これが夢だというのならとっくの昔に目は覚めている(さぁ、愉快なパーティーに行く準備をしましょう①)
いつも読んでいただき有難うございます。今回から新しい章になります、そして今回も長ーいので今回も章をわけました。短く書ける才能が欲しいと思う今日この頃です。次回は3/18(金)投稿予定です。
暖かい春の陽気が夏へと変わるこの季節、今日もまた雨が降る天候に誰もが嫌気がさしながら1日の終わりを誰もがそれぞれのかたちで締めくくろうとしていた。そんななか全くもって作業をやめない部屋が一つ、とある部屋ではまだ一心不乱に誰かが分厚い書をめくり必死に何かを探しているようだった。
年は5、6歳といったところだろうかーーー。
その大きな書には似合わない、傷ひとつとしてない小さな白い手は時折指で文字をなぞり文字を追って探し求めている知識とは違うと理解するとまた違うページを捲り文字を追う。
その手は休むことはなく既に周りには何冊も無造作に積み重ねられ今にも崩れそうな様子でその子の周りを取り囲んでその手の持ち主の顔は見れないでいた。
と、ページを捲る音だった空間に声が漏れる。
その声色からして少女の声でありその声は勿論何かを探している手の持ち主の声だった。
「早く・・・早く見つけないと。これじゃない・・・これじゃない。」
ブツブツと小さく呟く声には焦りを滲ませ手を動かす。
と、手を動かす上から水滴がポタポタと落ちて文字を滲ませていく。
少女の瞳から出た涙だった。
それに気がついた少女は必死に涙を止めようと乱暴に拭うが一向に涙は収まることはなく、遂には手を止め少女は両手で顔を覆い静かに泣いた。
「どうして・・・どうしてっ。これじゃぁ一体・・・何のためにっ。」
悲痛な声で誰に話しかけるわけでもなく、少女は独り言を呟いては悔しさを滲ませていた。
顔を覆っていた両手をどけ、その少女は空を見上げる。
「・・・・助けて。」
涙を流しながらその少女は一言小さく助けを乞う。
少女の視線の先にはステンドガラスで描かれた女神が微笑んで少女を見下ろしていた。
少女はまた口を開く。
「お願い、女神様。私達を助けて・・・お願い。」
必死に言う少女の声は誰にも届かず、静寂な部屋のままその声は消え静かになると少女は項垂れる。サラリと長い金色の髪も流れ落ちる。
「・・・助けてっ私の王子様!私の唯一の友!どうして居ないの!何処にいるの!?」
まるで血を吐くように少女の叫ぶ。少女はしゃくり上げながらきつく目を閉じた。
そんな悲痛な思いを口を無駄だと分かっているのか、少女はそれ以上は何も言わず、未だ涙を流す眼で少女は暗くなっていく部屋のなか次の書物に手をつけまた調べものを再開したのだった。。
―――――――――――――――――――――――――――――
ーーーーーーーーーーー
――――
「今日も雨ですわねぇ・・・。」
ティリエスは既に日課である読書している本からふと目を放すと、自室の窓から見える土砂降りの雨の天気に憂鬱そうにため息を吐いた。
毎年7月初めになると天候の変化の為かこうして雨が降る日が増えるのでお出かけには不向きな時期である。
なのでこうして自室に籠りがちになるのは必然となる。なるが、自分はインドア派なので退屈に思う事はない・・・がこうも毎日毎日雨だと気が滅入るというのも事実だった。
「たしかに、憂鬱だなぁ。こうも雨だと退屈しのぎの機会が極端に減る。」
後ろから声がかかり振り返ると案の定声の主であるレイの姿が見えた。
いつの間にか用を済ませた彼は自室の主人であるティリエスの断りもなしにベッドに足を組んで座ってくつろぎ彼もまた何やら本を読んでいるようだった。
ホルアクティも本の内容が気になるのか、レイの周りをパタパタと飛んではどうにかして本を覗き込もうとするがレイが手で制止をかけ邪魔をするので上手くいっていないようだった。
「なんやまた駄目だったわ!よっしゃ!次はこっちからやで!」
「フン・・・無駄な事だなぁ。」
・・・なんだかんだ楽しそうにしているし仲良くなっているんだよねぇ?男の子ってやっぱり不思議。
勝手にベッドを使っている事を別段怒ることもなくティリエスは彼らへ向き合うと、レイは何かを思い出したような表情になった。
「そういえばお嬢様、ここに戻られてからしばらく経ちますが最近はほぼ読書のみだ・・・、何か、料理の開発はしないので?」
「え?!」
レイにそう言われ、ぎくりとティリエスは肩が跳ねる。
そんな彼女の様子に気にする様子はなく、レイはまた質問をする。
「それに、あの木に生る人参もどきも旦那様が調べるということでしたが、本当はお嬢様もあれは何なのか知りたいのでは?」
「お嬢はん気になるんか?木に生るだけに?」
「鶏、お前はうるさい。」
ホルアクティの冗談まじりの言葉にピシャリと言い放ちながらティリエスの方を見てそう言うレイに、ティリエスは言葉を濁した。
「うーん、開発やそれも気になるのはそうなんですけどねぇ。・・・実はここ最近妙案が思い浮かばないんですよね。」
「「?」」
彼らはよくわからないという顔でティリエを見ると、彼女は頬を人差し指でポリポリとかきながら口を開く。
「いやね、料理の方はもう考えられるレシピが尽きちゃったんですの。」
ギリアが優秀すぎて。
そうティリエスは困ったような表情を浮かべながら笑った。
いつも読んでいただき有難うございます。