同時にとりあえず危機は去ったとほっとしたティリエスはアイルの汚れた服をはらう。
「顔は見なかったんですの?」
「一瞬だったからね・・・でも、多分なんだけどホルアクティを狙っていたと思う。」
「え?」
ここでホルアクティの名前を言われ、ティリエスは聞き返すとアイルはホルアクティを見つめる。
「僕を狙っているなら多分違う箇所に放っていたと思うし、ホルアクティの位置を見て放ってきたように思えたからね。・・・ともかく、結構派手な音してたから大騒ぎになる前に出よう。ここにいると面倒になる。」
アイルの言葉に2人は賛成し図書館を後にした。
いつも読んでいただきありがとうございます。