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題名はまだない。何せこの物語はまだ途中なんで!  作者: ちゃらまる
第3章~新しい家族編~
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出来ることが増えてくると色々したくなるお年頃なんです。(嬉しい!悲しい!諦めない!㉞)

今回は逆に長文になってしまいました。申し訳ありません!



自分の予想とは全く思っても見なかったその色に少し驚きつつ、ちらりと彼女たちを見やる。

ほんの少し落ち着かないその表情は、このお茶を気に入ってくれるかどうか心配しているような様子にもみえ、私はとりあえず戸惑った様子を見せる事なくそのカップを手に取った。



「・・・・良い香りですね。これはミントですか?」)

「はい、ミントの中でも甘い香りを持つアップルミントという品種のものを使いました。」


成程、どおりでくどい甘さはないのか・・・。


ティリエスはそのままカップに口つけ、一口飲む。

彼女のいうミントの爽快さと鼻に抜けるほんのり甘い香り・・・・ん?でもこれ自体に甘さがあるような・・・?


「もしかして、これは砂糖を少し加えていますか?」


思ったことを口にすると、クルケは頷く。


「はい、ティリエス様の言う通りで、こちらには砂糖を少し入れたものです。好みよって砂糖の量は分かれます、なので皆で話し合ってこれが一番誰でも飲みやすく感じる甘さとしてお出ししました。」

「成程、確かにお菓子と共に飲むならこのぐらいの甘さだとお菓子を食べる時邪魔になりませんね。クルケさん、ところでこの色はこのハーブの特徴なんですか?」

「いいえ。大体のハーブティーは透明か黄色か黄緑色のものが多いです。実は、これをお作りする際使った砂糖が違うんです。」

そう言うと彼女はシュガーポットを持ちだし、私に中身を見せる。

そこには蒼い色をした砂糖がそこにあった。見覚えのあるものにティリエスは思わず彼女を見つめる。

確かこの魔力属性を吸収した砂糖は甘露水より効能が期待できるとして、以前私がつくった飴玉にして魔術師団へ出荷している。

一応薬の分類に入っているそれを他の材料と混ぜ合わせることは私自身もしたことがなかった。


「無理を言ってギリアさんに調達して頂いたんです。私達の魔力を合わせて粉末状にしたものなんです。」

「どうしてそのようなことを・・・?」

「奥様を・・・少しでも助けたかったのです。」

急に母の存在を伝えるクルケ達に、ティリエスはどういうことだと眉を潜める。

「お嬢様もご存じ通り、リリス奥様は殆どのものが食べられません。ですが、そんな中でも唯一食べられるものがあったんです。」


母が唯一食べられるもの。

『そう、実はね。お母様最近食事がなかなか難しくてちょっと困っていたんだけど―――――――――。』


母の記憶を呼びおこしはっとする。



「飴・・・?」

「はい。私達も薬草・漢方・そしてハーブから何か改善策はないかとあらゆる方法を考え奥様に判断して頂いて行ってきましたが成果は見られませんでした。何より苦味を感じるものが多く・・・奥様には味には慣れているとはいえ今の厳しい状況の中よく耐えていらっしゃいました。様々な種類を試していた中、ある事に気が付いたんです。奥様は薬湯や漢方を服用した後必ずあの飴を食べていたことに。

飴を食した後、悪阻の症状がわずかな時間ですが殆ど表れない事を発見した私達と奥様は、これを利用し薬湯を飲みやすくすることにしました。まずはこの国でよく飲まれる薬湯の中に入れ飲んでみましたが苦みの緩和は出来ても悪阻を抑える効果はない。

普段飲んでいる紅茶といった飲み物は白い砂糖の方と同等で変化はない。

けれど、私達の良く飲むハーブティーにはこういう色の変化が見られ、そして奥様もこれは一番飲みやすいという結果となりこうしてどんどん試していったんです。」


そこまで話してクルケはもう一度目の前にある蒼いハーブティーに目を向ける。

ティリエスもまた自分の飲みかけのハーブティーを見下ろす。


母はつらい体をただ耐えるだけではなく、知らないところでどうすれば体調を回復できるのか考えて実践していた。

たとえそれが僅かな可能性の一つだとしても少しでも生きようとしているその行動に胸が震えた。


「私のお母様は・・・とても強いお方ですわ。」

「えぇ、けれどそれはお嬢様や旦那様がるからですよ。」

「私とお父様が?」

「はい、貴女方がいるから、まだ戦える。自分とこの子達はまだ頑張れるといつもそういっておられています。だから、私は笑えるのだと、辛くて泣くこともあるけど笑うことが出来るのだ・・・と。」


部屋へ入ると母は必ず微笑んで私を迎える。それは・・・母が私達へ気遣い、無理して笑っているものだと・・・そう思っていた。

でもそれは違うのだと、目の前の彼女が教えてくれた。


彼女のいった言葉はまるで母が言った様に聞こえた。

そしてその先の言葉も母が言った様に聞こえた。


「【だから、独りではなく一緒に頑張りましょうお嬢様(ティリー)。】」


ティリエスはその言葉に素直に頷いたのだった。


「ありがとう、皆さん。お母様や私の為に・・・本当にありがとうございます。」


心からの感謝の言葉を伝え、ティリエスはお辞儀と共に一粒の涙を零したのだった。






涙の痕をさっと拭いて顔を上げ互いに微笑んでいると、ギリアは思い出したように声をかけた。


「今だから聞きますけど、お嬢様は結局ここ数日一体何を悩んでいたんですか?」

「え?」

「保冷室の時は落ち込んでいましたけど、それより前は落ち込んでいるのではなく何かを探しているように見えたので・・・違いました?」

「え?そ、そんなに顔出てました?」


その質問にオロオロしたティリエスにギリアはこっくりと頷き、女性陣達にも目をやると少々居心地が悪そうに微笑む。


え、えー・・・私のポーカーフェイスは無駄だった?じゃぁ、もしかして聞かずに遠巻きに見てたの?もしかして皆?・・・いやだ、ちょっとそれはそれで恥ずかしい。


家族のみならず周りの人達にまでバレていることにティエリスは少し居心地が悪くなる。

と、綺麗に盛り付けてあるお菓子のお皿がレイの手で目の前に置かれる。


「それだけ、皆貴女が好きなんですよ。全くお嬢様は本当に人をたぶらかすのが上手い。」


いやいやレイさん、何言ってるんですか。やめてよそんな魔性の女みたいな感じに言うの。

レイに突っ込みをしつつ、黙ってクッキーを1つ口に運ぶ。


「!美味しいですわ。」

「ほんとう?!いっぱいがんばってつくったの!めがみさまもっとたべてたべて!」

「こら、トーラ!わたしだってたべてほしいんだから!じゅんばんだよ!」

「もちろん、頂きますわ。皆さんが作ったんですもの。・・・何に悩んでいたのかでしたね。そうですね、もしかしたら母の体調をよくする・・・なんていいますか、瞑想方法を考えたのですが・・・それをどうやってすればいいのかいい案が見つからなくて・・・ちょっと焦ってしまったんです。」


トーラとルーラのやり取りに微笑み、ざわついていた気持ちが少し落ち着いたので私は彼らに

シナウス達の存在を省き何に悩んでいたのかを話す。

それをきいたギリアは一度成程と呟き、そして難しそうな顔をした。


「瞑想・・・ですか。私は料理以外はからっきしですから・・・どういう感じの瞑想をしたかったんですか?」


「残念なことに栄養面、そして薬学ではお母様の体調回復が向上しないのが今の現状です。ですから私が考えていたのはお母様の見えない部分・・・それこそ血の巡りや魔力が身体の中で上手く運べていないのではと思い、もしお母様が瞑想といったイメージによって巡りをよくする事ができれば、少しでも今の状況が変わるのではないかとそう思いまして。実際、母の身体がいつも冷たいままです。」


以前なら暖かい手が冷たい。

父と話し合ったあの時は緊張のせいで冷たくなっていたのだと思っていたが、魔力の暴走原因を突き止めてからそれは、母の体内の魔力の循環、それが血液の巡りをも悪くさせているせいだとわかっていた。

魔力のコントロールできる方法を見つけたいのが本音だがあえて伏せて、それに近いことを彼らに伝える。


「栄養そして薬学も口から食べ身体が受け入れないことには効果が発揮しませんから、もしそれが出来て体のいい状態へ戻せるようになれば・・・確かに。」


そんな私の言葉を聞いてギリアは納得して頷く。


「えぇ、お母様の身体はずっと前から冷たいままです。勿論外側から温めてもあまり効果がない。なら、何か内側から暖かくなるようになるにはお母様の体内に働きかけないといけない。それには・・・何か・・・クルケさん達も何か方法とかないでしょうか?」


「そうですね・・・私の国でも薬湯が主ですから・・・。」

「それならハーブティーはどうでしょうか?」

「でも、食べ物からじゃ限界があるわ。」

「少し、運動・・・いえ、申し訳ありません。奥様の状況をみれば悪化させるだけ、何か・・・マッサージは如何でしょうか。」


女性陣達も何か方法がない話し合う。

ティリエスも周りの声に耳を傾けながら考える、いい案が浮かばず、誰もが討論し合う、その時だった。


「ねぇねぇめがみさま!」

「・・・ん?どうしたの?」

くいくいとドレスを引っ張ってトーラが話しかける。

それをみたクルケ達は服の裾を引っ張るトーラに慌てて注意しようとしたが、ティリエスは気にしていないと注意しないように制止させた。

そのやりとりを別に気にせず、彼女はさらにティリエスに話しかける。


「めがみさまは、からだがぽかぽかするようになって、からだがぐるぐるとあたたかいものがいったりきたりできたらいーの?」

「そうね、暖かくなって、自分の身体がぽかぽかするようになれればいいわね。」


彼女の質問を肯定すると、彼女はにぱっと笑う。

そして次の瞬間、信じられないことを口にした。


「めがみさま!わたしそれやりかたしっているよー!」

「・・・え?」

ニコニコと笑っているトーラに驚いて彼女を凝視する。

「トーラ、本当なの?」

子供の言う事なので半信半疑でティリエスは聞き返す、するとトーラは何度も大きく首を縦に振った。


「うん!このまえもそうやってあそんでたの!ねールーラ!」

「えー?もしかしてみんなでさいきんあそんでるあれのこと?」


どうやらルーラもその方法を知っているらしい。ティリエスは2人の顔を交互に見ながら本当のことを言っているのだと理解する。

これにはクルケ達もギリアやレイまで驚いて子供達を見やる。


「それ、どうやって遊ぶの?」

そう言うとトーラは自分の服についているポケットから取り出して皆に見せるように両手いっぱいに広げた。

「これつかってあそぶのー!」


その手の中にあるものを見てティリエス達は驚き、凝視してそれを見るのだった。


いつも読んでいただきありがとうございます。

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