これが夢だというのならとっくの昔に目は覚めている(さぁ、愉快なパーティーを楽しみましょう⑭)
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あーー・・・折角ご飯食べていたのに。残してしまうようなことして残念だったなぁ。
「ティリエス、ご飯は足りているかい?足りていないなら、帰って何かを作るように言うが。」
そんなことを心の中で思っているとまるで分かっていたかのように父からそういわれ、ティリエスは外の景色を見ていたのを止め、パッとアドルフの方に振り返る。
「お父様沢山食べましたから大丈夫です・・でも、そうですわね。出来ればデザートを食べられなかったのでデザートがあれば嬉しいですわ!」
「そうか、帰ったら早速手配してもらうように伝えよう。」
「なら、私は甘いミルクティーを淹れましょう。最近はコーヒーとミルクを使うカフェオレという飲み物も好評ですが、あれを飲むと寝つきが悪いと聞いておりますので。」
レイの言葉にティリエスは心の中でちぇっと悪態をちょっとだけつく。
昔からブラックコーヒー派の私はどちらかといえばカフェオレの方を好んで飲んでいたから、要望を言う前に却下されたことは残念だったが、レイの言うことは最もなので仕方なく従うことにする。
「宰相殿に会ってみてどうだったティリエス。」
「宰相様ですか?」
「あぁ、私はもう何度も会ったことがあるし今までのやり取りで悪いが先入観がある。お前が初めてってどう思ったのか教えて欲しいんだ。」
「そう・・・ですね・・・。」
そう言われティリエスは先ほどのやり取りをゆっくりと思い返してから口を開く。
「私は正直に言いますが、優しい方だと思いました。周りをよくご覧になられて率先して動ける方だと思いましたし、私もお祖父様達のされた事は知っていたので先入観は少なからずありましたが、それが拭えるほどの人柄だと思いました。」
「そうか。」
「それと、宰相様は今回の招待には私達が来て欲しいという思いがあったようにも思います。」
「どういうことだい?」
アドルフとレイはティリエスの言ったことが分からず彼女を見る。
「随分前に招待状の欠席は伝えたはずだというのに、人数分以上の替えのグラスや食器が食器台の中にありました。それはきっと急な来訪でも直ぐに対応できるように準備を行っていたからではないのでしょうか?他の公爵家の方が来訪しても良いように。理由はわかりませんが・・・。」
「・・・・レイは?」
「私ですかぁ?・・・私から見ればただの晩餐会にしか見えませんでしたねぇ?食器類料理そして飲み物にも薬物毒物の反応はほんの僅かにもありませんでしたからねぇ。」
「それは銀の食器を見れば一目瞭然だが?」
「いやですねぇ、旦那様。今は銀変色を起こさない毒物の開発が進んでいるんですよぉ、遅れてますねぇ。」
ぷぷっと小馬鹿にしたような笑いをされアドルフは少しムッとしながらも話しを進めるように顎でレイに指示するとレイは笑うのを止め口を開く。
「私の鼻は少し特殊でしてね、無味無臭でも嗅げば分かるんですよ。空気が何時もより違うと言いますか・・・まぁ説明は難しいんですけどね。」
なにそれ、無味無臭の毒が分かる鼻ってどんだけ凄いんだっていうか犬か!
ティリエスは即座にレイの特技に突っ込みを入れていると、アドルフは顎に手をやり考える。
何かを自分の中で整理しているのだろうとティリエスがそんなことを思っていると不意に顔を上げたアドルフと目が合った。
「実は今回参加したのには王命があったからなんだよ。」
「王命ですか?・・・もしかしてあの時の手紙ですか?」
ティリエスは宰相の元へ行く数時間前に受け取ったあの封蝋の手紙を思い出し問うとアドルフはこくりと頷く。
「実はここ最近有力な家門の夫人達の霊獣が盗まれているらしい。」
「霊獣を?そんなことが出来るんですか?」
ティリエスは驚いて思わず質問する。霊獣といえば契約で繋がり自分が死なない限り切っても切れない関係となる。
そんな間柄の霊獣を他人が奪えるものなのだろうか?
「どのような手口なのか分からないが、実際に起きているそうだ。そして霊獣を奪われた女性達は体調不良を起こし屋敷から出られない体になってしまっていると。どうやら魔法具で霊獣を奪われ、魔力バランスを崩された状態で強い呪いの魔法をかけられたらしい。そんな魔法具があるのか確信があるわけではない・・・が、襲われた現場を目撃した人物が倒れている女性に何かをし、鈍い音が聞こえ黒い靄が立ち込めたと同時にその場を足早に去っていったのを見た・・・と。」
「旦那様はそれを行ったのは宰相と?」
「私の判断ではなく、その男の風貌が宰相殿に似ていたそうだ。暗がりで顔が見えなかったが彼の体型や歩く仕草が似ていたらしい。しかもその襲われた時間帯は宰相を目撃した人は居ないとのことだ、だから何か怪しい点があれば調べてほしいと手紙が来たわけだ。それに、彼は元々第2夫人についてた人間だ。」
え?そうなの??
ここで初めて宰相は王家ではなく第2夫人側の人間という事実を聞かされティリエスは驚く。
そんな愚かな選択をする人には見えなかったんだけどなと思ったのと同時にある可能性に口を開く。
「・・・調べられるとわかって愛想よくしただけでしょうか?」
「いいや、それは違うだろう。私の技量には嘘偽りを見分けるものがあるがそれが反応しなかったのだ。だが彼をあまり認めたくないという思いがあったのも事実。そこでティリエスにはワザと彼の情報を教えず彼の人となりを見てもらったんだよ。娘はまだ幼いが人を見る目は確かだと私は思っているからね。」
褒められちゃった。やだーお父様なんか照れる。
急に褒められてティリエスはぽっと頬を染めているとレイが「なら。」と口を出す。
「宰相じゃないとすれば誰と思っているので?」
「・・・・・・そこだ、もし私が思ったことが正しいのなら宰相の今までの行動も根本から見直す必要がある。」
「根本ですか?」
「宰相は第2夫人についたわけでは無く寧ろ第2夫人を見張るために周りを欺いた可能性だ。」
「欺いていた・・・。」
それならどうしてそれが必要だったんだろう?
新たな疑問に首を傾げていると父はレイに声をかける。
「私は明日明後日は王家へ出入りする時間があるだろうからその間ティリエスを守れ、いいな。」
「畏まりました。虫一匹近寄らせませんよぉ・・・フッフフフ。」
「あれ、でもお父様明日はパーティーではありませんか?」
明日のスケジュールを逆算したティリエスはスケジュールと合わないことに首を傾げるとアドルフは「あぁ、そのことなんだが。」と言葉をつづけた。
「実は手紙の内容には会は3日後へ延期する事になったそうだ。だから暫くは離宮で待ってもらう事になるよ。ティリエス、辛抱してくれるかい?」
「勿論ですわ!お父様!」
予期せぬ延期の言葉に思わず「ゲッ」と声が出そうになったが、それは呑みこんでティリエスはそう返事したのだった。
裏設定;
「そういえばお父様、宰相様には何をされてそこまで嫌いになりましたの?」
「ん?・・・・・うーん、それは。」
「お嬢様、大方奥様のことを言われたんでしょう。旦那様がここまで態度に出すなんてそれしかありませんよ。」
「・・・・・・・・・・・。」
「図星みたいですわね。」(彼の沸点は人によって激しいので実は分かりやすいです。因みに宰相に言われたのはリリスが公爵夫人としてふさわしくないと言われたことで切れてぶん殴ろうとした過去があります。そこからアドルフは宰相が嫌いです。)
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