出来ることが増えてくると色々したくなるお年頃なんです。(カッコイイ!可愛い!私の相棒さん!④)
今日は早めにかけたので早めに投稿しました。
うん・・・・・よっし!まずは落ち着こうではないか!
ティリエスはとりあえず思ったことを心の中だけではあるが、思いっきり声を大にして言ったのでとりあえず冷静になった。
正直ショックではある。
実はというとこれまで霊獣に関する本を読み漁りながら自分の相棒はどんな子がやってくるのか夢想していたのだ。
自分の例えば好きな可愛い小動物のような霊獣なのか、それとも強く大きな姿をした霊獣なのか、それともドラゴンのようなすごい格上の霊獣がやってくるのかも・・・そんなことを思い描き胸を躍らせながら信託 → 神託 の日を指折り数えていた。
それがまだ信託 → 神託 の日でもないのに、霊獣が来ない確率が高いことを告げられたのだ。
心穏やかではいられないのは当然だといえよう。
でもだからといってここで落胆して諦めるということは、往生際の悪い私にとって・・・その選択は嫌だ。
分からないのならまずは情報だ。
えーっと・・・まず一体どういう事か父に聞かないといけないな。
「しかし私の周りでは、お祖父様やハーティス大叔父様は霊獣がおられますよね?なのでその事実には驚きました。お父様はどうして霊獣がやってきて下さらない理由はお存知なのですか?」
そう、お祖父様やハーティス大叔父様にはそれぞれ霊獣が居ることを偽妖精の頃から知っているが彼らの口からそれを聞いている。
その事を口にすればアドルフはどうして知っているのかほんの少し驚いた様子で見つめ返されたので慌てて口を開いた。
「えっと、私のお誕生日パーティーに来れなかった際お祝いのお手紙でその時に知りました。」
「あぁ、そうだったね。しきたりで招くことはできなかったから、来年は大きなパーティーを開こうね。」
そう、この国では子供が生まれた年には魔のモノが子供を攫うことが無いようにという風習が昔からあり、例えお祝い事や行事であっても基本家の中に招く事を禁じられている。これは年内まで続きその間は屋敷の者、屋敷で働く者達しか出入りができないので、私のように兄や姉がいる家では誕生日を直接祝われることは出来ないのである。
近年では屋敷ではなく別荘に招いて祝うような貴族の人もいるそうだが、まぁ王都にある別宅まで行くのに山奥からだと遠いし何より母や双子にもしものことがあったら嫌なので、その選択はハナからなかったわけだが。
なので今回は両親と屋敷で働く者達という小規模な誕生パーティーで祝われたが、私にとってはそれでも十分に嬉しいことではあった。
レイとお父様が剣で舞をされた時なんかどちらも物凄い迫力があったし格好良かったしな・・・時折本当に刺し殺すんじゃないかとハラハラしながら見てたけどね。
おっと如何、脱線するところだった。
「ティリエスの言う通り2人とも霊獣を授かっているがディオス大叔父様は授からなかったと私の幼い頃、丁度ティリエスのように 信託 → 神託 の前に父からそう聞いている。」
「あのディオス大叔父様がですか?大魔法士様なのに?」
ディオス大叔父様から霊獣の話しは出てこなかったので知らなかったが、まさかディオス大叔父様は霊獣がないという事には驚きだ。
優秀な人でも来ないのか・・・何で来る来ないが決まるんだろうか?
「本来の理由は私にもよく分からない・・・が、これによって我が領地の者や私達の者に対して悪意を持って囁く輩もいる。」
「悪意?・・・あ。」
その言葉で一つ思い当たりティリエスは言葉を漏らす。
霊獣というのは女神の恩恵の一つ、つまりそれを授けられなかった・・・ということは。
「この領地にいる人には女神の恩恵を受け取れない、もしそれがこの地で関係していることなら瘴気のせいで侵食されているからだ・・・と昔はよく言われたようだ。」
私達一族が公爵家を拝命された経緯は瘴気に侵されている土地を監視し、何かあればそれに対処する為の地位の確約。
そんな一族の当主となる嫡子が目で見える恩恵を授けられなかったとなれば悪評は酷かっただろう。
お祖父様や大叔父様が霊獣を授かっていたからその時はなりを潜めていたそれは、父の場合は誰かに言われたことかもしれない。
「だが決してそんなことはない。その証明は私達がここで作物を育て豊かに暮らせていて、何より技量もそして守護霊獣と盟約していることからあり得ないことなんだ。それはティリエス、よくよく覚えておいてほしい。」
父の言葉にこくりと神妙に頷くと父は満足そうに心なしか安堵し笑う姿に自分を心配してくれていたことを感じ取ったティリエスは、どんな結果になろうとも父を悲しませることはしたくないとそう心に強く思った。
「だから・・・というわけではないが、私にはもう戦いを共にする馬である彼・・・素晴らしい相棒がいるし守護霊獣も授かった。だから今ではこれでよかったとも思っているよ。ティリエスももう少し大きくなったら乗馬を教えよう。馬と共に駆ける景色はとても素晴らしいからね。」
「はい、私も楽しみにしてます!」
「うん・・・それでは、霊獣・・・守護霊獣をここに喚ぼう。」
父は私から少し離れて自分の胸に手を置き目を閉じると、周りの空気が張り詰めたことをティリエスは肌で感じ取った。
何も唱えない、周りの音や風さえ感じないその空間に息を潜めるように見つめていると父の身体からそして周りに光の粒子が現れ始める。それと同時にあれほど晴れていた空もまた一瞬に曇り父を中心にして雲が渦を巻き始めた。
雲が厚く雷鳴まで聞こえ始める頃にはよりたくさんの粒子が父の周りを舞い始め地へと落ちていく。その粒子が父のいる周りの地に吸い込まれるようになれば、何か複雑な模様が描かれだんだんと陣が現れた。
そして最後の粒子がその陣へ吸い込まれてたと同時に父が手を天へかざすと陣もまた天へ昇る。
上へ上へとそれは上り、そしてある所まで上って止まると陣が砕け散る音と同時に何か大きなものが頭上から降って降りてきたのを見たティリエスは思わず、その場で蹲った。
途端、強い風が吹き荒れ、ティリエスは目を閉じてそのままやり過ごした。
「ティリエス、大丈夫かい?」
風も止み、顔を上げると父が自分の肩に手を乗せ、心配そうにこちらを伺う目と合った。
そして父の後ろの存在に思わず目が釘付けとなった。
そこには大きな人が乗れるほどの大きな綺麗な真っ赤な色の羽根をもつ鷹がこちらをじっと見据えていたからだ。
「あれが、我が一族の守護霊獣だよ。」
驚いている私に父の言葉が耳に届く。
偽妖精の時に見た早馬の騎士が霊獣を喚び出した時も綺麗であったが遥かに纏う空気が違いその凛々しく気品ある霊獣をただ美しいとその言葉が頭を占めた。
「とても・・・とても美しいですわ。」
感嘆の声に目の前にいるそれは、嬉しげにクルルと喉を鳴らし大きな羽を伸ばすといつの間にか晴天になっている空へ向かって飛び去った。
思わず、あ・・・と声を漏らす。
「どうやら、気恥ずかしく思ったようだね・・・そうか、久しぶりに外で空を飛び回りたいそうだ。」
意思疎通を図ったのか父はティリエスにそういうと、座り込んでいたティリエスを立たせた。
「また、お姿を見せてくださるでしょうか?」
随分と小さくなった空をくるくると飛び回る守護霊獣をみてティリエスはそう言葉を漏らすとアドルフはポンポンとティリエスの頭に手を置き撫でる。
「大丈夫だ、ティリエスならきっと背中に乗せてくれるさ。」
断言されたその言葉にティリエスはにっこりと笑みを浮かべた。
いつも読んでいただきありがとうありがとうございます。