出来ることが増えてくると色々したくなるお年頃なんです。(カッコイイ!可愛い!私の相棒さん!㊳)
いつも読んでいただき有難うございます。次回は少し空きますが2/28(月)投稿予定になります。
「こんにちはジャッカさん、息子さんの具合はどうですか?いや、貴方も大丈夫そうには見えない昨日は何か食べられましたか?」
先程の険しい顔とは打って変わって優しい表情で、アドルフは即座に立ち上がり尋ねながらギーラの父親であるジャッカを中へ招いた。
恐らく、あれこれ悪い方向へ考えていたのであろう。
青白い顔をしているジャッカはアドルフの態度に怒りを感じられなかった事にほんの少しだが安堵したように思えた。
無理もない。貴族に対し子供とはいえ殺意と攻撃を向けてしまったのだから。
本人の意思有無関係なく貴族に歯向かったという事実で判断され重い刑罰になるのをティリエスも知っている。
恐らくだがお父様も私と同じで彼らに刑罰を望んではいないはずだが・・・どこで落とし前をつけるのか倦ねいているのだろう。
本当に、公爵という身分でメリットもあるけどこういう時の世間体なんかになるとデメリットあるからちょっと面倒だ。まぁそれでも、この身分だから好き勝手出来ているのでそこはもう自分の中で上手く付き合っていくしかないとは思っているけどね。
そんなことを考えていると、いつの間にかジャッカは司祭様側のソファの隅に縮こまって座っていた。
暫く何も話さず、マルフェは徐に立ちあがりマルフェ達がやって来た別室へ繋がる出入り口から一度出ていき、音を立てながら戻ってくると彼の手には湯気の立った一つのカップを持って戻って来た。
そしてそのままジャッカの前へ置いてまた座り直す。
マルフェの持ってきたお茶に手を出そうとはせず彼の淹れたお茶の香りが辺りを包み込み始めた頃、ジャッカはようやく重い口をひらいた。
「公爵様、こ、この度の事はなんと、お詫びをすればよいのか。む、息子の今回の事には・・・。」
「ジャッカさん・・・私と娘は「で、ですがどうか!息子を罰しないで欲しいのです!わ、私が!私が変わりに罰を受けます!ですからどうか!!」・・・どうか、顔を上げて下さい。兎に角、謝っているだけでは何も分からない・・・ジャッカさん?本当に大丈夫ですか?」
土下座しそうな勢いの彼に、父は顔を上げるように言うと彼はゆるゆると顔を上げる。
ティリエスはそんな彼にマルフェの淹れたお茶を持って差し出す。
私の存在に驚いた顔をした彼に、もう一度ずいっとお茶の入ったカップを今一度差し出す。
「一口お飲みになってください。きっと、落ち着きますから。」
「あ、ありがとうございます。」
そう言って彼はティリエスからカップを受け取るとほんの一口お茶を含み飲む。
一口飲んだ後彼は温かい飲み物を飲んだことでなのか、蒼白だった頬に赤みが宿り始め、彼は大きく息を吐いた。
「とても・・・美味しいです。」
「マルフェ司祭様のお手製ですもの、美味しいに違いありませんわ。」
にっこりとティリエスが笑うとジャッカもつられてぎこちなくだが微笑み返した。
アドルフはティリエスを呼びティリエスはその声で振り返るとまたアドルフの隣に座り直した。
「・・・話してくれますね?」
父のその言葉に徐々に落ち着きを取り戻しているジャッカはこくりと頷き、話し始めた。
「実はもう2年前の話しに遡るんですが―――。」
彼がまず私達に話し始めたのは彼と彼の息子ギーラとの過去の話しから始まった。
ジャッカさんは自分と息子であるギーラ、そしてギーラの母親とこの街で数年前から共に暮らしていた。
今はアメジスト商会にはいっているが元々小さな商人だった彼は、本来であれば街から街へと転々と渡り歩くのだが家族を持った彼は良い商品をみつけてはその作り手と交渉し商品の売り買いをして生計を立てどんなに遠くに行こうと自分の家へ帰るという生活を送っていた。
決して裕福とまではいかなかったがそこそこの稼ぎを稼いでいたジャッカさんは数ヶ月間街を離れこの街で待つ妻とギーラの為に一つでも多くの商品を売っては纏まった金を持ってこの街へ帰り、2人を養う、そんな生活を送っていた。
出稼ぎの男達のように遠くを離れることはあっても必ず帰れば妻に労われ子供は自分の帰りを大きな眼をキラキラさせて待ってくれている。
幸せだった。
自分達は何処にでもいる家庭だとジャッカは思っていた・・・2年前までは。
忘れたくても忘れられないギーラの3歳の誕生日を迎える前、彼がギーラや妻に贈る贈り物をもって帰って来た時だった。
自分の妻が不義を働きそれを目の前で目撃し、すべてが壊れていった。
あっという間に崩壊していった。
頭に血が昇り男が居る前で彼は妻を勿論責めた、当然の感情だった。
でもそんな彼を妻は表情を変えることなくこう言い放った。
『貴方を夫と思ったことなど一度もない。』・・・と。
女が彼に言ったのはその不義と呼ぶ関係となっている貴族の男とはずっとそういう関係だったのだという事実だった。女は昔その貴族の男の家で働いており、その頃からの関係を持っていた。
女は貴族という地位もその男も欲しかったのだ。
だから必然に男との間に子供を身籠ったが男の家・・・つまり彼の両親が家門に入ることを許さなかったのだ。日陰で終わらせたくない、けれどここをでて一人で子供を産んで育てることも難しい、寧ろここに居れば子供を堕ろせというだろう。
焦った女は以前から顔見知りで自分の事に好意を持っていると分かっていた彼に近づき女と彼は一緒になったのだ、身籠っているという事を隠して・・・。
身籠った子供それはギーラでありギーラは彼の子供ではないという事実をも突き付けられ彼はショックで蹲った。
『やっとご両親がいなくなったの・・・だから、私はあるべき場所へ戻るわね。』
そんな彼に謝罪も何もなくそう冷たく告げて女の名前が書いてある離婚書状だけを置いて、ギーラも置いて出ていったのだった。
「ギーラを連れて行かなかったのは、妻は1人子供を身籠っていた・・・体裁を気にしたんでしょう。ギーラは大きすぎるとそう言ってあの子が縋った手を払い除け出ていきました。」
「なんという・・・。」
「ギーラ君があまりにも不憫だ、でもそうか、それなら彼に霊獣がやって来やすかった理由はわかったね。」
「まさか・・・貴族の血を受け継いだ子じゃったのか。」
ジャッカ以外の大人3人は何処か納得したように頷く。
成程それなら納得するよね・・・・あの、お父様もう大丈夫だからちょっと両耳を塞いでいる手を退けてほしいなぁ・・・なんて。
読唇術でなんとかわかるけど・・・話し私も聞きたい。
丁度女の不義の話し辺りから、サッと耳をアドルフに塞がれていたため聞き取れていないまま話しは進みティリエスは不便さに顔をほんの少ししかめた。
そんな風にティリエスが少々複雑に思いながらもジャッカの話しは進んだ。
「血のつながりはなくてもあの子は誰がなんと言おうとも私の子ですそれは変わらない。あの時も一番気にしたのは息子のことでした。私が家を空けている時どんな風に過ごさせていたのか・・・妻が別の男といる間あの子はどんな思いを抱えていたのか・・・そう思うと私自身許せなかった。私達は妻の存在など今まで無かったように振る舞い生きていきました。息子も最初は泣くばかりで塞ぎ込んでいたけれどだんだん前を見てくれていました。私もそうです、そのきっかけがアメジスト商会でした。公爵様達には本当に感謝しても仕切れない・・・・でもある日やって来たんです。妻だった女がその小瓶を持って・・・家に。」
その言葉に全員険しい表情に変わった。
裏設定:ティリエスの両耳を塞いだアドルフ氏。その決断は早く一部始終見ていた司祭様たちは内心驚き、大人しく従っているがティリエスの表情が不服とありありと書かれていたので苦笑していました。因みにホルアクティは現在6枚目のクッキー食べ終わったところです(まだまだいけますぜ!)。
いつも読んでいただき有難うございます。