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題名はまだない。何せこの物語はまだ途中なんで!  作者: ちゃらまる
第3章~新しい家族編~
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出来ることが増えてくると色々したくなるお年頃なんです。(カッコイイ!可愛い!私の相棒さん!㉜)

いつも読んでいただきありがとうございます。次回は2/11(金)投稿予定です。


どうしてこうなっているんだろうか?


ドラゴンは次々にやってくる攻撃を最早受け流す事もできず、けれど止めることもできずにいるとふと、その思いが頭を過らせた。

たった数分の出来事。

けれどもう十二分に自分より身体の小さい存在になす術なく叩き尽くされたドラゴンは、心も体ももう既に弱りきっていた。


どうして、自分はこの目の前の存在に殴られているのだろうか?

何故、自分はここにいるんだろうか?


殴られ痛みを追うごとにドラゴンは、だんだんとそんなことを考えるようになりまた一撃を受けよろけ倒れた瞬間ドラゴンの意識ははっきりした。


痛い、怖い!


正気に戻った瞬間、ドラゴンが感じた感情はこの2つだった。


そして、自分の存在意義でもある主人がいないことに大きな不安と悲しみが入り混じりドラゴンは息を荒くさせながら主人を探す、その仕草を司祭は見逃さなかった。


「よかった、ドラゴンが正気に戻ったようだ。」

「本当か司祭様!」


飛んでくる木々や岩の破片から司祭を守っていたタンドや他の騎士達が、やっとかと歓喜の声を上げた。

「えぇ、でもドラゴンの気持ちが不安定でいる。この場にあの子がいないからでしょう。」

「まぁ主人がいないのもだろうけど・・・あれだけタコ殴りにされりゃぁな。」


一方的に殴られ続けられた光景をタンドは思い出し少し遠くを見ながら呟く。

と、キューンとドラゴンから弱々しい声が聞こえ誰もがその声を聞きあれだけ容赦ないタコ殴りをすれば正気があろうがなかろうが誰だって恐怖の何ものでもないと、タンドは少々ドラゴンを気の毒に思いながらも大きな惨事にならなかったことに安堵しもう障害物が飛んでこないことを確認して剣を治める。



向こう側で様子を見ていたアドルフと目が合い、手をあげて合図を送ると向こうも理解したようで警戒を解きこちらへやって来る。

勿論、彼の娘ティリエスと従者であるレイも一緒である。



「もうドラゴンは正気に戻って戦意喪失状態みたいだ。」

「みたいだな。被害状況は?」

「飛んできたものを避けられなくて少々打ちどころ悪くて気絶した奴もいるが、そいつに命に別状はないし大きな被害はない。不幸中の幸いだった。」

「あぁ、何はともあれだ。」

「タンド卿、お怪我はありませんか?司祭様は大丈夫ですか?」

「おぉ!ティリエスちゃんこの通りピンピンしてるぜ!」

「僕はメヴィウス伯爵が護ってくれたから大丈夫。」


2人の返事にティリエスはほっとしつつ、また弱弱しく鳴いたドラゴンの方へ顔を向ける。

みればもう戦う意思のない蹲っているドラゴンの前に立ち尽くし、持っている木の棒で自分の肩をトントンと叩いて黙ってじっと見据えている鶏男の光景が自分の目に映る。


「キュー――・・・。」

「・・・・・・・・・。」


なんだろう、自分達を助けてくれたはずの霊獣様だというのにこの光景だけ切り取ってみちゃうと大きな子をいじめている柄の悪い子の図になる。


もう大丈夫みたいだし、そろそろドラゴンを解放してあげないと・・・なんだか可哀そうになってきたな。


ティリエスがそんなことを思っているとジッとドラゴンを見続けている鶏男が肩を叩くのをぴたりと止める。


「・・・・・・コケ。」


一言そう言うと、ドラゴンはその言葉が分かったのかビクリと大げさに大きな体を小刻みに震わせる。

「何を言ったのでしょう?」

「さぁ・・・僕でも流石に霊獣の言葉は理解できないから。彼は何て言ったんだろうね?」


うん、司祭様安定の質問返し。


自分の質問を質問で返され、ティリエスはうーんと唸る。

すると今度はドラゴンが「クー・・・。」と違う鳴き声を出した。


声の様子から、なんだが遠慮がちに話しているようにも聞こえたそれを聞いた鶏男は首をカクっと曲げる。

「コ・・・コッコ?ケ?」

「グー・・・キュッ。」

「コーケっ!」


どうやら言語は違えど会話はできているようで、最後何か納得がいかない会話だったのか低い声で鳴いた鶏男は表情を変えずにぺっと唾を吐いた。


「なんだか機嫌がよろしくなさそうですわね・・・。」

あと汚いなとティリエスは霊獣のマナーの悪さに眉を顰めながらも何故そこまで機嫌悪くなったのか不思議に思う。

と、鶏男がずんずんとドラゴンに近づいた為、ドラゴンはまた何かされると思ったのかその小さな巨体を縮こませた。

いい加減やめさせないととティリエスが口を開こうとしたその時だった。


「やめて!!!」


すると突然霊獣達の間に小さな人影が入り込み、その人物はドラゴンの前で手を大きく広げた子供の姿が見えた。

ドラゴンの霊獣の主人であるギーラがそこにいた。


「こ、こいつに怪我させてみろ!俺が相手になってやる!」


どこかでドラゴンを殴っている光景が見えていたのだろう、自分の目の前にいる得体の知れないモノに啖呵をきる姿に周りの大人達は少年の勇敢さを評価していた。


勇敢といえばこの場に敵そのものはいないからそう見えるけれど、まぁ普通悪い人間に今みたいなことをすれば普通早死しちゃうからね少年、無謀なことはしない方がいいよ。


ティリエスは冷静に彼の行動に突っ込みながら、自分も彼らの元へと向かっていった。


「!コケ〜!」

ティリエスの姿を捉えた鶏男は、ドラゴンと少年をほっぽいてティリエスに近づき彼女の前で姿勢を正した。

ギーラはどうやらこの目の前にいる存在が彼女の霊獣ということを今気がついたようで驚いていた。


「・・・・・・・・・。」

「お前・・・お前がっ。」

「はい、そこまでだよ。」


ティリエスは黙って彼を見つめていると、ギーラは何かを言おうとして口を開いたがそこに司祭が間に入って言葉を遮る。


「色々あるだろうけれど今は霊獣を休ませよう、君もとても今疲れているだろうからね。」

そういうとあの百合を一振り、司祭が振ればドラゴンの身体は光だし小さな光となってギーラの胸の中に収まっていく。

「あ・・・・。」


途端ぐらりとギーラの身体がぐらつき意識を失うと司祭が抱いて支えた。


「今はゆっくりお休み。」

司祭はギーラに優しくつぶやいた。






いつも読んでいただきありがとうございます。

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