出来ることが増えてくると色々したくなるお年頃なんです。(カッコイイ!可愛い!私の相棒さん!⑬)
いつも読んでただき有難うございます。
次回は月曜日投稿予定です。
「今は・・・多分あそこにいるはず。すみませんがティリエス様方、今から案内するのでついてきて頂けますか?」
早速、ムペは時間も限られているからとティリエス達を案内するため小屋を後にした。
いよいよ、農作物を育てるいろはを教えてもらえるのか・・・前世では家庭菜園程度しか知らないからちょっとワクワクする。
小屋から出てきた私達を見て戸の前で警備をしていたシェリーとバンは一瞬驚いた顔をしたが、場所の移動をする理由を簡単に説明すると納得し、彼らも私の護衛があるので勿論何も言わずともついて来てくれた。
それにしても、ムペさんは一体誰を紹介してくれるんだろう?
確かにここルル村は山に水源があり作物が育てやすいから作物で生計を立てているから、きっと農業に関して皆スペシャリストだろうが、できれば分かり易く教えてくれる人がいいけどなぁ・・・。
結構歩くのかと思いきや、目的地はすぐに着いたようで、先導していたムペが足を止めた。
「ここって・・・。」
ティリエスが見た先の光景に少し見覚えがあった。
「ここら一帯は私達の一族が担っている・・・まぁ改まって言う事ではないですね、シロップの木が植えてあります。」
「前に来た時、確かこの辺りは木全体が暗かったような気がするんですが・・・。」
ティリエスは初めてルル村に来た時に見た光景と今の光景を照らし合わせながら言葉を口にする。
幹は確かに白い。
一度目に見た時は燻んだ灰色が混ざったような白で淋しい色合いに感じたけれど、今見ているシロップの木は不純物が混ざっていない、正しく純白な色だった。
その幹の色だけでも美しいものであったが、加え太陽の光が当たり金色に輝く木の葉が生い茂り正しく神秘的なものとしてその一帯を埋め尽くしていた。
「綺麗・・・。」
「この時期からこうして色合いが美しくなり段々と花を咲かせる準備をしていくんですよ。花を咲く時期も綺麗ですがこの時期が丁度木の葉が光に当たって金色に生い茂って・・・俺が一番、好きな景色です。毎年思います、この光景を後世まで残していきたいと。」
「えぇ・・・ぜひ、頑張って欲しいです。」
心からそう返事をすると、ムペはハッとして顔を赤らめながら慌てた。
「すみません、急に夢を語るようなことを・・・、んんっ、それでは案内しますが、申し訳ありませんがここから先、シロップの木は繊細なので木に負担を掛けさせたくはありません。道中木には触れないようにしてください。木々の間に板が敷いてありますので、そこを通路代わりだと思ってください。そこ以外は歩かないようにお願いします。」
彼の説明にこくっと頷くと、その不思議な樹園地の奥へと進んでいく、綺麗な木々の中を歩いてみるのは私達の目を楽しませた。
「それでムペさん、一体この先に誰がおられるんですか?」
「えっとですね・・・あぁ、いたいた。あそこです。」
そう言って、指を指した場所を見るとひとりの老人が其処にいた。
何やら座り込んでしているその横顔は真剣で強面であった。
「ちっ・・・男か。」
「え?」「?レイ、何か言いましたか?」
「いいえー、何でもありませんよぉ・・・フフ。」
ぽつりと何かレイが呟いたが聞こえず聞き返したがにっこりと笑って何もないと返され、ティリエスはその男性を見つめる。
「何かしているようですけど、お邪魔ではないでしょうか?」
「え?あぁいや・・・今日はただ様子を見ているだけだから。おーい!」
ムペが声を掛けると、その老人はこちらをちらりと見てゆっくりと立ち上がると同時に強面の顔がいっぺんに変わり、私とシェリーが見覚えのある顔に「あっ!」とほぼ同時に声をあげた。
あの朗らかな顔、間違いない。
「う~ん?倅か~?・・・あぁ、もう昼飯の時間になったんだんの?」
「親父ー、昼飯はまだだし、荷物の中に弁当はいってるだろー!」
そこに立っていたのは以前お世話になったムペさんの父親であり村長とよばれ慕われているお爺さんだった。
というか、さっきの顔と今と大分顔が違っていたんだが・・・。思わずバンが目を擦って目の前の人物をもう一度見たのは仕方がないと思う。
と、シェリーが何かに気がつきハッとなる。
「もしかして・・・教えてくださるのは、あなたのお父上か?」
「はい、そうですけど?」
「・・・・・貴方、ティリエス様をなめているのか?」
ムペの返答で途端にシェリーはスーッと静かに怒りを露わにする。
あまり怒ることがないシェリーの今回の行動はティリエス自身驚いた。
そんなシェリーに対し、怖がることも怒ることもなくキョトンとしてムペは「まさか!」と首を振った。
「確かに俺の親父はあんな感じて呆けていることもあるけど、作物の知識なら誰にも負けません、きっとティリエス様のお役に立てます。」
「昼食も食べたか食べてないかも理解していないのにか?」
「シェリー、そこまでです。」
「しかしティリエス様、これはあまりにも。」
ティリエスの言葉に思わず反論しかけたシェリーだったが、後ろにいたバンが手で静止しそこでシェリーの言葉は途切れる。
代わりにティリエスは目の前にいる老人に対し言葉を続けた。
「すみません、村長さん、お願いがあるんですけどよろしいでしょうか?」
「んーーー?」
「貴方のお時間許す限り、私に作物の育て方を教えてくださいませんか?」
そう問いかけると、村長と呼ばれたムペの父は朗らかに笑う。
「えぇよーえぇよー、村長さんが教えるんでん。」
そうはっきりと答えたのだった。
裏設定:ティリエスがいないある日の一コマ(本編前日編)
どうやら、最近は料理の出来る男に人気があるらしい・・・か。
一通の手紙を読み終え、レイは情報を的確に読み取る。
と、夕食の際自分の仕えている少女が明日は早くから出かけることを聞いた・・・とふと思い出し、レイはニヤリと笑い、自室からある場所へと向かった。
「さて・・・と、材料はこれぐらいあれば問題ないだろう。」
レイは従者の服からエプロンを紐をギュッと縛ると、目の前のテーブルを見やる。
そこには、馬鈴薯、芋がゴロゴロと置いてありその中の1つを手に取る。
彼がどうして夜な夜な忍び込むように厨房に立っているのか、そう、言わずもがな料理をする為だ。
どうも、あの女にアプローチをしかけるが・・・手ごたえが今ひとつ。
涙を舐めようが、言葉巧みに言っても良い反応を貰えないレイは、今では本の趣味仲間として、そして恋愛についても経験豊富である彼女の祖母、メイサ夫人に相談をした。
すると、彼女はすぐに長々と書かれたその返事の手紙を自分に送ってき、そしてその内容の中に料理をする男は今モテるということを教えてもらった。
これだ。
初めて聞いたアイディアに何かを感じたレイはこうして早速料理をすることに着手したのである。
幸い、明日は外へ出かける。その時に彼女に自分の手料理を見せ食べさせる。
さすれば、彼女は料理が出来る自分に凄いと称賛するに違いない。
その時を想像してレイはニヤリと笑う。
さて・・・何を作ってみようか?
レイは自分の中にある料理のレシピをひっぱり出す。
記憶をたどり、思い出そうとする・・・とレイはある事を思い出しあぁ、と口を漏らす。
「殆ど生だな。」
過去を記憶をひっぱり出してみたら、どうやら自分は火を使って料理、というものをしたことがないということを思い出す。
目の前にある芋でさえ生でそのままかぶりついていた・・・いや、流石に泥は落としていたか、皮はそのままだったが。
すぐさま暗礁に乗り上げたレイだったが、決してやめようとはしない。それがレイという男である。
なら、彼女が作ってきたレシピを参考にするか。
もう一度見てきた光景を思いだす。
彼女が作ったもの、一緒になって考えている仕草、そして―――。
「ギリアが一番料理が出来るということになるなぁ・・・。」
彼女の隣にはいつもあの男が居ることを思い出し、そして先ほどの情報を照らし合わせる。
という事は一番モテる男はあの男、という事になる。
彼女の興味があの男にいく前に・・・殺しとくべきだろうか。
捻じれた思考でそう一瞬思ったが、妻子持ちだったことを思い出したレイはそれは流石に考えすぎかと直ぐに切り替えた。
ともあれ、時間も限られている。早速取り掛かるべきだ。
「この前のポテトサラダ、というものは中々の美味だった。これにしよう。」
マヨネーズで味つけしてあったあの味を思い出し、レイはそれでは・・・と手にあった芋の調理を開始したのだった。
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「それで、お前は何をしてたんだ?」
「ポテトサラダ、というものを作ろうとしていた。」
「そうか、それでこんなに芋が朝からあるのも理解できた。しかし、これは・・・なんだ?」
早朝、ギリアが厨房に入れば、すぐ近くでぬっと立ち尽くしているレイに驚きそして彼の目の前にあったあるものに驚愕した。
「どうして芋がこんなにでろでろに溶けているんだ!!しかも、こんなに!」
そういって器を抱えて見せたのは芋が個体ではなく液状化し、スプーンですくってこれを作った本人に突き出す。
スプーンの中に留まらず、芋であったであろうそれはでろでろと流れ落ちてスプーンからいなくなる。
2人はそのスプーンから視線をその下、置いてある鍋へと視線を落とす。
その量、鍋2杯分。
レイはじっと鍋を見ていた視線ギリアへ戻しふむ・・・と一言、呟いて目の前で未だ下をみて呻いている彼に口を開いた。
「後で固まるのかと思ったがそうか、やはり失敗だったか。」
ぶちりとギリアの怒りの血管が切れた音が聞こえた。
(この後くどくどレイは正座させられギリアに怒られることになります。その後ティリエスが騒動を聞きつけアレンジメニューを提案することになり、ここでマッシュポテト、マッシュポテトフライという料理が完成します。)