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題名はまだない。何せこの物語はまだ途中なんで!  作者: ちゃらまる
第1章~夢現編~
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如何にして私はここにやってきたのか(本人だってよくわかっていない。)⑱




裁縫道具一式。

その名の通り箱を開けると一般にある裁縫道具が所狭しと整頓されて箱の中に納められている。


紅い待針7本・青い待針8本・縫い針13本・刺繍糸12色がそれぞれ1束ずつ・チョークペンシル2色それぞれ2本ずつ・そしてそれぞれ1つずつに針山・糸切バサミ・裁ちバサミ・メジャー・リッパーそして8色の布が入っている。普通に裁縫として使用することも可能ではあるとゲーム内でのアイテム説明にあったようにただの裁縫が出来そうな見た目だ。


だが、私が使用したいのは勿論普通に裁縫ではなく、この1つ1つの戦うための道具として利用することである。


例えば・・・・・と、念のためちゃんとアイテムにそれぞれ効果があるかどうか鑑定して見てみよう。

私は早速紅い待針を一つ取り鑑定をする。



待針(紅)★★★★★★☆☆☆☆→見た目はただの紅い球がついた待針。但し、敵よ・・・油断することなかれ。

裁縫道具一式の中身の一つ。敵の物理的攻撃が見られた場合自動的に対象者半径1.5mの護りの陣の展開、待針自身も人並みに大きくなりその鋭い針で攻撃に転じる。

しかし、ある程度攻撃を受け続けると耐久性が失われ壊れてしまう。壊れる前に裁縫箱に戻し時間が経過すれば自己修復しまた使用は可能になるが、その前に完全に破壊されてしまうと修復は不可能な為消耗品扱いになる。

完全に壊れる前、敵認定しているものにまるで恨みを晴らすかのように体当たりをすることがありその時は上にある紅い球体が周囲を巻き込んで爆発、文字通り自爆をする。爆発の威力は中級魔物なら跡形もなくなるほどの威力の為、爆風被害などを避けるなら護りの対象者も彼らの突進行動を確認した場合すぐにその場からの退避をお勧めする。



良かった、自分が思った通りのちゃんとしたアイテムだった。


鑑定した内容を読んだ後すぐに思ったのがそれだった。

だって、これに付属効果がなかったらただの裁縫道具一式の価値しかないうえに、ウキウキ度が一気にだだ下がりでショックで寝込むかもしれない。



どうしてこれにそんな風にまで思い入れがあるのか。

答えは簡単。このアイテム一つ一つがゲームでは課金アイテムなのだ。


ゲームの課金ガチャは3通り。

1つはレアキャラを召喚出来る人物10連ガチャ。

2つ目は国の建設に役立つ施設10連ガチャ。

そして3つ目はオモロシリーズなどダンジョン探索などを優位にする道具を当てることができるアイテム(補助道具)10連ガチャである。


ゲームをやり始めた大学生の頃、生活費を稼ぐ以上にバイトを多く掛け持ちしてまでお金が欲しかったのはこの課金ガチャがしたかったからだ。



私が率先して課金に回したガチャは補助道具。

ソロプレイの基本、ましてやゲームの基本でさえ知らなかったあの頃、私は毎回自分の貧弱なアバターが死んではまたダンジョンの前に振り出しに戻り・・・・をくり返していた。

そんな時に私はこのガチャを見つけた。そして、少ない小遣いと引き換えに手に入れたのがこの裁縫道具の待針、縫い針達だった。


それから、この道具にはかなり助けられた。いけなかったダンジョンの先まで導き、護り、強力な魔物たち相手に一緒に戦ってくれたかつての相棒達。

そして、そのおかげで魔物から装備品を取得できた私はようやくそこで自分のアバターに防具や武器が装備できることを知ったのである。


でも、ずっとは使えなかったんだよね・・・・。

本来なら待針や縫い針の本数は其々20本ずつ入っていた。それが今ではこの数・・・・そう、彼らは私の命を護る為に犠牲になり本数を減らしていったのだ。


そのことに私は悲鳴を上げた。買ったものが壊れて失われていく・・・・・ビンボー性な私には耐えられなかったのである。


それ以降私は大事に仕舞い、そしてソロプレイに段々と知識を深めていき今に至る。


勿論便利アイテムがもらえるので、金銭面でたまに余裕があればその都度ガチャをして集めているのは社会人になった今でも行っている。

私はもう一度裁縫道具の中身をじっと見つめる。


これは私にとって初めてお金を払いゲットした代物。

思い入れも十分、勿論失いたくないという思いもあるが、私が今この状況で必ず任務を遂行できると断言し信頼できるアイテムはこの子達だと確信している。それに当初とは違って自己修復する裁縫道具の箱、その他のアイテムだってある。そうそう彼らを失いはしない。


久々に・・・私と一緒に戦ってくれるかい?



私の問いかけに答えるように待針の球体がきらりと光る。気のせいだろうが、私の気持ちを固めるのに十分だった。


・・・さて、気合十分。やりますか!


私は早速裁縫道具の中にある刺繍糸の束を手に取る。


刺繍糸は全部で12色。それぞれの色に勿論特殊効果が付いている。

私はお目当ての物を鑑定しながら作業に取り掛かった。


刺繍糸(白)★★★★★☆☆☆☆☆→道具の最終救済処置。破壊される前に決められた座標を予め決めていれば瞬間移動(テレポーテーション)を作動しアイテムの破損は免れ座標場所に移動する。


これは絶対に巻きつけておく。私は次々と待針の球体の下に縫い針はそのまま頭の部分に糸をクルクル巻きつける。


刺繍糸(赤)★★★★★☆☆☆☆☆→攻撃力の一時的上昇。発動後5分間は効果が続く。


これは基本物理攻撃の縫い針と紅い待針に巻きつけていく。さて次は・・・・・。


刺繍糸(黄)★★★★★☆☆☆☆☆→魔法攻撃に雷が追加付与される。当たれば相手を痺れさせ、数分間硬直状態が続く。


これは青い待針、こっちの待針は魔法攻撃、防御に特化した補助道具なのでこちらに巻きつけておく。


あとは、攻撃速度が速くなる(青)と能力は分散せず5つの分身を創り出す(金)の刺繍糸をそれぞれに巻きつければ、最強ボディーガード軍団の完成だ。


本来なら、これは多重付与は出来ないのだがスキル『錬金術熟練者』が私にはあるのでアイテム1つに4つまで多重付与できるのだ。そういうわけで、私は惜しみなくその能力を使う、出し惜しみはしない全力投球である。

ふっ・・・・また恐ろしいものを創り出してしまったぜ・・・・。まぁ冗談はほどほどにして、頼むよ皆!




『ルドルフさんルドルフさん!』

私はふわふわ飛んで彼の元へ向かう。彼は何か指示を飛ばしていたが私の声を聞いてこちらを見る。

「どうした?妖精殿。」

『私も何か役に立てる道具を作りました!どうか使ってください!』

私は彼の前に先ほど出来たものを差し出す。

「これは一体・・・。」

『説明は後でします!早馬の担当の方はどちらです?』

「こちらだ、来なさい。」


私の言葉に彼は私についてくるよう言い、私と彼は部屋を出る。

足早に向かったのは玄関だった。

と、開いた扉の先に兵士とハーティスさんがそこにいた。何か巻物のような紙を対峙 → 大事に木箱の中にしまい下げたバックの中へ仕舞い込んでいた。


「どうした兄上?」

「妖精殿が早馬の彼に用があるんだそうだ。」

「わ、私でありますか?」


マスクをしているので顔が分からないが若い男性と分かる、その早馬の青年は少し緊張した面持ちでこちらを見る。

私は彼の腰の辺りに錬成して作った少しくすんだ緑と黄色の小さい腰バックを巻きつける。

これは以前あの鳥からむしり取った羽根で急いで錬成して作った代物である。

失敗しなくてよかったー。

勿論、なかには縫い針2本待針其々1本ずつ中に納めてある。彼に何かあればこれが身を護ってくれるだろう。


後は刺繍糸(緑)で作ったミサンガを彼の腕につける。



『早く着けるようにその腕に巻いたミサンガは速さが増す付与をつけてます。あと腰に巻き付けたバックの中に補助道具が入ってます。何か敵対攻撃にあった時それらが貴方の身を護ります。けれどそれも絶対無敵ではありません、破損すればそれらは消えてなくなりある場所に戻る手筈になっています。時間を稼ぐ程度のものですから・・・騎士のお兄さん、どうか気を付けてください。』


私の言葉をルドルフさんが代わりに伝えると、最初は戸惑っていた青年だったが驚きに見開いた後笑っているのか目じりが下がるのが分かった。


「これ程、安心して仕事ができる代物はありません。大事に使わせていただきます妖精様。」

彼は騎士の礼をして真顔になると、ハーティスの方を向く。


「隊長、それでは行ってきます。ご武運を!」

「ああ、仕事が終わればたらふく酒を御馳走してやる!死ぬ気で走れよ!」

「はい!」


そういって彼は何か小さな石を取り出すと手の中でそれが青く光りだす。強く光ったところで彼が近くに放ると瞬時にそれは白馬になり早変わりする。


ただの白馬ではない、その馬の肌には金糸のようなもので風をイメージしたような模様が描かれ動くたびにキラキラと小さく光る。馬はまるで準備運動するかのように彼の周りをぐるりと軽く走ると彼の前でピタリと止まり、ひと鳴きした後首を垂れた。



「よし・・・いい子だ。今日も頼むぞ相棒。」

馬の頭を優しく撫でた彼は慣れた手つきでひらりと馬に跨ると、そのまま颯爽と馬とともに駆け出して行ったのだった。

彼の姿はあっという間に見えなくなった。

いつも読んで頂きありがとうございます。

今度は来週金曜日投稿予定です。


裏設定 早馬担当の彼、平民でありながら実力でのしあがった人。故郷である彼の領地に3つ年下の男爵家の幼馴染がおり、幼馴染が今でも好き。けれど平民なので彼女の両親には反対されており認めてもらうため彼は故郷を離れ騎士になりました。

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