出来ることが増えてくると色々したくなるお年頃なんです。(嬉しい!悲しい!諦めない!⑮)
「嘘だろ・・・これは本当に人の食べ物か?俺はまさか神の食べるものを口にしているんじゃないだろうか?」
「うまぁ!!ティリエスちゃんマジ美味いわー、・・・えー?ヴォル何固まってるわけ?
?いらないなら俺貰うよー?「誰があげるか!!」じゃぁ早く食べなよー溶けちゃうじゃん。」
良かった良かったどうやら好評みたいだね。
ヴォルとグリップのやり取りを聞きつつティリエスは騎士達の表情をみて満足げに微笑みを浮かべる。
誰もがその白い冷たい食べ物に驚きを隠せないでおり、そして一口また一口と食べて至極幸せそうに食べている。
この様子だと、お母様がいる薬草園の女性達にも好評に違いない。
先にここへ持っていく前に他のメイド達に持っていくようにお願いしているのできっと今頃食べている事だろう。
「お兄様お味は如何ですか?」
「うん!!とても美味しいよティリー!確かに初めて食べるものだ!屋敷で待つ母上にも食べさせてあげたいけど屋敷につく頃には溶けてしまうから・・・ちょっと残念だね。」
「そうですわね・・・冷やす箱を大叔父様が錬金術で考えて頂ければ少しは状況が変わるかもしれませんが・・・。」
それでも屋敷に冷凍出来るほどの場所がなければこのお菓子は幻となるだろう・・・なんとかその辺りも開発を勧めたいところだが・・・まぁそれはおいおいでいいだろう。大叔父様だって忙しい身だろうし。
今回のように日持ちしないお菓子の方を色々作りたいのは山々ではあるがまずは商会から依頼された今可能な商品化できる日持ちするお菓子を作る事から専念しないと。
今後の方向性を改めて思いながらティリエスは独りそんな風に考えているといつの間にかギリアが居ないことに気が付いた。
「ギリアなら先に帰ったよ。僕達の反応を見て夕食のデザートに加えるのにもう一度アイスクリームを作りたいんだって。」
そう言って向こうを見ればもう少し食べたそうにしている騎士達の表情がみえた、所謂しょんぼり顔である。
うーん・・・大の屈強な男たちがしょんぼりしている光景って・・・なんか珍光景。
「僕も後で来てもらうように言われたよ、どうやら生クリームをまた作って欲しいんだって。」
アイルはそう言って最後の一口を食べ終えるとティリエスが持ってきたカラトリー等を運んできた台車へと食器を置くと大きく伸びをする。
と、アイルが急に体の動きを止め何か閃いた顔をした後、彼はラディンの方へと向かっていった。
「父上。」
「?どうしたアイル。」
「そういえば今日はもう訓練メニューは終わったんですよね?」
「あぁ、あとは自主訓練へ移行するが何かあるか?」
「はい、今から先ほどのものを作るのに牛乳を風魔法で少々分離作業する必要があるんです。」
「成程、人手が欲しいのか・・・分かった、声をかけて本人が快諾するのなら何人かに声を掛けなさい。」
どうやら人数確保に乗り出したらしい。
まぁ、それならお兄様の負担を軽く出来るから丁度いいだろう。
それから風魔法が得意な騎士数人とヴォル卿が強く望んだのでその人達とアイルは屋敷の方へと向かっていたのだった。
私は彼らの背中に手を振り、そして小さく息を吐いた。
ギリアが声を掛けなかったという事は私は特に行っても行かなくて大丈夫という意味なので私も彼らと同じ自由時間が出来たという事。
さて…何をしようか?
どう時間をつぶそうか考えていた時だ。向こうでグリップの叫び声が聞こえ思わずそちらをみる。
少し遠くに居るのではっきりとは分からないが、少々人だかりができておりその内の1人にグリップは何かを言っているのがみえた。
「あちらへ向かわれますか?」
レイの言葉に少し考えこくりと頷いてグリップのいる場所に向かっていった。
「だからぁー、ちょっと違うんだって!こうぐぃっとしてだな!」
「そうはいってもグリップ隊長分からないですよ・・・えぇとこうですか?」
「違うってばーもう、なんて言ったらいいんだろうこういうの・・・あ、ティリエスちゃんどしたの?」
「何やら大きな声がきこえたのでつい。どうかされたんですか?」
「いやね、こいつ剣の振り方が弱いからさ、ちょっとアドバイスしてんだけど・・・うーんなんだろうな伝わらないんだよねー。」
グリップは観念したように大きく脱力する。
すると、その教わっている青年は小さく笑った。
「だって隊長・・・こう説明が曖昧なんですよ。ちょっと俺にはわからないですよ~。凡人に分かる説明してくださいよぉ。」
「いや、説明って言ってもさーこればっかりは身体で理解するしかないっていうかさー。」
嘆かれる部下にグリップは頭を搔きながら困っているようだった。
うーん・・・剣の基本が出来てないから指導中ってことか・・・あ、もしかしたら。
そう思って私は久しぶりに頭の中でスキルの一覧に目を通す。
今の今まで使う機会がなかったけど、これ使えば少しはアドバイスできるかも。
そう思って私はあるスキルへ切り替える。
「それじゃぁもう一回見せるから、いい?突きはこうでこう!斬り付ける時はこの方が威力が上がる!」
そういってみせた剣捌きは早く一瞬だった。
そんな剣の見本を見せられた騎士達は目をぱちくりさせている、どうやら目で追えない人もいたようだ。
以前の私だったら見えてなかったけど、このスキルで問題なく見えた。
そして、次に教わっている部下が剣を振るう・・・がグリップにお眼鏡叶うものではなかったようで小さくため息を吐いていた。
2人の動きを見ていた私はそうかとある事に気が付き口を開いた。
「グリップ卿、もしかしてこの方は踏み込むタイミングと攻撃するタイミングが噛み合ってないのではないのですか?」
え?と誰もが小さな女の子の言葉に目を丸くする。
そんな彼らに気に留めることもなく、細長い棒を持ってきた私はグリップ卿と同じ構えの姿勢をとる。
「えっとですね、貴方の場合は突きはこのタイミング斬るときもグリップ卿より2歩分の遅れからしています。なので、突きはこの角度と足が半歩踏み出した時に突きをすれば早く、斬りに転じるんでしたらこの踏み込んだこの時が良いタイミングみたいですよ?」
そういってやりながらそういうと目を輝かせてグリップは満笑みで私に向かって笑った。
「スゲー!!ティリエスちゃん教え方上手じゃん!そうそう俺が言いたかったのはそういうことだったの!しかも綺麗に剣の構え姿勢出来ているし!天才じゃん!!」
「たまげた、まるで指導員みたいに構えが忠実で癖がない。一体いつ剣術を学ばれたんです。」
「あー・・・えーと、本で!本の挿絵がありましたし、お父様達の鍛錬をよく見てましたから。」
まぁ、それだけじゃないけどとそう言って心の中で呟く。
自分のスキルの1つ【指導者マスター】。
良くゲームでシナウス達にこのスキルをつけて剣やらその他の武術関係で稽古指導を行っていた。
そのお陰て理解できたためである。
「そうか、可笑しいというのも威力が小さかったのも・・・うん、ならちょっとタイミングを考えて振ってみます!」
そういってさっきまで落ち込んでいた青年は嬉し気に鍛錬場へ向かっていく。
そんな姿にティリエスはちょっと良い事をしたなと思っていると、後ろから恐る恐るといった声が聞こえティリエスは振り返った。
「あのーお嬢様が差し支えなければ私にも剣を見て頂きたく―――。」
「ぼ、俺は弓がどうしても苦手で・・・、どこを直せばいいのかみてもらえないです?」
途端わらわらとやって来た騎士達にティリエスはあんぐりを口を開けていると、グリップがバツの悪そうな声を出しながら申し訳なさそうにティリエスに口を開いた。
「ごめーん、ティリエスちゃん。ちょっとだけこいつら一緒に見てあげてくれないかな?俺だけだと説明下手でさ・・・。」
そんな彼の声に私は心の中で親指を立てる。
「いいですよ!私でよければ見させてください!」
だって私、今暇だし!!
そのまま私は自由時間の間彼らの指導に当たることにしたのだった。
いつも読んでいただきありがとうございます。
裏設定:そしてこの後終わりの合図が鳴るまでティリエスは騎士達のダメ出しという名の指導に勤しむことになる。レイが放置されて怒らなかったのは疲れてきた彼女が椅子に座る際、自分の上に抱っこして座るかたちとなったので始終機嫌は良かったとのこと。(「お嬢様の温もりを堪能させていただきましたよ・・・フフッ。」→やだ、変態がここにおる。)