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題名はまだない。何せこの物語はまだ途中なんで!  作者: ちゃらまる
第3章~新しい家族編~
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出来ることが増えてくると色々したくなるお年頃なんです。(嬉しい!悲しい!諦めない!㊳)

すみません、今日で終わりとかいっときながらめちゃくちゃ長くなりそうなんでわけました。少々加筆して投稿しますので次回は11/14(日)予定です。



「アイルお兄様、お祖父様やお祖母様はお元気でしたか?お手紙ではなかなか日取りの段取りが難しく当分会えないことが書いてありましたが・・・。」

「勿論元気だったよ。リリスおば様の危機に駆けつけられなかったことを随分気にされていたけれど、確かアドルフおじ様の代理として王都に赴いていたのだから、仕方なかったことだと僕は思うけどね。」

「それはそうですわ、そのお陰でお父様はここに留まれたんですもの。お祖父様達には感謝しかありませんわ。」


先に食事を持っていったギリアを見送るようにして2人はゆっくりと母の部屋へ向かう途中、ティリエスは自分の祖父母の事についてアイルに質問する。

現在ルドルフとメイサは数ヶ月前から隠居生活を送っている別邸ではなく王都へ滞在している。


理由は、王都で行われる貴族、それと教会の代表数名そして王家で行われる会議の参席を要請された為だった。


本来であれば父が公爵家現当主としてとして参席をすべきだったそれを自分の父ルドルフに代理を頼みその会議に参席したのだ。

内容こそ分からないが、3つの勢力が集まるその会議はとても重要なものだったのではとティリエスなりに推理する。

それにどうやら昨年から貴族の代替わりが結構あったようだし、・・・今回出席できなかったお父様の事を意地悪く言う輩が居てもおかしくない。


例えば・・・そう。


宰相とか宰相とか宰相とか。


ティリエスは話しだけでしか聞いたことがないお祖父様が苦汁をなめさせられた例の宰相の存在を思い出す。

少々想像してムカッとしたが、すぐに心の中でニヤリと意地の悪い笑みを浮かべた。

前回とは全く状況が違うからだ。

少し前から我が領で出荷しているバター、マヨネーズそして砂糖が売れている。

その売れ行きは滞ることはなく結構な財産・・・つまり儲かっているというのだ。

そのお陰でもう既に例の国の補助金制度も返納し、国と交わした50年分の補助金金額を年毎にお金も返金できる目処はたったみたいだし。

まぁまだ長年の積み重ねてしまったローン返済があるので他の有力貴族からみれば貧乏だし、お金が舞い込んでくるなんて幸運がずっと続く訳が無いのも分かっている。


今の状態に胡坐(あぐら)を掻いてなんて油断をするつもりはないが、でも今のこの状況なら宰相から何か言われることもないだろう。


まぁそれもあのアメジスト商会のオーガさんの手腕のお陰なんだけどね、どんなコネで色んな所に売り込んだろうか?

確か他の人から聞いた話しでは隣国の小国にも商売展開したって聞いているし。


この世界には無いそろばんを片手に持ってにっこりを黒い笑みをこぼしているオーガの姿を想像した。



なんだろうな・・・想像しただけど全く違和感ないなあの人、そろばんだって作ったらなんなく使いこなしそうな気がするし・・・。


「確かもう既にジョアナ夫人は来ていたんだよね。」


アイルの声にどうでも良い思考の渦にいたティリエスは我に返り、アイルに相槌をする。

「はい、丁度2か月ぶりですね。今日は夜にジョアナお祖母様に刺繍を見て頂く予定なんです。」

「そっか、良いのが出来るといいね。」

「はい!」



ニコニコと2人で微笑み合っていると、とある客間のドアの前が開いているのが見えてきた。

ギリアの姿が見えるということは、今日はこの部屋で母は診察をしてもらっているらしい。


2人も小走りにその部屋の前まで行くと丁度メイドが今日の昼食おかずを装っているのが見えた。

私に気づいたメイドのセナがにこりと笑うと、深皿に装ってお盆に乗せたそれを私に差し出した。

「ありがとうございます。」

ぺこりと会釈してお礼を言うと、お盆ごとそれを受け取るとティリエスは気をつけながら前へと進む。

「ティリエスさっきぶりだね。昼食をもってきたのかい?」

「はい、お祖母様、今日はポトフというものを作ってみました!これなら肉の臭みを感じずお酒で煮込んでいないスープですし香草にお野菜いっぱいで煮込みましたからお腹の赤ちゃんも美味しいって思ってもらえますわ!」

母を診ていたジョアナが声をかける。と、リリスもまたこちらを見る。

数ヶ月前に比べ体つきもふっくらし顔色がよくなったリリスは微笑んでこちらを手招きをする。

その隣には今日は公務が早く済んだのか父も母の隣に座っており穏やかに微笑んでいるのが見えた。


「・・・ティリエス。」

「?・・・なんですか?お母様。」

母の呼ぶ声にティリエスは首を傾げる。

いつもなら、どんな風に料理を作ったとか何をしていたのかとか聞いてくるのに今日は何だかいつも以上に穏やかな様子だった。

「ティリエス、もう大丈夫だって。」

「・・・・大丈夫。」

急に言われた言葉にティリエスはその場で固まる。

そして一度母をじっと見、その後父をみるが2人ともが穏やかに微笑んでそれ以上の言葉を言わない。最後に祖母であるジョアナを見ると、ジョアナがニヤリと笑って口を開いた。


「その言葉の通りさ、体の機能不全もなし、脈も正常それに魔力の循環方法も随分円滑に出来るようになっている、あたしはその手の物は解らんがアドルフ卿自身が魔力の流れが初期段階とは比べ物にならないほど流れよく体中に流れるようになったと感じ取っているのならこのまま続ければ問題ないだろうさ。何より一番は妊娠の重度の症状が出なくなった。少々軽い悪阻やむくみが出るようだが普通の妊娠にある許容範囲内のものだ。子供にも何の影響もない様子だし、あたしの目からみて欠損部分もない。」

「・・・・・・・・・・・。」

「ティリエス、あんたの母親は助かったんだよ。お腹の双子たちもさ。」


ジョアナの明るい声が耳に入ってきた途端、ティリエスはその言葉に歓喜を覚えたその刹那――――。


「う・・・うぅ・・・。」

彼女の漏れ出た声とティリエスを見て誰もが驚いて目を見開く。

母親であるリリスが声を掛けようと手を伸ばした。


「うぅぁぁっわぁぁぁん!あぁーーーん!!!」


だがその前に堪えきれなかったティリエスが声を大にして泣いた。

しゃくり上げそれでもお盆をしっかりと持ったまま、彼女は大粒の涙を幾重も零し流しながらただただ泣いた。


両親もその周りにいた大人達も、そしてすぐそばに居たアイルでさえ彼女がこんなに咽び泣く姿をみるのは初めてだった。

「ひっ・・・・良かった・・・お母様がっ、ひくっ・・・たすかってよかっだよぉぉ!!」

誰もが困惑するなか、ティリエスは気にも留めず泣き続け、しゃくりながらも彼女の気持ちを聞いた周りの人間は、この小さな体の中に大きな不安と恐怖をどれだけ抱えていたのか理解した。

ティリエスの気持ちとその言葉に誰もが目を潤ませ、リリスはそんな風に泣く自分の娘の姿にそのようにさせた後悔と感謝を胸に涙を流した。


「ティリエス、そんなに大きなお口を開いて泣いて・・・立派なレディなんですから、さ、泣き止んでこちらへいらっしゃい。」

「ひくっ・・・だ、だってぇ。手を使ったらぁ、せ、っせっかくギリアのつくった料理がぁっ、ひくっ、駄目になるもんっ。」


こんな時でももったいない精神を発揮した彼女に、周りはふっと泣き笑いになる。

「ほら、ティリエス僕が持つから。」

アイルが声を掛けティリエスの持っていたお盆を持つと、彼女は駆け出して母の胸に飛び込んでいった。

彼女の背に手を添え撫でるリリスもまたぽろぽろと涙を零す。


「ティリエス・・・ありがとう。」

リリスはそう呟いて未だ泣き止まない彼女をぎゅっと抱き締めたのだった。







――――――――――――――――――――――――――――



―――――――――――――――


―――――――――



「私は親失格だな。」

「急に何を言い出すのかと思えば・・・私はぁ、親になったことがありませんので回答出来かねます・・・が、何を思ってそう結論付けたのか理由を聞いても?」

大方の商談を終えその報告をする為に深夜近くに尋ねてきたオーガは、アドルフの言葉に別段彼のつぶやきに面倒と思う事なく、自分の疑問を相手にぶつける。

アドルフはオーガの問いかけにじっと自分の手を見つめながらぽつりぽつりと口を開く。

「あの子も私と同じで大きな不安も恐怖も抱えていたのに、私は自分の事ばかりでリリスばかり優先してしまった・・・、彼女を失いたくない一心で心無い言葉もぶつけたしそんな気持ちをもってしまった。あんなに・・・大声で泣くほど抱えていたのに。」

「あのティリエス嬢が?・・・これはまた、成程。だからそんなに落ち込んでいるんですか・・・。」

アドルフがなぜあんなに落ち込んでいるのか理解したオーガは同時に、同じような事を自分も彼女にしてしまったことを思い出し、少々罪悪感が芽生えた。


勿論、そんな事目の前の男にいうわけはないが・・・ただ、言えることはそう・・・。


「貴方は何かを切り捨てることで家族を守ろうとし、彼女は全てを捨てずに家族を守ろうとした。その結果、彼女に運命の女神が微笑んだだけですよ。その行動で貴方が後悔するのは少し違うんじゃぁないんですかねぇ。」


「その男の言う通りさ。」


と、扉から声が聞こえ2人は少し身構えたが、その声の人物に構えをといた。

「聞き耳を立てていたんですか?あまり感心できませんよ?ジョアナ夫人。」


ギィっというドアの開く音と共に現れたのは、ジョアナだった。

ジョアナはそのまま中へ入るとアドルフの近くまでやって来る。

片手には大きめの瓶を持っており歩くたびに液体がタプンと音を立てた。

その瓶の中身である何かの液体を瓶の口をそのまま口へ持っていき一口ごくりと飲んだ。


「今日は少し興奮して寝つけなかったのでね。ふらふらしていたら急に声が聞こえてきたもんでつい・・・ね。アドルフ卿、私もあんたと同じ親になった者の1人だから言わせてもらうが・・・親に完璧なものなんぞ何処にもおらんさ。あんたと似たような選択で息子たちや娘を泣かせたことだって1度じゃ2度じゃない。親も手探りさ・・そんなにうじうじとしてもなんにもならんさ。」

「・・・ジョアナ夫人。」

「アドルフ卿はまだまだ親として日が浅い、子供と一緒に成長すればいいさ。」

「・・・・そうですね。」


まだ少し後悔の念が残る目を宿しながらもアドルフはジョアナの言葉を素直に受け取った。


「あぁ!そういえば、丁度良かった。ジョアナ夫人、実は貴女に明日会いに伺おうと思っていたんですよ。」


先程とは打って変わって飄々とした態度で口を開いたオーガにジョアナは不思議そうに首を傾げる。


「なんだい?」

「いえね、先日の件が滞りなく進められそうなんですけど・・・本当に貴女の名前をお借りしてもよろしいのですね?」

「そのことかい、問題はないさ。それにあんた達にも都合が良いだろう?」

そう言ったジョアナの目には机の上に置いてある見覚えのある石を見た。


いつも読んでいただきありがとうございます。

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