如何にして私はここにやってきたのか(本人だってよくわかっていない。)⑯
3という数字について私は思いつく限り考える。
3は奇数。
英語ではスリー、ラテン語ではトレースという発音。
中国では縁起の良い数字と言われているがベトナムでは嫌われている数字。
3はタロットカードのアルカナの順番でいうと女帝。
タロットに因んだ何かの魔法なんだろうか?だが呪いとは程遠い意味のカードだし女帝として関連付けるには考えにくい。
じゃぁ・・・・・。
『3度目の正直・・・・いや、まさかなぁ・・・。』
「今・・・なんて言ったんだい?」
私は思いついたままぽつりと漏らした言葉にルドルフが至極真面目に聞いていたので、ちょっとした思い付きで言っただけの私が逆に戸惑い、あたふたする。
『え・・・・いやぁ、この魔法陣数字の3・・・までは読めるんですけどその先が読めなくて、3に因んだ関連を思い浮かべていたんです。そしたら3ってつくことわざがあるのを思い出してそれを言いました。』
文字なんて読めているんだろうし、こんな当たり前なこと言ってもなぁ・・・・。
しもろもどろにそう答えると、ルドルフは先ほどより酷く真剣な顔つきで私を見る。
え?オジ様怒ってる?もしかして、もうちょっとましなこと考えてくれよーな残念に思われてる私?
そう思えば益々委縮して私は項垂れる。謝った方がいいのではないだろうかと考えていた私に、今度はルドルフが先に口を開いた。
「妖精殿、我らにはその数字すら読めていない。」
『・・・・・?』
数字が読めてない・・・?
彼の言った言葉に私は疑問を感じた。
だって他の文字ですらない残骸は分からないがこの文字つまり『3』という数字ははっきり書かれている、これは他の人も読めるはずだと私は思っていたのだ。
でも、私は最初この字を見た時に読めなかった、現実では見たことのない文字だったからだ。
だから、いつものように鑑定した。え、まって・・・私は鑑定したから読めた?でも、彼らだって魔法は使うみたいだし馴染みある文字は多少なりとも読めるんじゃないのか?
「古の文字の形をかたどっていると分かっているが、我らの国ではその文字にどのような意味がありどう読むのかは解明されていないのだ。ただこの文字を使えばそれに連なる属性の魔力を集めやすくなり魔法の成功率が上がるという事実だけだ。」
『え・・・じゃぁよくわからないまま文字を使って魔法を用いているんですか?』
「そうだ、魔法陣が書かれた魔導書をもとに使用しているからその組み合わせ元々完成された魔法陣ならこうできるという尺度で我々は使用してる。」
つまり私で例えると、梵字っていう文字があるのは知っている、けれども今ではほとんど使われない昔の文字で読み方も意味も分からないけど、それぞれの文字になんらかの強い力を持つインドやら仏教の文字らしいから、梵字が書いてあるアクセサリー買ってみて何かしらのご利益にあやかろう!・・・・みたいな感じだろうか。
・・・え、何それ、実際に魔法が出来る分それって結構危なくない?
だって、これ良く分からないけどこうしとけば多分魔法発動できる!って感じだよね。それじゃぁ一歩間違って自分感覚でアレンジ魔法したら・・・バーンって爆発するかもって事じゃん。
なにその、楽観的な魔法設定夢物語もいいところだろ!・・・って夢だけどさ。
私は冷静に考えて魔法使用方法に危機感を感じた。
梵字はただ何となくでもいいが、魔法はそういうわけにはいかない、それを行えば必ず実行できる代物だ。何故こんな風におざなりなんだろうか…?
もしかして私の頭のせいか?
結局私の夢だし、知っているようで実は間違って覚えた知識持っているしそのせいで魔法の使い方を曖昧にしちゃっているのかも・・・・?
…ん?、でも待てよ?
私はゲームで培った知識と魔法用途、更には使用後の効果にその魔法の名前の意味だって理解してるのに…なんで?他の人達はこんなに魔法の原理とか理屈とか理解してないんだろう?
あれか、もしかしこれ私の夢だからチート以外分かってない設定なのか?
ちょ、ちょっと待った。わ、私普段独裁者じゃないぞ!ちょっと他の事を他人が知らなくて自分が知ってたら少しほくそ笑むこともあるといえばあるけど、でもどちらかといえば良かれと思って進んで教えたりする方だよ!
・・・・とにかく、今回は仕方ない。次回この夢を見た時にもっと細部設定しっかりさせておく為に、ちょっとでもいいから時間空いたら専門書とか読んでおこうかな・・・・。
「兄上、妖精はなんて言ってんだ?」
急に魔法について話し始めた自分の兄に、状況がつかめていないハーティスが声をかける。
ルドルフはどう伝えようか少し考えた後、口を開いた。
「妖精殿は古の文字の1つが数字の3に読めるといっている。」
ルドルフ言葉にエヴァイスの顔の表情がどんどん驚愕へと変わっていく。
「妖精殿は読み方どころか古の文字の意味を理解されているという事ですか!何という事だ・・・・あぁ、ここに兄さんがいればとても喜んでいただろうに!」
「嘆いてもしゃーねーだろ、あいつは古の文字の解読を主に研究していたからな。だが知られたら後で酷く恨まれそうだな・・・いやまぁ、あの魔術バカは運が悪かったと諦めるしかねぇな。」
へぇ・・・お兄さんがいるんだ、意外。しっかりしてるから一人っ子だと思ってた。
2人の会話に私はエヴァイスさんにお兄さんがいることを知る。
お兄さんの方は魔術関係のお仕事してるみたいだね・・・・私も何時かあってみたいな。
そして、大いに魔法について語りたい。主に今の魔法使用状態の危険性について・・・・。
私が意外な事実を聞いてそう思っているとルドルフが更に話し始める。
「そして妖精殿の世界には、3に因んでのことわざ、というものがあるので思い出していたとのことだ。」
「ことわざ・・・ですか?聞きなれない言葉ですね、どういう意味なんです?」
別の事を考えていた私は、彼らの言葉に我に返る。
如何、思考の渦に呑まれていたよ・・・とりあえず聞かれたことにを答えなければ。
『ことわざっていうのは、昔から・・・人々の間で言われてる簡潔な言葉で、簡潔ながらもその言葉には風刺・教訓・知識などの意味合いを持つ言葉の総称なんですよ。』
そのままルドルフにそっくりそのまま代弁してもらう。
「それでそのことわざというのは何があるんだ?」
「妖精殿は3度目の正直・・・といっていたが、どういう意味になるんだい?」
『3度目の正直っていうのは、1度目と2度目はあてにならないけど3度目には期待通りの結果になるっていうことわざなんです。ちょうど、術が発動したら“自分の望むとおりに皆が行動する”って言ってたからそのことわざを思い出したんですけど・・・・・。』
まぁ・・・そんな簡単なことだったらどんなにいいか・・・・あれ?
先ほどまでルドルフが代わりに説明していたのだが、代弁し終わった後3人が急に静かになった。
というか周りの警護している騎士達も各々驚いた顔をしたり、目が爛々している者もいる。
だが、誰も何も発しない、そして、誰もが物音を立てようとしない。
一瞬、し・・・んとした間が生まれる。
え?一体なんだ?
戸惑っている私を他所に、ハーティスが乱暴に持ってきた荷物の中を漁りもう一つの紙の束をむんずとつかんで取り出す。どうやら別の資料の様で、それらをこれまた雑に広げ始めると、他2人も身を乗り出すようにそれらを見る。
「確か、これとこれも関係してたな・・・・あと、これもそうだって言ってたな。」
「ええ、確かこの魔法陣は増幅魔法も含まれていると調べて明らかになっています。」
「だとすれば・・・・早急な対処が必要になるな。」
「おいっ!王都に早馬出して屋敷捜査許可をもらってこいっ!同時に俺たちは踏み込む。急げ!!」
『え?あのぉ・・・ん?』
どんどん慌ただしくなっていく部屋の様子に、私はついていけずそのまま見ていることしかできない。
「妖精殿、ありがとう!そなたのお陰で1つに繋がった、これで捕縛することができる!」
と、ルドルフが私を見て興奮してそう言ったのだった。
・・・・・ん?どゆこと?
いつも読んで頂きありがとうございます!
今回出てきました梵字、ちゃらまる自身そんな感覚です。少し調べましたら梵字の一文字一文字仏様の意味になる、らしい。
次回来週に投稿出来るようにします。