これが夢だというのならとっくの昔に目は覚めている(さぁ、愉快なパーティーを楽しみましょう⑦)
いつも読んでいただきありがとうございます。次回は6/22(水)投稿予定です。いいねや評価などいつもありがとうございます。
・・・さて、お祖母様が気を利かせて勧めて下さった庭園散策ですが・・・さて、どうしましょうか。
父や大叔父に何度も謝られたティリエスは本来なら自分の失態のせいで起こってしまったと理解している手前居たたまれなく思っていると、何かを察してかお祖母様が庭園に咲き誇る花鑑賞を勧めてきたのでティリエスはその提案に乗りホルアクティを連れて一緒に庭園散策をしていた。
一人で行くといった途端先程の事もあるからと大人達は従者をつけることを強く勧めたが、少し一人になりたい事やホルアクティも連れていくしここからそう遠くない場所までしか行かないことを条件に言うと、大人達もその条件に納得し一人散策を許されたティリエスはこれからどうしたもんかと頭を悩ませていた。
頭を悩ませていることといえばもっぱらこの壊れてしまったアロマディフューザーである。
思わず咄嗟にお祖母様が持ってたアロマオイルの入った木箱を中にしまって持ってきちゃったけど・・・まぁ、いいか!大叔父様でもすぐに直せるわけないだろうし。でも、本当にどうしようかな。贈り物が壊れた今王妃様の贈り物をどうにかして拵えないといけない。
幸いお祖母様が咄嗟に隠してくれたおかげで母と一緒に調合したアロマオイルセットを持っていたから、まだ全ておじゃんになったわけではないのでどうにかできる!・・・かもしれない。
「うーん・・・。」
「お嬢はん、どないしますん?」
「どうしましょうかねぇホルアクティ・・・あれ?ホルアクティ今喋った?」
ここでは会話しないという約束をしていた彼が急に話しかけてきたので、少し慌てて身内以外の人間がいないか辺りを見て確認をする。
「今は緊急事態っちゅうやつや。それに今わいとお嬢はん以外誰もおらへんよ?」
のんびりとした口調でホルアクティが言う。私より気配に敏感な彼がそう言うなら大丈夫かと思ったティリエスはそのままホルアクティに話しかける。
「そうですね・・・考えているのは他の皆さんのように刺繡入りのハンカチにアロマオイルをしみ込ませたメッセージカードを添えるようにすれば大丈夫でしょうか。」
「贈り物の用のハンカチなんて持って来とったん?」
「えぇ、実はお父様達には内緒で刺繍入りハンカチも同時進行で進めていたんです。上手くいくか分かりませんでしたから、でも正直いうとねぇ。・・・・・・・・・・あの女性、なんてことをしてくれたんだか。」
急に低い声で恨むように呟いたティリエスの声にホルアクティはびくつく。
普段温厚な彼女の声からでた敵意の感情にごくりと唾を飲み込む。
これはあれや・・・お父はんそっくりや、流石親子やなぁ・・・ワイの主をこんなに怒らせてあのお姉はん知らんで・・・。
「・・・・でも、変ですね。」
そんな事を思っている彼に気が付くことなくティリエスは考えながら歩き出し、ぽつりと言葉を漏らす。その言葉の意味が分からずホルアクティは首を傾げた。
「変?って何がやの?」
「お父様達が第2夫人の行動に我慢して静観したのは確かにあの場では正解です。でも、それ以前に邪魔されないようにするための手段をお父様達はとれたはずなんです。」
「?どゆこと?」
「王妃様の書簡ですわ。」
そう、あの側室を護る法律の存在が自分達の首を絞めると言う事を時の貴族たちも理解していた。
けれど反対したところで強引に事を進めるのも分かっていた。だから法律を認めるために貴族側の条件を呑むことでこの法律は成立している。
幾つか決めさせた条件があるが、その内の1つに王妃の書簡に関する条件がある。
もし、側室達が意図して一貴族の者を妨害や暴挙を行った場合その側室を一時法律無効させ拘束できるという書簡を王妃は作れる。
その書簡が有ると無いとでは向こうの出方もかなり違っていたはずだ。
でもお祖母様はお茶会を前もって開くつもりでいたのにそれを王妃様から貰わなかった。ちらつかせるだけでもすればわざわざ認識阻害魔法を施さなくてもこれは壊されなかったはずだしそもそもここには来なかった可能性が高い。
確か王妃様随分前・・・ここ半年ほど前から姿を見せていないと聞いていたけれど・・・デスクワークすることが出来ない程衰弱しているのか?
いや、それならもっとお祖母様お祖父様、そしてなによりディオス大叔父様がもっと焦燥していてもおかしくないし、更に言えば本当に病気であれば医師であるジョアナお祖母様がここにやって来ているはず。
病気じゃない・・・でも姿を見せることが出来ない状況ってなんだろう?
「お嬢はん、なんやここ何処やろ?」
「・・・・・ん?あれ?」
ホルアクティの言葉に意識が浮上し、辺りを見渡せばそこは最早花園ではなく隣は森が生い茂っている外れた小道のようだった。
・・・いけね、考えながら歩いていたらいつの間にか道が逸れてた。
花の観賞どころではなかったティリエスはまずいと感じ頬をポリポリかく。
遠くには行かない約束だったのに、どう考えても遠くに来たぞこれ・・・やべ。
こういう時は来た道をさっさと戻るに限るな、怒られたくないし。
そう思ったティリエスはさっさともと来た場所へ踵を返した・・・その時だった。
「・・・・ん?」
誰かの声が聞こえ、ティリエスは歩くのを止めその場で耳を澄ます。
気のせいかと思ったがそうではなく、その声は小道と隣接している森の中からでどうやら誰かと誰かが言い争いをしているような様子だった。
なんだろ?喧嘩かな?・・・関わって面倒くさくなっても困るし。
気にはなったがティリエスは首を突っ込むことをせず帰ろうとしたが、先ほどから聞こえる声より大きな声で女の悲鳴が聞こえ、ティリエスは咄嗟に自分達に認識阻害魔法をかけ声をした森の方へ足早と入っていった。
確か、この辺りで・・・あ、あそこだ・・・げっ!
声をした方へ向かうと、すぐ先にはあの第2夫人ともう1人倒れている女の子がそこにいて、ティリエスは魔法をかけたとはいえ解けた場合を想定し第2夫人に気付かれないように咄嗟にその場に身を隠した。
先ほどまでいた従者の存在も探すが、何処にもいないようだった。
と、倒れていた少女がゆっくりと立ち上がる。
ティリエスからは後ろ姿しか見えないが服装や金髪の髪色からしてこの国の王女だということが見てとれた。
共もつけずに2人でなんの会話していたんだろう・・・まぁ、見る限り楽しげではなさそうだけど。
「全く・・・貴女も良い加減諦めたらどうかしら?」
と、第2夫人が少女に声をかけるが少女は答えずじっと夫人を見つめているようだった。
「いいえ、諦めるのは貴女の方よ。」
物怖じせず凛としたその声が辺りを包みティリエスは王女の背中を見つめた。
いつも読んでいただきありがとうございます。