これが夢だというのならとっくの昔に目は覚めている(さぁ、愉快なパーティーに行く準備をしましょう⑯)
いつも読んでいただきありがとうございます。次回は4/25(月)投稿予定です。いつもいいね評価ありがとうございます。連休の投稿いつできるかなぁと考える今日この頃。
「・・・説明で大まかには理解した。確認ですがぁ・・・その振動石で薬草類の効能の持つ水を霧状にさせて部屋へばら撒く。その為にその効能を持つ水を作り出す・・・ということで?」
「まぁ、概ね正解ですわ。」
早速、ティリエスの部屋でここ一番の最速でお茶を用意したレイは、意気揚々とティリエスのどういう物を作るのか説明を聞いていたレイだったがティリエスの言葉を聞いた途端、つまらなそうな顔をした。
「・・・・・お嬢様?俺は新しいものを、と言ったがこれだと以前からあるものを応用しただけじゃないか。それに、薬を使うというのなら俺ではない、リリス婦人が適任だが?」
案に約束が違うということを言うレイに対し特に狼狽えることもなく、ティリエスは涼しい顔のままお茶を一口飲むと「勿論。」と一言レイに言うとカップをソーサーに起きながらティリエスは言葉を続ける。
「それだとレイに頼むなんてことをしませんわ。勿論理由があるんです。」
「ふむ・・・聞くとしましょう。」
「どうもありがとう。では話しを続けるけど、例えば薬の効能を持ったものを部屋に散布するとレイはどうなると思います?」
「?・・・効果が出て何かしらの症状が改善されるのでは?」
レイの言葉を聞いたティリエスは首を静かに横に振る。
「答えはいいえですわ。ポーションを例に言いますけど、ポーションは個人に合わせた体内の規定量を飲むことで初めて効果が現れるからです。ですから、部屋に散布するだけでは人体に殆ど影響が出ません。そればかりかレイ、ポーションの味を知ってますか?」
「?」
「飲めないことはないんですが得も言われぬ風味なんですよ。決して万人向けのものではありません。効果もないそんなものだと分かっていてそれを部屋に散布する装置を使うというのは嫌がらせの何物でもありませんわ。ですから、私はその装置に合わせた部屋に散布しても効果が期待できる効能を持つものを貴方と一緒に作りたい。勿論効能重視だけではなくその中には良い香りの物も提供したいんです。」
ティリエスの説明にレイは自身の解釈が誤りがあったのだと素直に認め機嫌を直すと、ティリエスの言っていることに耳を傾ける。
「成程、ではそれをどうやって作るつもりおつもりで?方法は何か考えているんですか?」
食いついたレイの言葉にティリエスはニヤリと心の中で笑いながら、大きく首を縦に振った。
「勿論。でもその前に今回はどの植物でそれを作るのか決めたりしたいんです。何せ今回は時間があまりない、できればこれは王妃様の贈り物として考えているんです。」
「あぁ、そう言えば何を贈るのか考えていたなぁ。でもそれだと化粧品や軟膏などが喜ばれるのでは?オーガから聞いた話しだと何でも最近貴族の女性陣は自分磨きに金を使うと聞いていた。」
「確かに、初めはそれも考えてはいました。けれど考えているうちに化粧品は昔からあるものなので抵抗はないんでしょうけど・・・例えば私達がより美容に良い物を作ったとしても初めての物を直接肌に塗るのに女性は抵抗するでしょう。ですから先ずは部屋に散布するもので抵抗を無くし効果を知ればゆくゆくは直接肌に塗り込むものを開発していく方が世間に浸透しやすい。その為にはまず広告にはもってこいな「今度の王城でのパーティーが適切、というわけだな?」えぇ、レイの言う通りですわ。」
ここでティリエスの思惑を知ったレイはニヤリと笑う。
「この事をオーガには?」
「まだ伝えてませんが、きっと直ぐに耳に入ってすぐにここにやって来ると思いますわ。まぁ、元々何か考えて欲しいなんて無茶ぶりをいわれてましたから多分協力は容易だと思いますけど。」
「・・・少々その辺りが気にくわないが、まぁ良い。でもよく考えつきましたねぇ。普通はそんなことを考える人は少ないですが。」
レイの言葉に流石に前世にはそういう物が流行っていた時期があったという事は言えず、笑って誤魔化す。
「実は貴族の湯舟に香りの強い花を浮かべてリラックスする女性がいるんです、それにエルフの女性達からハーブティーという飲み物を教えてもらってましたらそれで思いついた、というだけですわ。後は本の知識や薬学の事もかじったからもありますけど。」
「・・・・まぁ、良いだろう。俺にとってそんなことは些細な事だしなぁ。」
ふぅ・・・なーんとか怪しまれずに進められそう、良かった良かった・・・あ、怪しいといえばそうだ。
レイは別段怪しむ素振りを見せずお茶に口をつけたので、ティリエスは内心ほっとしつつ思っていると、以前にある事を思ったことでこれを作ろうと思ったことを思い出し、レイに尋ねるように口を開く。
「そうでした、これを考えていた時なんですけど。レイ、レイは王都といった都には詳しいの?」
「?まぁお嬢様よりは?」
急に何を言い出したのかレイは首を傾げながら返事をすると、ティリエスは少し神妙な顔つきでレイに口を開いた。
「やっぱり、王都って危険がいっぱいなのかしら?」
そう、以前から時折ちらほら物騒な話しを耳にしたりなにせ目の前にいるレイとの初めての出会いでもまるで暗殺者のように気配を消して夜更けに自分の部屋にやってきたほどだ。
普通なら採用試験は面接だけで済むはずの従者でさえ、このような試験を設けるほどだ。私の領地は田舎だからそんなことはないけれどきっと王都近くの貴族達は危険と隣り合わせな暮らしをしているのかもしれない。
だからレイみたいな暗殺者スキル並みの従者を雇っているのだろうけど、実際はどうなんだろう?
自分が今まで解釈してきた出来事が根本に間違っているとは露も思わずティリエスは自分の質問の答えを待つ。そして、そんな思いを持って質問してきたティリエスに対しレイもまたそんなことを露も思わず自分の解釈で彼女の言葉の意味を考えていた。
危険・・・今までそんなことを考えてこなかったがいや王都なら十分にあり得る、そうーーー。
男がゴロゴロいるなあそこには。
何冊か読んでいた小説あるあるな展開には確か横恋慕する話しが結構な頻度で出ていたのをレイはこの時思い出していた。小説のネタになるほどこのパターンは多いのだろう、しかも違う領地または国へ行った時に起きやすい内容だった。
今回のことに十分条件は当てはまる・・・早々に手を打つべきだろう。
「・・・危険・・・危険か、確かにそうかもしれない。」
「!やっぱりそうですのね!」
考え抜いて答えたレイの言葉にティリエスは驚愕する。
そんな彼女にレイは真顔でコックリとうなづく。
「お嬢様を狙おうとする、王都にはそんな輩がゴロゴロいる。」
「や、やっぱりそれだけ恐ろしい場所なんですね。ではやはり王城内も?」
「・・・・十分にあり得る話しだ。」
ここまで神妙に話しをするレイは見たことがない・・・やはり、王都、危険なんだわ!
王城なんか権力が上の人間が多く集まる・・・こいつの魅力に気づいて横恋慕させるようなこと自体起こさせない・・・が、ふむ芽は早々潰すべきか?一人一人殺していくか?
「では、やっぱり毒なんかも?」
「毒か・・・(媚薬類の)毒も使われる可能性はあるだろうな。(誘惑系の)呪いを使うやつもいるかもしれない。」
「そ、そうなんですね・・・でしたら尚更王妃様には毒関係のものや呪い系に効くような効能の薬草も視野に入れないといけませんね。」
「そうだな・・・お嬢様にも必要になることですからその辺りきちんと調べましょう。」
見つめあったまま2人は話が大きく噛み合ってないことにも気づくことなく、けれどすべきことが見えた2人は大きく頷き合ったのだった。
いつも読んでいただきありがとうございます。