出来ることが増えてくると色々したくなるお年頃なんです。(嬉しい!悲しい!諦めない!㉘)
前回同様やはりパソコンは可笑しいですが、別キーボードへ変えるとちょっと時間置けば普通に打てるようになるので、とりあえずほっとしております。どうかこのままパソコン使えますように。(祈りを捧げる。)
全ての手紙を最後まで読み終えた後、私は小さく長い長い息を吐いた。
大叔父様がまさか双子だったなんて。
心の中でぽつりと漏らした言葉が私の中へ苦く重いものとなって渦巻く。
今まで得られなかった情報に喜びは湧かなかった。
ティリエスはもう一度手紙をとってその文字を読む。
書いてはまた上から書き消し、けれどまたそこから文字を綴っているその手紙の文字は確かに綺麗な文字を書き綴ったものだが、ほんの少し震える文字で書き綴った箇所も所々あり、その微かな中に大叔父様自身の気持ちが現れているようだった。
私にこれを伝えるべきかどうかこれを私へ届けされるのもどうするのか最後の最後まできっと彼はとても悩んだに違いない。
そんな想いが綴られた手紙に、ティリエスは自身の目に込み上げてきた涙を拭った。
「ありがとうございます・・・大叔父様。」
貴女 → 貴方 が教えて下さった情報を、気持ちを決して無駄にしません。
そっとその手紙を大事に胸に抱いて私は部屋を後にした。
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・・・・この本も違うか。
パタンと分厚い本が閉じると机の上にあったランプがゆらりと揺らめく。
その灯を目を向けた後、ティリエスは天を仰ぎ脱力しながら何度目になるか分からないため息を吐いた。
まだ、初めて数日だ。・・・よし、次。
気持ちを奮い立たせ、ティリエスは机の隣に何冊も積み上げられている本の内、一冊を手に取り机の上に広げまた読み始めた。
大叔父様から手紙を貰った数日、私は自室に籠り本を読み漁っていた。
毎日のようにギリアに料理の献立が決めるのに欠かさず参加していた私が、当分席を外すことを初めは心配な表情をしていたが、私の顔を見てそれは杞憂だと分かると、料理という分野は任せて欲しいと背を押す形で私にそう言ってくれた。
彼から時間を貰い、私は図書室の本を片っ端から読みたい本を自室へ運ぶ。
勿論後ろで控えていたレイもまた何も言わず手伝ってくれた。
図書室から持ち出した本を数日掛けて読みこの世界で判明している病の特徴が書かれた本全般、それとディオス大叔父様のように偉人となった魔法の使い手の一生が著されている本の類、更に人体の仕組みの本といった部類だ。
先ずは大叔父様の手紙を読んで断定したこと。
これを起こしている原因が妊娠なんかではないということだ。
大叔父様の記憶から胎内の中で起こっている事を考えると胎児をも苦痛を伴う何かの供給源が異常なのが伺える、それを大人より貧弱な胎児が過敏に感じ取り苦痛を感じたのだろう。
そして母親はそれに気が付かずこれが妊娠特有の悪阻というものだと疑わなかった結果、次第に衰弱し結果亡くなったと考えられる。
確かに殆ど食べ物を口にしていない母の今の状態を考えると食べられる料理や今の症状を和らげる薬草を探し出すのも大切だ。
だがもっと深い所、大叔父様のケースに当てはめると悪阻でも食べられる食生活の改善は根本から違うという事になる。薬草もそうだ。
母達が試みている薬草は全て、妊婦の症状に効くものや内臓や消化器官の調子を良くするものばかりだ。そんな表面なところで取り組んだとしても現状維持が出来るだろうが打開策にはならない。
だから母親はどんどん衰弱していく。
じゃぁどうしてこんな現象が起きたのか、そしてこのような異常ともいえる状態で母親から胎児へ得られるもの。
身体の組織形成のための栄養、そしてもう1つ得られると考えられるのは――――。
「魔力がきっと関係している。」
私はそこに目星をつけた。
医学書や魔力に関する書類すべてに目を通してみたがそこには記されてはいなかった。
けれど、以前偶然知った幼児が魔力を無理に使用した場合に起こる人体の影響や負荷を考えれば、胎児には魔力は毒になり得るのではないだろうか。
だから胎児の頃のディオス大叔父様はそれに対して苦痛を感じてしまっただとすれば。
すべての多胎児は魔力の供給という毒をその身に受けるともいえる状態が続いていたために何処からしら機能の欠損や低下がみられる状態で生まれてしまった、ということなら辻褄が合うのだ。
加え、生き残った多胎児、大叔父様含めやはり一般の人に比べ魔力の扱いに優れ魔力が高い人達が多くなるのは必然。
結果としてこれは魔力量が多い人になる症例となる。
だが、これも正直不透明な部分がある。
第一子のお父様や第三子で末っ子生まれであるヴォル卿みたいに双子でもない人でも魔力が高い人は五万と居る。
ならどうしてこの人達の場合最初の疑問である人体に影響を受けなかったのはなぜなのか?
更に言えば魔力が中で何かを起こしているとして、何故母親の体内でそんな風な暴力的な魔力の供給を起こすようになったのか?
元々体内にある魔力が何故急に魔力保持者である本人に対し攻撃するようなことになってしまったのか?
それらの疑問が理解出来れば、きっと解決の糸口が見えてくると頭では理解しているのに、まだ私の中で解が得られない。
「他に原因があるのかしら?・・・でも、どう考えても魔力しか考えられないんだよねぇ。」
きっと大叔父様もこの事実に行きついたはずだ。でもどうしてそれを調べようと・・・いや、追求するのを避けたんだろう。
魔力が高いが故に今の地位があるというのに、母親の命を奪う原因になったのがその魔力のせいだと決めつけてしまえば・・・その心は計り知れない。
それに、そのような境遇をもつ彼の周りの人間がこれ以上深い傷を負ってしまわないように大叔父様は目を背けたんだ。
それを今私が追及することになるなんて、彼自身思わなかったんだろうけど。
ティリエスはふと時計を見やると既に明日の時刻を指しており、随分集中していたことに気が付く。
最近遅くまで調べているから寝不足が続くが、こんなの前世のバイト4つ掛け持ち兼大学レポートを作成していたあの時と比べたら、まだまだ大丈夫だ。
「とりあえずこの本を読んでしまってから寝ましょうか。」
そう思った時だった。
コンコンと小さなノック音が聞こえ、本から視線を外し音のした方を見やる。
机の灯と満月の月明りの明かりしかない部屋はその音のした方は暗闇が広がっている。
だが、私にはその先に誰がいるのか分かっているので思わず、口元が綻んだ。
シナウスが来たんだ!
「【どうそ、開いてますよ。】」
何時もの合図をすると扉が現れる箇所が光始める。
ティリエスは椅子から立ち上がるとその扉の前へと立ち、入ってくる人物を迎え待つ。
シナウスも調べてくれるて言ってくれていたし、今回のことを伝えて相談できれば何か突破口が見つかるかもしれない。
眠気も吹き飛んでティリエスは扉が開いたその先の光に目を細めたその時だった。
・・・・ん?
何かおかしいと思ったのはすぐだった。
ティリエスは開いた扉で首を傾げる。
シナウスって・・・こんなにガタイ良かったっけ?
光のせいで黒シルエットとなって現れたその目の前の人物にティリエスは何かがおかしいことに気が付く。
見上げてそれをみていると、のっそりと目の前の人物の手がこちらへ動き何かを差し出された。
取り敢えずなにも思わず、差し出されたものを受け取る。
・・・・花束?・・・・ん?
色とりどりの瑞々しい花束の存在にティリエスはじぃっとみて、とりあえず思っていることを言う為その相手に口を開いた。
「これはどうもご丁寧に綺麗な花束をありがとうございます。」
お礼を言ったティリエスはぺこりと頭を下げる。
そして、そこで正気に戻った。
いや・・・目の前の人・・・・誰?
いつも読んでいただきありがとうございます。