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題名はまだない。何せこの物語はまだ途中なんで!  作者: ちゃらまる
第3章~新しい家族編~
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出来ることが増えてくると色々したくなるお年頃なんです。(嬉しい!悲しい!諦めない!㉒) 




・・・兎も角、先ずは何をするにも今分かった情報を整理しなくては。



頭でただ思っていても考えも浮かばないであろうと判断した私は自分の自室へと向かった。

自分のいつのも空間にいれば少しは気持ちが落ち着くだろうし、それに私の場合何かをするときは他の人間に見られるのは不味い。



足早に自室へと向かい、急いで部屋へ入ると既にレイが何時ものように部屋の掃除をしている姿が見えた。

私が何時もより荒々しく扉を開けて入室してきた私に少し目をまるくさせたが、どうしてそんな行動をしたのかすぐにレイは理解したようで、私にお辞儀をするだけですぐに普段通りに仕事を再開した。


私は彼のことを気にせず自分の勉強机に向かい引き出しから羊皮紙を1枚取り出し、机の上においてある羽ペンとインクの準備をした。

椅子に座り気持ちを落ち着かせるように深呼吸をし、一度机の羊皮紙に目を向けた。


・・・先ほどのやり取りが頭にちらついて、落ち着かない。

こういう時に事を纏めようとしても上手くいかないというのはよくよく理解していたのでもう一度大きく深呼吸してみる。


駄目だ・・・母の事が心配で落ち着かない。母の為になんとか落ち着かないと早く解決策を考えないと・・・。

その為には・・・一人になる必要がある。


「レイ。」


そして、そのまま自分の従者である彼を呼ぶ。


「はい、お嬢様。」


呼ばれたレイはルドルフから貰った兎のアンティークの置物を拭き終えた後、すぐさまティリエスを向け恭しく頭を垂れた。


「私は考えたいことがあるから、私の代わりに両親とお祖母様の話しを聞いて来て欲しいの、お願いできる?」


咄嗟ではあったが私が居ない間に話し合っている両親の会話の内容も気になるのは事実。私はレイにそう言って彼を部屋から出てもらう事にした。

彼は特に表情を変えることはなくこくりと頷く。


「問題なく。ただ・・・そうすると旦那様が・・・嫌な顔をされる可能性がありますがぁ・・・まぁ、それを見るのも一興ではあります。」

「いつもならお父様は寛容ですが、今回はそれをなさると本気でお父様容赦ないと思いますからよしてください。」

「・・・お前がそう言うなら、避けないとなぁ。俺も、今の地位を無くすのはまだ惜しい。」


レイは素直に私の言葉に従う。


こんな時でも飄々(ひょうひょう)と人を揶揄う様子のレイの態度に別段咎めることをしないティリエスは先ほどの父のやり取りを思い出して暗い影を落とした。

彼女の表情にぴたりと身体を止め、じぃっとレイは彼女を見つめた。


「どうした?」

「・・・自分の行動に後悔していました。情けない事に先ほど感情を優先にしてお父様を責める物言いになってしまった。お父様だって悩んでいたのに・・・私以上に悩んでいたはずなのにあのような言葉を・・・。」

「・・・フンッ。」


そう言うとレイは小さくため息を吐き私の方へと近づく。

俯いていた私は彼の黒い光沢な靴の先が見えていたが、途端グイッと顔を無理やり上げさせられる。

白い手袋越しの大きな手が私の両頬を包み込み、そして目の前にはあの群青色の瞳が私を捉えていた。


と、ニヤリとレイは笑う。


「そのように弱って・・・可哀そうに、お前がここから逃げたいと願うなら、連れて行ってやろうか?俺なら造作もないぞ?」

そう言って、右の目尻に唇を寄せ涙の痕があるその場所をベロリと舐めた。


「・・・・・は?」


ポカンと口を開けたまま私から離れていくレイを見ながら、たっぷり時間をかけと今の不可解な行動を理解し硬直した。


え?何、今舐められた?え?何してんだこいつ。


「ふむ・・・【女の涙は甘い】とあったが、比較するものがないからよく分からないな。」


そう言ってがっかりしたように言うレイの言葉にある事を思い出し分かった途端、私はスッと暗い気持ちがシュルシュルと萎んでいくと同時に自分の目が段々据わっていくのがわかった。


「レイ・・・貴方今恋愛小説と同じことをしたんですね?」


このようなまるで暗殺家業が似合いそうな青年なのに何がどうなったのか、彼の愛読書は恋愛もの小説なのだ。

読むようになったのはきっとメイサお祖母様の影響だ。

従者見習いでお世話になっていた時期に大方恋愛とは何たるか、意中の女性を射止めるにはどうすべきかを学ぶのには小説は必須アイテムとでもいわれたのだろう。


実際メイサお祖母様はそうしてルドルフお祖父様を射止めた。


実体験という信ぴょう性が高まる恋愛小説への薦めを言われれば読むべきだろう。

こう判断した彼はこうして片っ端からこの手の小説を読んでいるというわけだ。


まぁそのせいで毎回タイトルが違う本を持って移動している彼を目撃してはメイド達からは奇異な目を向けられてはいるが・・・まぁ私は別段気にはしていなかったが。


まさか、こんな場面で実践するとは・・・いや、何考えてるんだ?


「何故今なのです?」

「それはこういう、相手が弱っているときに付け入ると心情に変化をもたらすという描写が書いてあった。どうだ?俺にときめいたか?」

「どうだ?って言われても・・・。」


まさかの吊り橋効果?!いや、でもなんかどっちかというと獲物みたいに言われてないか?!

それでどうだ?じゃないだろう!しかも、小説には涙は甘いって書いてあるからといって涙が甘いとかあるわけないっ・・・いや、確か感情で涙の成分が変わるからその可能性はあるって聞いたことがあったわ。


だが、私に言えることはただ一つ!それはっ!!


「・・・残念ながら、その効果は全くありませんでした。」

「だろうなぁ・・・残念だ。」


くつくつと笑ってレイはティリエスから離れるともう一度じっくり顔を見られる。

その視線に気が付き、なんだがいたたまれなくなって顔を少し彼から逸らした。


「お前は暗く俯く顔など似合わない。」


その言葉にティリエスははっとして彼の居た場所に目を向けるが彼の姿は既になく、振り返れば扉を閉め出る彼の背中だけが見えただけだった。


パタンっと軽い扉の音が部屋に響いたあと、辺りはし・・・んとする。

ティリエスは先ほど彼が出ていった扉を暫く見つめたあと、静かに笑った。


「さっきの方が・・・私には好感触でしたよ。」


彼のお陰で、気持ちを入れ替えることが出来たティリエスはようやく机に向かい合ったのだった。


いつも読んでいただきありがとうございます。

裏設定という名のNG集があればこんな感じ:実は最後に言った彼女の言葉が聞きたくて扉を閉めた途端、聞き耳を立てていた従者がいる。(メイド達から暫くはひそひそ話しが絶えない。)

裏設定:今回涙の味について話しが出てきましたが、実際感情の涙で味は変化するそうです。例に例えると怒りや悔し涙はしょっぱく感じ、悲しみや嬉し涙は甘く感じるとか。感情によってどういう自律神経系の神経が働くかによって分泌する成分が変化し味が変わるらしいのです。なので、もし涙の味に変化のない涙を流す女性がいれば・・・それはウソ泣きということだそうです。(かといって味を確認したいから涙をちょっと舐めさせてなんていえばそれは変態行為です。)

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