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題名はまだない。何せこの物語はまだ途中なんで!  作者: ちゃらまる
第3章~新しい家族編~
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出来ることが増えてくると色々したくなるお年頃なんです。(嬉しい!悲しい!諦めない!㉔)

9/26:一部箇所文章を訂正しましたが内容の変更はありません。




親愛なるアイルお兄様へ


最近ますます風が冷たくなってきてますが、いかがお過ごしでしょうか?

先日、どうしてあんなにもお兄様が何度も私に手紙を書くようにと念を押すように言って学園へ戻られた理由が分かり、今こうして羽ペンを手にしています。


とはいっても何から書けばいいのか頭が上手く纏まらないので文章がおかしいものになるかもしれません、そこは許してください。


先ずはお母様の事やお父様、そして私を心配していってくださってありがとうございます。

お兄様が心配していた通り、私の弟か妹は診断の結果双子と言われました。


今までのケースから母親のリスクや双子の身体についてもジョアナお祖母様から聞かされ正直ショックでした。

お祖母様から言われた選択はとても極端なもので双子を助けるために産むか、母を助けるために堕胎させるか。

この2つの選択に迫られた時、想いの相違からお父様とは言い争いをしてしまいました。

これまでも父に叱られることもありましたが、あんな風に怒りだけをぶつけられたことは初めてであの時は必死だったからそんなに思わなかったけれど、今思うと私自身よく耐えられたなとそう思います。


少し話しが逸れてしまいましたね。兎も角3人で話して・・・私達は、2つの選択ではなく3つ目の選択をつくりました。


双子を無事に出産させ、母を死なせないという選択を選びそれを叶えるにはどうするのが良いのか、皆で模索しています。



決して容易にできる事とは思っていません。けれど、産みたいという母の想いを尊重し、また母の命を助けたいという父の願い、私はそのどちらも願っている。


こうして手紙を書いている今でも母を助ける方法は何かないかと本を捲り目を通したりしています。お兄様には片手間ように手紙を書いているような捉え方に思われたかもしれませんね。

少しお行儀の悪い私を許してください。



結果がどうなるのか、父の言われたようにこの選択が絵空事となってしまうのか。

悪い結果を考えてしまうと手が震えてしまいますが、挫けず私は足掻いてみようと思います。


また、お手紙書きます。


それまでお兄様、どうかお身体に気をつけて。    

                                ティリエス





―――――――――――――――

―――――――

―――



母が出産の旨を宣言してから、何かが劇的に変わるのかと身構えたが家の日常は大きく変わることはなかった。


ただ、変わった部分もあった。


先ずは、母の試みでどうにか食事をしようという取り組みだった。

食べても戻してしまうを繰り返す母はそれでもなんとか自分が食べられるもの、そうでないものを区別するため色々な食材を使った料理を作るようにお願いした。


このお願いにギリアが奮闘することになり、そして私もまたアドバイスをする為毎日考案していったが、未だ良い成果が得られない。

美味しいも思うものが作れても、自分が想像以上にほぼ何を食べても受け付けられない事実を突きつけられ、ギリアと私もその度に母の見えないところで表情を暗くしたが、そんな気持ちを叱咤し次の使ったことがない食材、食材の組み合わせ、そして料理の考案をしていった。


父は父で領地の仕事傍ら何か方法がないか可能な限り書物を漁り、そして忙しいなかでも必ず母のいる寝室へ赴いている。


母は母でお祖母様と伯父様、それからエルフの女性達で薬草から何か改善の兆しの手掛かりになる薬草はないか妊婦に良いといわれる薬草を煎じ組み合わせて自分自ら試していている。


皆が皆母の為に様々な分野で知恵を絞り、何とか母の今の状態の回復を願い動いてくれている。


それでも――――。





「ごめんね・・・ティリエス。今日はちょっと食べれないみたい。」


目の前にあるポタージュの皿の前に持っていたスプーンを申し訳ない様子でリリスは置く。

朝もほんの少しのスープ、それから薬草茶を1杯だけ。

日に日に食べる量が減ってきている母の姿に思わず涙が溢れそうになるのをぐっと堪える。


「・・・ふふ、お母様ったら仕方ないですね~。なら今度は夕食期待して下さい!お腹がすくご飯ギリアと一緒に作ってみますわ!」


そう言って、ニコニコと笑って今日持ってきたお盆に乗せ、自分の食べたお皿も乗せお盆を持つ。

「ティリエス・・・ありがとう。」

母の声に振り返り、手を振って私は寝室から出ていく。

笑みを絶やさすしっかり扉を閉め、無意識に緊張していた身体の力を抜いて閉めた扉に寄りかかる。



今日も・・・お母様、あまり食べられなかった。


ギュッとお盆を強く握りしめる。

皆で頑張ると言ってもうすぐ3週間にもなるのに食べやすい料理も見つけられず、母の死を招く原因すら未だ見つけられていない・・・なんて私は不甲斐ないのだろう。


そう思った後、ハッとして首を横に小さく振る。


「こんな弱音を吐いてはいけませんわね。」


一番辛いのは母だ。

私には内緒にしているが、母は身体がつらくて苦しくて時折父の胸で震えながら泣いているのを扉の隙間から何度も見ている。

でも、それでも母は一度もお腹の中にいる命を捨てようとしないでいる。


だが、頭で理解していても不安という思いが胸の中にこびりついて離れない。

そして、不安になるといつも自分を自問自答する。


・・・早く、方法を見つけないと。

でも、寝る間を惜しんで目についた本を読み漁っても古の文字(アンティクアリィ)の本を解読を試みても・・・今の母の改善方法が見つけられない。


私の技量(スキル)である鑑定にも引っ掛からない。

何が分からない、私は何を知らない?


シナウス達が何か情報を持ってきてくれるのだろうか。それまで私は平常心を保てるのだろうか・・・母の前で泣いて困らせるようなことはしたくない。


どうすれば―――。



「おや~?随分と美味しそうなものがそのままですねぇ?」


ぐるぐると考えていると急に目の前でのんきな声が頭上から振って、驚いで勢いよく見上げると見知らぬ男が見下ろしていた。


少し首を傾げるように傾けているせいで右耳の紅い耳飾りが揺れチャリチャリと互いの耳飾りの金属がこすれる音が聞こえた。

女性が着けるような耳飾りをしているその男性は、優男にみえるせいかそれとも男性にしては性を感じさせない色白の綺麗な顔をしているせいか良く似合っていた。


綺麗な人だけど・・・視線が粘着質な・・・まるで蛇に見られているような感じがする。


ぽけっと見ていると目の前の男は何が面白いと感じたのか、目が細いその目を更に細くさせてにっこりと目の前の男は笑う。



そしてつぃっと右手の人差し指をお盆の方、母が食べ残したお皿を指さす。


「食べないなら私に下さいませんか?ティリエス令嬢。」

「名前・・・どうして?」


そう聞き返すと男はあぁ・・・となんてことないように口を開いた。


「いや、すみません。よく貴女様の事は貴女の御父上から手紙などで伺っていたので既に出会っているものと・・・。初めまして、私は商会『アメジスト』の会長を務めています。オーガと言います。」


男の聞き覚えのある名前に今度は私その男の顔をマジマジと見つめたのだった。








いつも読んでいただきありがとうございます。

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