出来ることが増えてくると色々したくなるお年頃なんです。(嬉しい!悲しい!諦めない!①)
今回から第3章開始です。今回もとても長いので3章は考えていた前半まで3章後半を4章にしました。生暖かい目で読んでいただければ幸いです。
深淵の闇が広がる長い廊下の中を1人、右手に持ったランプの小さな火を頼りにこつこつと白い靴を鳴らしながらその人は長い長い廊下を歩いていた。
火に時折照らされるその人は真っ白な深いフードを被り同じく見るからに上等な白い布の服装に身を包んでおり、その身なりから男性なのか女性なのか分からない、けれど顔は見えずともその姿は清楚な人の印象が伺えた。
そしてその人物が歩いているその廊下の壁際にはこの世界の主神とされている女神やそれに従属する神々のレリーフが静かに見下ろしている。
と、黙々と歩いていたその人物が急に立ち止まり一番大きな祭壇画を見上げる。周りの神々が中心に居る女神を祝福し祝福を受け中央に描かれている女神は慈愛に満ち微笑んでいる姿が描かれていた。
その画に対しその人は深く深くお辞儀をした後、その画を横へ通り過ぎ更に奥の扉を開けた。
暗く先が見えないその部屋の中へ何の躊躇もなくその人はひらりとマントを靡かせまるでその暗闇の空間に吸い込まれるように部屋へと歩を進め中へ入っていった。
ランプの光を頼りにある部屋のスイッチを探す。と、壁にドアノブのような取っ手のようなものが見つかりランプを持ったその人は取っ手のようなそれを奥へそのままゆっくり押し込むと精巧な作りがされている壁穴の中で納まっていった。
全てが収まるとその場所から小さな細い光が壁伝いで幾筋も通り抜けるのが見え、まるで壁の中を走っている。
その光が行きつく先はこの部屋にある天井の照明、そして壁掛けのランプへと向かいその光を動力源とするようにランプの魔法石に光が集まり周りを明るく照らし始めた。
部屋の中が段々明るくなる中、その人は持っていたランプの火を消すと部屋の奥の机へと向かっていく。
フードを被ったままその人は書類を手に取り一枚一枚確認するようにゆっくり走らせた瞳は柔らかいラベンダー色の瞳であった。
全ての文字に目を通すとその人は顔を上げ小さく静かに息を吐いた。
「とうとう来年の儀式には・・・あの子が受けるんですね・・・。」
書類を机に置き、そしてその人はその場で顔を下に向け姿勢を正し両手を組んで額にそのまま手を当て目を閉じた。
「どうか・・・女神の祝福の光があらんことを―――。」
その人はそう言って祈りを捧げたのだった。
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レイア歴1011年9月
うだる暑さだった夏も終わり、秋という実りの多い季節となったとある日の午後。
あちこちで騎士達が鍛錬の為剣を振るい剣同士叩きつけ合う音が聞こえるそんな中、ティリエスは屋敷の敷地内にある騎士達の演習場に居た。
騎士達の勇士を見ているわけでもなく地面を見下ろし険しい目で睨んで微動だにしないまま、ティリエスはむっつりと黙り込んでいた。
そんな彼女の隣にいる男が一人苦笑したまま口を開く。
「あー・・・ねぇティリエスちゃん。もうさそれやめよーよ。ティリエスちゃん女の子なんだからさ、俺ら剣馬鹿とは違うんだから。」
そう言うのは、いつも何かと助けてくれるグリップ卿である。
他領の騎士が何故ここに居るのか、それはルーザッファ領での野営訓練と剣の手ほどきを受けにメドイド領の騎士達が訪れているためであり、そのメンバーに彼もエントリーされていたためだ。
そして、そんな彼に宥められている私はというと納得がいかない表情で顔を上げてグリップを見つめる。
「君が剣の稽古なんて、絶対難しいと思うよ?」
そう言って私が立っている地面に置かれたそれをひょいっと軽々と持ち上げられ益々眉間に皺が寄ったのが自分でも分かった。
「それにアイルにもさんざん言われたでしょ?いくら俺らが3歳の頃ぶん回して遊んだ木刀でも重いから危ないってー。」
「・・・それは、分かってますよ・・・十分に。」
でもさ、もしかしたら出来ると思うじゃん私チート持ちなのに!!
そう心の中で嘆きながら、私は私がどうしてこんなことをしようと思い至ったのか思い出していた。
いつも読んでいただきありがとうございます。