これが夢だというのならとっくの昔に目は覚めている(さぁ、愉快なパーティーに行く準備をしましょう⑬)
いつも読んでいただき有難うございます。次回は4/18(月)投稿予定です。
流石お母様・・・いや、他の皆様も凄い。
ティリエスは作業場の隅にちょこんと座りながら彼女達に的確な指示を教える母リリスの姿やその指示に的確にかつ迅速に対応する彼女達に素直に称賛していた。
全員が新しい薬水を作ることに賛同に取り掛かる前に、ティリエスとリリスは自分達の昼食のやり取りと部下の女性達に話し先ほど調べたものの内容をさっそく共有した。
薬作りに属性魔力が関係しているなどの話しには皆正直驚いてはいたが、母のリリスが以前双子を身籠った際魔力の暴走によって体調を悪くさせていたことを知っている手前、何処か皆納得した表情を浮かべながら私や母の言葉に耳を傾けていた。
それからの彼女達の行動は本当に早かった。
先ずは手始めに彼女達はティリエスの調べ既にサンプルとして作り出していた属性魔力の分かった物でこれまでとは違う属性を帯びている薬水を作ることにした。
ただ、作るわけじゃない。
今まで作っていた薬水と同じ濃度にして作らないといけない。
そしてそれは、常に薬を作り続け薬草をずっと触り続けた彼女達薬師達にしか出来ないことである。
実際、ティリエス自身で作ったサンプルでは同じ量同じように熱して作ったのにもかかわらず、使った薬草によって其々色の濃さ具合が違う事から同じ濃度ではないというのは明らかだった。
薬草によって使用する量に熱する時間、濃度を同じにするための手を加える方法手順。
繊細なその作業と的確な判断をする彼女達に言い出しっぺであるティリエスはただ頭が下がる思いで彼女達の作業を見ているが一番目を追っている人物の背中を彼女はじっと見つめた。
その背の人物は勿論母であるリリスである。
彼女達の作業している様を一瞬で見ただけでどうするが一番いいのか即座に複数アドバイスするその様に、ティリエスは母の凄さを実感していた。
何時もはあんなにのほほんとしているのに、私のお母様・・・流石です!カッコイイ!!
目をキラキラさせて見ているティリエスの横を部下の1人である女性が横切り母の前で立ち止まる。
最期まで良い濃度にならず時間がかかっていた火属性の薬水が入った瓶をリリスに見せるとリリスはその瓶を手に持ってランプの火にかざしながらその色の濃さを見ていた。
「奥様、いかがですか?」
「良い色だわ、これは最期何をしたの?」
「えっと、ほんの数秒火を強め1分ほど加熱しその後35秒ほど蒸らしました。25秒では若干濃度が低く足りなかったのでこちらの方法で試しました。」
「そう、よくできているわ。これを作るときはゲンノショウコで作りましょう。頑張ったわね。」
「・・・はい!ありがとうございます!!」
いいなぁ・・・あんな風に私もお母様に褒められたい。
ほんの少し前に他属性の可能性の話しをして褒められたという事実を忘れ、娘としてほんの少しジェラシーを感じていると、母がぐるりと周りを見渡しパンッとひとつ手を叩いた。
「皆、まだまだし足りないっていう顔を・・・うーん、私もだけど。けれど根を詰めるのはよして今日はここまでにしましょう。でも皆さんのお陰で早くに多種類の薬水の基盤は出来ました。明日はこれを詰めて研究して欲しいのと、実際に薬をつくって効能を比較するのを重点的にしていきますからそのつもりでお願いします。」
『はい、奥様。』
部下の言葉にリリスはいつもののほほんとした表情でにっこりと微笑む。
「でわ皆さ~ん、片付けをして帰りましょうか~。ティリエスも一緒に手伝って~。」
「はい!勿論ですわお母様!」
呼ばれてぱっと笑みを浮かべながらティリエスはリリスの元へと向かい一緒に使用した道具を一緒に片づけ始めた。
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このままいけばきっと順調に薬の改善に向かっていくんだろうけど・・・うーん。
随分前に陽は沈み、静まり返った夜自室のベッドの上でティリエスは物思いに耽っていた。
日中別行動していた自分の霊獣はというと自分の隣で双子の相手をして遊び疲れお腹を上にして眠っており、そのお腹を時折ティリエスは自分の指で触る。
くすぐったそうに身を捩るが全くといって良いほど起きる気配がない霊獣の姿を見ながらティリエスは今日の出来事について考える。
皆優秀で今日の様子を見ればすぐにでも改良されていくだろうし、そこは心配していない・・・していないんだけれども。
私、今回説明しただけで一緒に開発の手伝いしてない。
そう、実はティリエスも一緒になって薬水を作ろうとしていたのだが、母にやんわりとだが断られたのだ。
勿論そこには新しいものを作るにあたってもし危ないことが起きたらという娘を心配した母の気遣いからだということは勿論言われたティリエス本人も理解はしている・・・しているが、正直つまらないと思ってしまったのだ。
でも我儘だと言われても嫌だしどうしよっかな〜。何もせずにという選択でもまぁ退屈だけどそれでも良いんだけどそうこうしている間に王都に行く日になるしそうなると今のような時間も取れなくなってしまう。
あ、そういえばお母様に王妃様の贈り物の相談もしてないんだった、でも明日も忙しいだろうし・・・そうだ!
ティリエスはベッドから降りると寝台にあったランプをもちそのまま机に向かい椅子に腰をかけた。
そして洋紙とインク、そして愛用のペンをとりティリエスはそのまま書き始める。
「確か、属性判定器をディオス大叔父様から何台が拝借できないか明日の早馬で手紙を送るってお父様言ってたしついでに私の手紙を出してもらおう。」
本当だったら緊急なことしか早馬に手紙を持たせないんだけど、お父様お母様のために権力行使で早馬を走らせるってー。うふ、お父様のそういうところ私大好きです!
妻のことなら権力行使する父アドルフの夕食でのやりとりを思い出しくふくふと笑いながら、ティリエはペンを走らせ今後のことを考えていた。
いつも読んでいただき有難うございます。