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題名はまだない。何せこの物語はまだ途中なんで!  作者: ちゃらまる
第3章~新しい家族編~
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出来ることが増えてくると色々したくなるお年頃なんです。(カッコイイ!可愛い!私の相棒さん!⑱)

いつも読んでいただき有難うございます。次回は1/10(月)投稿予定です。


タンド卿もビラノア夫人も人の好い優しい人というのは会話して直ぐにわかり、ティリエスは2人にすぐ打ち解けた。


ビラノア夫人も実は同じ貴族のみ通うことが出来る高等学園に通っていたので父と2人は旧友関係にあるのだ。

如何に父が女性にモテていたのかをビラノア夫人が言えば父のギルドでの活躍をタンド卿が話してくれ、父であるアドルフは「もうその辺にしてくれないか?」と何度か止めに入っていた。


暫く会っていないこともあり父を含めた3人が昔の学園生活の話しで盛り上がり、外へ出ることはなく――――。


「ほんとなぁ・・・こいつはずりーよ。顔は良いし何でも卒なくこなすしよぉ・・・何度も男どもが悔し涙を流したことか・・・まぁ、俺は俺だと思ってたからそんなことは思わなかったけどなぁ・・・ガハハ!!」


結局、その日は夕食まで話しは途切れることはなく、とうとうほろ酔い気分でタンドはアドルフに絡む形となった。

アドルフは別にそれを嫌そうにするわけでもなく笑って受け流す。

ティリエスはそんな上機嫌なタンドと若干呆れているビラノアを横目に自分のグラスの水を一口飲む。


「そういえば、今お二人のご子息が中等部に通われていると伺いましたが。」

「お!ソニンの事か?ティリエス嬢。」

「ソニン君か・・・最後にあった日が確か8歳の頃だから随分と成長したな。」

「お前と違って俺達は学園卒業した後すぐに入籍したからな、剣をみるだけで良く半べそになってたのに、あんなにでかくなりやがって・・・少し寂しい気もするが、まぁ根の真っすぐな奴に育ってくれたことは嬉しいがな。」



そう言って照れ隠しなのだろう豪快にエールを一気に飲み干し、それを見越してささっと従者が大きなグラスにはいったエールを持ってきて空になったグラスを下げていく。


因みに貴族の晩餐ではワインが主流であるが、苦学生の頃ギルドの後に飲んだエールが殊更美味しかった彼は、こうして好んでエールを置いているのだそうだ。

勿論私も父も気にする事はなく、寧ろ父も一緒に嗜んでいるので学生だった2人の様子がみてとれた。


「そういやぁ俺達の話しに華を咲かせちまったが、確かティリエス嬢は明日教会にいくんだよな?」

「あぁその予定だ。」

「そうか、首都の神殿よりはこじんまりしてるがいい所だ。是非中も見て行ってくれ。」

「ここに来るまでに教会の建物を遠目でみましたが随分大きいものでした。神殿はもっと大きいのですか?」

「あぁ、こーんなにでかくてぶっちゃけ王城といい勝負だせ。王都に行ったときに楽しみにしときな。」


体躯でそのスケールを表す彼にこくりと頷くと、アドルフはふと時計を見やる。


「もうこんな時間か・・・ティリエス、明日が早いからもうそろそろ寝なさい。」

「お腹いっぱい食べれたか?」

「はい!もうお腹いっぱいです。」

「じゃぁティリエスちゃんは私が客室へ案内するわね。」


ビラノア夫人に「頼んだ。」とタンドが頼むとティリエスはビアノラと一緒に、後ろにレイを連れて部屋を後にした。

レイが最後優雅にお辞儀をし小さくパタンとドアが閉まる音がした。


「明日はそのまま教会に行くのか?」

「あぁ、娘が出店を見たがっていたが明日は教会に行ってその周辺を見て帰ろうと思う。」

「そうか、ほんとあんないい子・・・本当にいいよなぁ。」

その姿を確認した後、ぽつりと小さくタンドが声を漏らす。

「やらんぞ。」

「本気で脅すなよ!んんっそんな事より・・・だ、おめでとうアドルフ、嫡男・・・しかも双子の出産と聞いて驚いたが・・・本当におめでとう。」

「・・・ありがとう、でも俺よりも妻や他の者達がよく頑張ってくれた。だから奇跡が起こったといっても良い。」

「そうか、こんな後になって言うのもすまん・・・。」

「いいんだ。ビラノアの事を考えた行動なんだろう?私は気にしてないから気に病まないでくれ。」


ビラノアにも2人目ができた、しかも丁度ティリエスと同い年になる予定の子供だった。

だが、ビラノアも双子を妊娠する可能性が高い2人目という事もあってタンドは堕胎を彼女に強いた。彼女の命は護られたが彼女の心には深い傷が出来たことは夫であるタンドが一番よく知っていた。

優しい彼女はそれでも自分を責めることをしなかった、けれど未だ自分のお腹を擦って泣きそうな顔を見せる彼女に彼自身居たたまれない想いをしていた。


仲睦まじい、けれど何処かよそよそしくなったそんな2人の耳に届いたのは、友人の第2出産児の報告。

しかも、双子を無事出産したのだという耳を疑う知らせだった。

それを聞いた瞬間タンドはあの時から今までの自分達の数年間を思い出し、そして自分の妻の顔を見ることができなかった。

あの時、妻がどんな顔をしていたのか今でも分からないまま今日まで何も誰にも言い出せずにいた。


「なぁ、アドルフ。俺は確かに妻の命を護る事ができたけどな・・・まだ、後悔してんだよずっと。でも・・・。」

「お前は子供好きだからな。お前が悩んでいるのは教会から聞いた話しか?」

「!どこでそれを・・・いや知っていて当然か。あの魔力循環法の石を売り出したのはアメジスト商会だったしな。」


教会で売り出した体内の魔力を円滑に循環させるよう訓練する、通称【巡り石】というその石の効果で魔力の循環できるようになった学生たちが魔力操作が飛躍的に伸びたという実例から、また同時に権威ある医師の中でも指折りの人物が『魔力によって第2子双子懐妊時母胎の変動と一部魔力過多又は減少によって母子ともに生命の危機、及び胎児欠損症の可能性について』という論文を発表し、そしてその成功例の話しに誰もが釘付けになったことから、この石の存在は国中に瞬く間に注目されるようになった。

実際、教会からお布施代わりに買っていく貴族も多くこれによって参拝者も増えているのも事実だった。

市井の人の場合はそんな大金はない、だが、まだ出産後の死亡率も高い事から安産祈願の一種でこの循環法を試したい人は多くいた。

そういうことならと考え出した方法が、破損させない・紛失させない・教会で協会 → 教会 or 商会 側から決めた指導者の前で循環法をすること時間予約、制限を設ける・・・等々細かいが決まり事を作り、そしてアメジストの会員になってもらう事で格安レンタル兼魔力操作教室というものを作り出した。

勿論、この発想は言わずもがな小さな少女が考えたことだったがこれもアメジストの会長の手腕もあって大きな軌道に乗っていた。


「ここの神父に勧められたんだ。俺たちの悩みを知っているから・・・もう一度子を成してみないか、と。この石があれは双子でも出産が以前のように母親たちが亡くなることはないとも。でも、今更、あいつに勧められると思うか!?俺が、子供が欲しいから頑張ってみないかって・・・言えるわけがねぇ!」


握りしめたグラスからミシッと嫌な音が聞こえたが、アドルフはそれに注意するわけでもなく黙って話しを聞いた。聞いて、そして一口温くなったエールを流し込むと険しい顔の友人の背をポンポン叩く。

「私から言えることは殆どない。だがタンド、一つだけ言えることがある。」

「なんだよ・・・。」

「女性は、女性達は私達男より案外強いぞ?」


思いがけない言葉に思わずタンドはポカンとする。

そんなありありと理解不明という文字が書いてあるような顔にアドルフはフッと笑う。


「だから、話し合ってみろ。きっと良い方向になる。」

「んだよそれ、お前の体験談?」

「あぁ、私の体験談だ。」

その言葉にアドルフは大きく頷き、自分が言う強い女性の顔を思い出して小さく微笑んだ。

裏設定:何をしているのか不明なアメジスト商会。実は石を売り込む際、現在の各領地の治安状況貧困状態を把握しています。その中に教会のお布施の2割を炊き出しや孤児院や各施設に充てるような契約をしています。もとはただ同然の石を磨いているだけなので、こちらの財布は痛まないというアメジスト会長さんは不敵に笑いつつ今日も今日とて貴族に高く吹っかけては儲けています。(でも、その利益一部は貧困層の問題に充てているので性格に難があっても実は良い人と主人公は思っている。)


今回男性側でデリケートな夫婦関係の話しを作中に出していますが、実は同時期ティリエスの方でもこの話しはしていました。なんやかんや彼女が自分を見る表情が悲しげだったのでこっちはこっちでズバッと聞いてます。初めは驚く夫人だったが話し巧みな主人公の話術に陥落し、今までの想いを吐露。そして、主人公の言葉に勇気を出して夫人は夫であるタンドと話し合うことになります。(そして、妊活頑張ります。)因みに内容はタンドの気持ちとほぼ一緒の内容です。(夫婦って似ますからね、内容はご想像にお任せします。)


いつも読んでいただき有難うございます。

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