これが夢だというのならとっくの昔に目は覚めている(さぁ、愉快なパーティーを楽しみましょう⑳)
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「貴女達はもしかして・・・妖精様?」
箱から現れた2人にメイサは驚いたまま質問すると、色違い瓜二つの2人は互いに顔を見合わせて首を傾げる。
「ん~?私は妖精ではないなレッド。」
「そーよ?私も妖精ではないわブルー。」
2人の返答にかつて妖精の真似事をしたティリエスは納得する。
あれは確かに私の所有物だったもの・・・だけど、これはどういうことだ??一体何が原因であの2人という存在が出現したのだろうか?
「では一体貴女達は一体誰なんです?場合によっては君たちを拘束しないといけなくなる。」
少しだけだが警戒を解いたエヴァイスは2人にそう言うと、くるんと勢いよくエヴァイスの方へ頭を向ける。
無機質な瞳に見つめられエヴァイスはついぎくりとする。
「私達を拘束?出来るわけないだろう?なぁレッド。」
「えぇ、ただの人間が私達に敵うわけないじゃない?ねぇブルー。」
「「シシシ・・・お前を壊してやろうか?」」
思ったより沸点が低いなこの2人。
ティリエスは冷静に観察しながら2人の様子をジッと見つめる。
ティリエスは唯傍観しているなか、不機嫌な空気を纏いエヴァイスに対し手をかざす2人にストップをかけたのはメイサだった。
「やめて!この人は私の護衛です。怪我をさせることは以ての外です、おやめなさい!」
メイサの強い後尾にびくりと反応した2人は、サッと手を後ろへ隠しバツの悪そうな顔を見せた。
「怒らないでマスターメイサ、私はただ私たちのことを悪く言うから・・・ねぇレッド。」
「そうよ、私達悪者じゃないもの。ねぇブルー。」
まるで小さな子供が駄々をこねるように言うのを見ていたエヴァイスも何か思うことがあったのか先に彼の方が警戒を解き2人に頭を下げる。
「お二方大変失礼をした、初対面で言うことではなかったと反省します。」
すぐに謝罪をしてきたエヴァイスの行動に2人は黙って互いに見合わせたが、すぐにエヴァイスと同じ行動をとり頭を下げた。
「ううん、私もごめんなさい。」
「私もごめんなさい。」
「誤解も解けたようですし、少し話しましょうか・・・レイ、人数分のお茶を。」
レイにそう言うと、ティリエスはとりあえず彼女達から話しを聞くために席を設けたのだった。
「初めて食べたけどこれ美味しいねレッド。」
「初めて食べたけどとても美味しいわブルー。」
「姉ちゃんら、これ食べてみ?口の中で蕩けて幸せな気持ちになるんや。」
「「ん・・・本当だねぇ美味しいねぇ。」」
「・・・改めて聞きますけど、貴女達はこの箱の何?私をマスターと呼ぶのは箱に名前を書いたからなの?」
レイの作ったお茶を飲みながら一息ついた2人が先ほどより落ち着いたのを見計らってメイサは自分の疑問を彼女達にぶつけるとホルアクティと同じように片頬がはち切れそうになるほどクッキーを頬張っていた2人はピタリと動きを止めたと思ったらシャクシャクと急いで咀嚼し頬張っていたクッキーを砕いてごくんと飲み込んだ。
口元にクッキーの残りカスをつけたまま青い髪の子ブルーが口を開く。
「私達はその箱裁縫道具一式の存在している道具、それに当たります。マスターメイサ。」
「道具の一つですって?」
「そうよ、マスターメイサ。ブルーと私レッドは本来は消費系対自動防衛魔導型武器通称【待ち針】と呼ばれている物ですわ。」
何?待ち針?もしかしてあの待ち針か?
ティリエスは表情に出すことなく彼女達の正体に驚く。
大小変化させられることは知っていたが人型になるなんて見たことも説明内容も見たことがない。
「本来なら、私達は人に変化することなく物として静かにその中で眠りについていた。」
「でも、途中から誰かの暖かい手に撫でられている感覚に気が付いて目を覚ましたの。」
「「その手はマスター、貴女の手だった。」」
「私の?」
「そうだよ。貴女の手が私達を大切に、大切に扱っている事を知った。嬉しかった、私達を大切に扱っているその気持ちが嬉しかった。」
「同時に、貴女が大切な人に護られるだけの自分に悲しみと憤りを抱えている事を知った。」
「「だから、私達は大切してくれる貴女の為に力を貸したいと思うようになって、願って願っていたら・・・いつの間にか私達はこの姿になれるようになった。それと同時に前所有者の気配がなくなり私達は貴女にマスターになってくれる日をずっと心待ちにしていた。」」
「それが今日、お祖母様が名前を書いたことで真の所有者となり貴女達が箱から出てこれたということなんですね。」
「そういうことだ、マスターの孫。」
「そういうことだよ、マスターの孫。」
・・・・私は貴女達の所有者だった奴だけどねぇ。
祖母以外人に興味がないのかティリエスの事を名前ではなく雑にマスターの孫と呼ばれたことに少しもやもやしつつも自分が彼女達の所有者だったという事が本人達にも解っていないことに密かに胸を撫でおろした。
「他にもあんさんらみたいな奴がこの中におるん?」
ホルアクティは蓋が開いた裁縫道具の中身をジィっと覗き込むながら2人に聞くと、2人は同時に首を横に振る。
「人の姿になれたのはレッドと私だけだ。」
「そう、私とブルーだけ。他の道具には意志はないわ。」
「きっと、前の所有者・・・マスターメイサで言うヨウセイは元々強い奴だったのかな?何か私達に思入れがあったみたいなんだけど・・・どう思うレッド?」
「そうね・・・特にそのヨウセイの力が体に馴染んでいる感じがするから何か私達に特別な何かを感じていたのかもね。私もそう思うわブルー。」
その言葉を聞いてティリエスは遠い向こうを思わず見た。
それは十分あるわ、だって課金アイテムなのに壊れたらなくなるんだもん貴女たち。自分より防御魔法と回復魔法をどれだけかけたと思ってんのよ!いくら課金したかなんて野暮なことは言わないけどね!
「では、元々妖精様は貴女たちのように覚醒させる何かを施して、私たちの元に置いたまま去っていったのかしら。」
え?
「それは十分にあり得る話し・・・もしかしたらこのことを見越して妖精殿はメイサ様の元へ届くようにした・・・つまりは必然ということでしょうか?」
いや、お祖母様とエヴァイスさん盛り上がっている所申し訳ないけど、本当にただ忘れただけだから!偶然だから!
まぁでも変に勘違いしてもらっているしいいか!
本当のことを話せないのでモヤモヤしっぱなしのティリエスはもう考えうことをやめ都合のいい方向に勘違いしている今の現状を見守る。
「では・・・本当に貴女たちは私のために外へ出てきてくれたのね?」
メイサの言葉にブルーとレッドはコクっと頷くとメイサの前にそれぞれ手を差し出す。
「「私達を使っていただけますか?マスターメイサ。」」
真剣な声で言った2人にメイサもまた姿勢を正し2人の手を両手で握る。
「えぇ・・・えぇ勿論。どうか私私達の為に力を貸してくださいな。」
「「・・・・はいっ!!」」
2人は笑みを浮かべ元気よく返事を祖母にする姿を見たティリエスはこれはこれでよかったと微笑みながら見届け、自分もお茶を一口飲むとほぅっと息を吐いた。
と、今までジィっと裁縫道具を見ていたホルアクティが顔を上げる。
「でも、残念や。こんだけいっぱいお仲間がいるなら人になれれば賑やかやったのになぁ・・・。」
その呟きにブルーとレッドはホルアクティに目を向けると口を開いた。
「そう残念がらなくてもいいよ、ここには私達しかいないけど他にもいるから。ね?レッド。」
「そうそう、また私達みたいに目覚める奴がきっと出て来るわ、ね?ブルー。」
「?他の奴らって?」
ティリエスも誰もが不思議な発言に首を傾げる。と、ブルーがあるものを取り出した。
え?あれって・・・・亜空間収納の袋?!!私落とした?!いや、持ってるのが分かる。・・・じゃああれは一体??
手に持っていたものを見てティリエスはなぜあれがここにあるのか驚愕する。
と、ブルーは口を開く。
「どうやら私達そのヨウセイの物だったからか繋がってる。」
「全部じゃないけど、私達みたいな道具を呼ぶことができるの。」
「「これ使えば私達みたいな道具が出てくるからきっといっぱい仲間ができるよ、楽しみだね!」」
のぉー!!!!
ティリエスは心の中で大きく叫んだ。
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