これが夢だというのならとっくの昔に目は覚めている(さぁ、愉快なパーティーを楽しみましょう⑧)
今回の話しは少し口悪い表現があります、ご了承ください。
いつも読んでいただきありがとうございます。次回は6/24(金)投稿予定です。
華奢な身体を奮い立たせ言い放った少女は目の前の女性から眼を離すことなく言葉を続ける。
「貴女がどんなことをしようとどんな風に悪魔の囁きをしようと、私もお父様達だって貴女に屈しないわ。」
「悪魔の囁き?いやね貴女、私は貴女のことを思っていったんですのよ?だって、よく考えてご覧なさい?何かしら女神の加護を受け継ぐはずの王家の血筋の貴女がそれを持って生まれてこなかったことで、ここの人間達が貴女に対してどのような目で見ているのか、王達の関心が貴女のお兄様だけに向けられているという事実が貴女をどんなに悲しませたのか。私はよく知っていますよ、ですから貴女の力になろうと思ったのです。それを悪魔の囁きだなんて・・・少し私悲しいわ。」
白々しく泣き真似をするその女に怒りを覚えたのかギュッと握り拳を作って王女は耐えて第2夫人を見つめ唸るような声を出す。
「私の事を憂いているお父様達が何故兄様に気をやっているのか、その心情も知らぬお前に私のことなど分かるはずもない。そうやって私を唆し利用しようとしないことです。私はもう貴女に騙されないと誓ったのですエスカリーナ。」
王女の言葉に泣く真似をやめ、くつくつと笑い始めたエスカリーナと言われた目の前の女性はニタリと厭な笑みを作って王女を見下ろす。
その顔は丁度隠れて見ていたティリエスからも見え、醜悪なものに映る。
「・・・私、まだそんなに貴女をからかってなどいないのだけれど。そう思うことがあったというなら・・・お可哀想に。部屋で伏せっている王妃様に慰めてもらいなさい。まぁあのような事になった母親に慰められても私なら嫌だけどねぇ?フッフフ。」
「貴女やはりお母様にっ!私のお母様を元に戻せ!!この外道が!」
「だから言っているじゃない、国王に王妃を治す変わりに私に子種を宿せ・・・と。簡単よ?ほんの一夜、私と閨を共にすればいいだけで王妃が治るんだから。」
「それをお父様が容認するものか!このアバズレが!!」
「まぁ?まぁまぁまぁ!そんな言葉をどこで知ったのでしょうか?王女がそんな品の無い言葉を使って、いけませんわ。一体だれが教えたのかしら突き止めないと・・・・・・あぁ、でもその前にお前、今・・・私を馬鹿にしたな?」
口調が変わった途端、強い怒りが肌に刺し王女の肩がびくりと跳ね、女の変わりようにティリエスは警戒を強くさせ目を鋭くし睨んだ。
「最近はあの殿公爵家の人間がしゃしゃり出るから、ちょっと忘れちゃったのかしらね?私に楯突くとどうなるのか・・・従者に刺された2年前のお腹の傷は治った?」
何ですって?!!
その言葉で王女がどういう目にあわされたのか理解できたティリエスはいつもの冷静さはなく目の前の女に怒りが湧き、その表情をみたホルアクティは慌て落ち着くようにとティリエスの服を何度も嘴で突き気を逸らそうとしたが無駄に終わった。
王女は身の危険を感じ後ろへ一歩下がるが、それより先に第2夫人の方が早く前へ歩を進める。
「い、嫌!来ないで!」
拒絶の声など関係なしに嫌な笑みを浮かべたまま迫る第2夫人に王女は両手で頭を抱えて庇う様に身を守るためその場にしゃがんだ。
自分を守ろうとするその少女の行動も虚しく手を伸ばし無遠慮に頭を掴もうとするその女に、ティリエスはもう我慢が出来なかった。
その子に触るな!!【風圧】!
ティリエスがそう思った刹那、王女と第2夫人の間に強い突風を作り出しその強い風圧に第2夫人だけその場からはじき出され後ろ向きに数メートル跳び倒れる。
王女は急に悲鳴を上げた第2夫人に一体何が起こったのか分からず遠くで倒れ込んで痛みで唸っている姿を呆然と見つめた。
「いっ・・・貴女今何をしたの!」
残念ながらその子じゃないんだよなぁ。
心の中で吹き飛ばされた第2夫人にそう答えると、鬼の形相のままの顔で両手に魔力を込めるティリエスを見てホルアクティは慌てる。
「殺しはしないわ。」
まぁ最低な仕返しをするけどねっ!
そう短く答えると、気がついていない夫人の頭上に水と粘土を精製し混ぜ合わせていく。
大きな泥水が出来たところで急に自分の周りが陰ったのを感じ取り夫人が何事かと見上げたほぼ同時にティリエスはそのまま落下させた。
「くらえ、ただの泥水ドブの匂い付き。」
避けるまもなくそれが第2夫人の頭上から降り注ぎ、頭から足の爪先まで泥水を被りドレスや髪を汚していく。
目を押さえ悶える第2夫人にティリエスは魔法で声を拡張させると夫人に向かって声色を変え叫んだ。
「やーい!!ザマァみろクソババァ!!」
「誰だ今言ったのは!!!そこで待ちなさい!!」
「誰が待つか!!ばーか!!!」
ドロドロと粘度の高いドブ水を懸命に拭いなから叫ぶ夫人にそう叫ぶとティリエスはすぐに走って逃げる。
姿は見えないが逃げる草の擦れる音がした方向を掴んだ第2夫人は、王女のことなどもう眼中になく自分をこのようにした犯人を追いかけるため森の中へとよろよろと追いかけていった。
「今のは・・・一体。」
1人ぽつんと取り残された王女は向かっていった森を方角を見つめながらそう一言呟いた。
いつも読んでいただきありがとうございます。




