表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
題名はまだない。何せこの物語はまだ途中なんで!  作者: ちゃらまる
第1章~夢現編~
27/747

如何にして私はここにやってきたのか(本人だってよくわかっていない。)㉗

今日はキリの良いところまで2話投稿します。気を付けてはいるんですが、もし誤字脱字ありましたら・・・こっそり教えてください。あと・・・この物語はホラーではありません。



私は、突如現れた女から距離をとりつつ視線を外さず見つめていると、相手は障壁という障害がなくなりその場に倒れ蹲っていた。

光の範囲内から遠ざかっているので女の姿は曖昧だが未だ身体から靄が噴き出ている。


私は念のためもう一つ光の魔法を放ち辺りを照らすと、先程より明るくなり周りがより鮮明に見える。

何もない空間ではあったが灯の存在にほっとした半面、女の存在で私は安心出来ないでいた。


いきなり襲い掛かってくるような人を信頼できるわけないよね、・・・・バリバリの変質者じゃんかどうしよー。


防御魔法で護られある程度の危害は加えられないと分かっているので幾分か冷静に相手を見ていると、蹲っていた顔がこちらへ向けられギッと睨んできた。ぼさぼさの紅い長い髪に顔色の悪さも相まってより怖さが倍増する。


ひぇ・・・と情けない声を出しそうになるのを堪え平静を装う。


「お前のせいだ・・・・お前の・・・・お前さえいなければぁぁぁ。貴様のような餓鬼にぃぃぃ!!」

発狂してガリガリと爪を地面に力いっぱい引っ掻くその女に、思わず私は顔が歪む。


えぇぇ・・・・痛くない?爪。

案の定爪から血が滲んでいるので、やはり痛そうである。

そんなことも構わず女は恨み言を言い続ける。



当然、私に対しての心無い言葉ばかり並べられぶつけてくる。けれど、知り合いでもない赤の他人に言われても痛くも痒くもない。それより・・・・。


今、聞き捨てならないことを聞いたぞ私。


この人に聞いてみたいけど声かけたら火に油を注ぎそうだよね・・・どうしよ。

私は正常でない女に声をかけるのを一度躊躇したが私は意を決して口を開く。


「あの、すいません。激高しているところ申し訳ない。まず落ち着いて話しを聞いて頂きたいのですが、私、貴女のこと知らないどころか多分面識ないんですけど誰ですか・・・?あと、餓鬼といわれてますが、私子供というほどの年齢ではないん「煩い煩いうるさぁぁい!!クソガキが私に指図なんかするなぁぁ!!!」・・・・。」


女の怒りに感化されているのか靄のより濃く多く吹き出す様子に私は内心ため息を吐く。

極力穏便にしようと言葉を選んで話しかけたのだが、案の定火に油を注ぐ結果となってしまった。

指図したつもりないんだけど・・・それに餓鬼って・・・クソガキってねぇ・・・え?


何気なく私の手を見て私はその場で固まる。


「私の手が小さくなってる?!」


驚いて素っ頓狂な声をあげる。

そういえば暗闇であまり気にしてなかったけど、よくよく思えば私の目線もいつもより大分低い。

どうして体が縮んでいるのか分からない……が取り敢えず原因はさておき、相手が私を餓鬼扱いしていた事実が判明し私は相手を見やる。



餓鬼扱いしているのは分かったけど、でも・・・この人いったい誰?いや・・・紅い髪、どこかで見たことがある・・・気がする。

頭を巡らし目を細めて相手を見る。・・・と、女の顔にある泣きボクロの位置を見てある人物を思い出す。


「貴女・・・もしかしてカナディアさん?」

今の容姿にぼろ布のワンピースを着ていたせいもあってか、以前夢で見た時の姿とはまるで別人に変わってしまってすぐには分からなかった。


彼女はなぜここに?それに私が見えている?

夢の住人と自分の存在が対面するなんてここは一体何なのだろうか?



(わたくし)ねぇ、あともう少しだったののよ。」

そんな私の疑問に答える気はない彼女は、ゆっくりと立ち上がり私に一歩一歩近づいてくる。

独り言を言っているように、でも私に聞かせるように女は話し続ける。


「もう少しであの人は私のものになっていたの。幼い頃・・・私の存在を汚いと、穀潰しといわれて血縁者から使用人からも痛めつけられていたあの頃に、一度だけ出会ったあの人だけが私に優しくしてくれた・・・。あの人の近くに居たくて、必死になって自分を磨き、護る術も身につけ自分を陥れる人間には屈しなかった。あいつらを蹴落として力をつけてようやくあの人に届くと思っていたのに・・・・あの女が私のものを掻っ攫っていった。あんな何の取り柄のないただの肉付きの良い女にっ!!」


ギリギリと唇を噛んで怒りで震える女は更に話しを続ける。


「あそこまで追い込んでいたというのに今度は色んな大人が邪魔したの。あの人の親、親類、その部下、王家までっ!!だから最後に私の命と引き換えに魔法を発動して私の邪魔をしたあの女を道ずれにしようとしたの・・・。けど死んでからも強い護りの力であの女の中に入っても中々殺す機会がなかった・・・けど、あの女が弱った今なら女を殺すことができる。それが分かった時、・・・嬉しかったわぁぁ・・・。」


話しているうちに怒りから段々と女は嬉しそうに微笑みを浮かべる。まるでこれから楽しい買い物に出かけるように嬉しそうに笑う表情と言っている内容が噛み合わない。そんな彼女の様を見て背筋に悪寒が走ったが、隙を見せてはいけないと私の直感が強く言っているので表情を変えずに彼女の話を聞き続けた。


「もうすぐ死ぬと思ったのに、まだしぶとく生きているの。なんでかあの女の中から弾かれてこんなところに追いやられた。そのせいで私の呪いの魔法も切れかかっている。それで・・・原因を調べに向かえば、・・・お前がここにいた。」


こてりと私を見つめたまま首を傾げる。


「あの女がしている護りの腕輪の気配とお前、無関係じゃない。私、それで分かったの。お前が裏でちょろちょろ手を貸していたんだって。・・・・本当、目障りだわぁ。」


障壁の前に立ったカルディナは首を傾げたまま真顔でこちらを見やる。

私は、彼女から視線を逸らさず彼女の話しを黙って聞きながら、彼女の過去について考える。



話しを聞く限り、彼女はつらい幼少期を過ごしていたことが伺える。


「私は貴女が自分を護る為にしたことについてどうこう言わないし言うつもりもない。」


率直に思ったことを私は彼女に伝える。


力と権力もない子供の自分が助けて欲しいと手を伸ばしても誰1人と助けてくれない、そんな現実に彼女は自分を救うため唯一自分が身を護ることができる、呪いの魔法を身につけたのだろう。その事に対して正直同情はするし、彼女の人生だ。私から言う事は何もないしそのことでとやかく言う資格もない。


けれど・・・・。




予想していた返答とは違ったのか彼女はあら?と首を戻して私を不思議そうに見つめる。


「意外だわ。『人の命を奪って生きようとするなんてっ!』なんてあの女みたいなこと言うのかと思っていたけれど、貴女は違うのね?」

「私は別に聖人君子じゃないよ。ただ貴女は自分を護りたかった、その為に呪いの魔法を使わざるを得なかった。」

「そう・・・私の唯一は闇魔法の特化。だから呪いの魔法は私の唯一の武器になったの。」

「貴女は死にたくなかったから。」

「そう・・・私は死にたくなかった。」


そういって彼女は嬉しそうに微笑む。恐らく彼女は私を良き理解者だと思ったのだろう。

だが、私は彼女とは逆に厳しい表情を全く変えなかった。


そして、私はある疑問を彼女に投げかける為もう一度口を開いた。



「だけど、貴女はいつしか自分を護る以外にたくさんのものを奪うために呪いを使うようになった。それは、どうして?」


私が質問をすると彼女は微笑んでいた表情を変え、また再び不思議そうに私を見つめる。


何故そんなことを聞くのか分からないようだ。


「それは、『私が欲しい』と思ったからよ?どうして?」



だって私より目立つドレスを着ているんですもの。

だって私より高そうなジュエリーを身につけているんですもの。

だって私より楽しそうにしているんですもの。

だって私より幸せそうに笑っているんですもの。



なんてことなく彼女はそう言う。そして彼女は最後に私に向かってこう言い放った。


「だって私、それらを奪うのも、大切なものを壊して泣き叫んでいる他人を見るのも・・・すごく、楽しいんですもの。」




そう私に言ってにたりと笑う顔は悪魔、そのものだった。

裏設定:カナディア=ダンテ・ルディリアという女性、実はかなり可哀そうな方です。彼女は侯爵家の父親と使用人の母の間に産まれました。所謂望まれない子供で引き取りの理由も母親が美しい容貌で母に似ていたからという理由で侯爵家の養女として迎えられました。作中でもありましたが碌な育て方をされていません。自分を害する人間を呪う内に呪い魔法を完成させ結果自分の身を護ることが出来ました。ただ家族、使用人からされた仕打ちで自分は誰からも愛されないという風に思い込み、日々を積み重ねるに連れ彼女の心を蝕み、後に快楽殺人の道を進むことになりました。

そして彼女の母親ですが、侯爵家から彼女を引き取る話しをされた際実は何度も断っています。自分の子を愛し1人でも育てようと決めていたからです。けれど、無理やり引き離された際抵抗したため彼女は殺されてしまいます。もし、彼女が母親を探し近隣の村人から母親の最後を聞いていたら、少しは彼女の未来も変わっていたのかもしれません。ですが取り返しのつかない程彼女は多くの罪を重ねることになります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ