まさかこんなことになるなんて誰が想像できますか?(考えよう、探してみよう、作ってみよう㊿と⑨)
誤字脱字修正をこっそり教えて下さる妖精様いつもありがとうございます!
教えて下さる度に自分だけだとあんなに雑であった文章が綺麗に読めるようになっていくのを作者本人が感激しながら感謝して読み返しております。本当ありがとうございます!
あともうちょっとで終われると思う!と思いながらひたすら自分のペースでパチポチしている今日この頃。(今月中には第2部終われる・・・はずぅ・・・うーん。)
ティリエスは思ったより大きな声が出てしまったことにバツが悪く感じ一度口を閉じたが、おずおずとまた口を開く。
「私が療養中伺った話しでは、確か皆さんは故郷に必ず帰れるように手配を行うと国王がおっしゃったと・・・それに王妃様の声で彼女達は都にある最先端の医療で治療させる手筈になったとも聞いていたんですが・・・。」
小声で聞きながら療養中にメイド達から得た情報を思い出していく。
聞いた話しによれば彼女達や子供達は奴隷の証である左耳の一部を切断されている。これをみた他のエルフ達が何を思うか、だから少しでも懸念が緩和できるようにその欠損部分を再生させることができる中級又は上級治癒魔法が扱える王都にある神殿の司祭達に協力を仰いだ。
これの提案者は国王と王妃、そして私のお父様で、特に一番にこれを命じたのは事件の全貌を知った王妃様が同じ女性と母として大変心を痛まれ、彼女達に治療と安心して療養できる場所を提供するように命じたと聞いている。
それに、ここから彼女達の領であるエルフの領域【ルーンシー】はかなり遠い、早く見積もっても馬車を使って2ヶ月半。まだ王都の方が距離は近いし、いくら鎖国状態な国でもルーンシーへと続く道は2年毎に整備はしているから交通の利便性や女性や子供達の体力を考えれば王都の方がぐっと行きやすい。
それなのにどうして、我が領で療養することになったのかティリエスは不思議で仕方なかった。
鍋の中にあるお粥の柔らかさを確認し納得するものが出来たのか、ギリアは鍋の火とろ火に変え蓋をすると大きなため息を吐く。そして何処か悔しそうに顔を歪める彼にティリエスは何かあったのだと悟った。
「今回の事件の詳細をエルフの国の使者から伝え、彼女達が願うのならそちらでの保護を・・・と掛け合ったようです。ですが、彼らの返事は国を勝手に出ていった者達がその後どうなっていようがこちらはあずかり知らぬなことだと・・・そう言われたそうです。」
「それは・・・お父様から聞いたことなのですか?」
そう問えば彼は肯定する。
新たな事実を聞き、ティリエスはどうしてここに彼女達がここへやって来たのかなんとなく理解する。
「俺の故郷の村も周りの村も食うのに困っている時期に、女性や子供がここでは珍しい身なりのいい人間に何処かへ連れていかれるのを何度も見たことがあります。後で不作の影響で立ち行かなくなったその村が最後の手段として口減らしをしたとその時当時の大人から聞きました。
俺は男だから力仕事で売られることはなかったし、実際酷い目に遭った人の気持ちを全て理解することなんてきっと出来ない。でも・・・似ているんです。あの時何処かへ連れていかれたあの子達の瞳とここへやって来た女性達の瞳と。」
「・・・・・・・・・・。」
「もしかして、彼女達は国から出たのではなく何かを理由に追い出されたんじゃないかって・・・だから故郷に帰れるかもしれないという希望事態が彼女達には無いのではないのかと・・・すみません、憶測のようなことを言ってしまい申し訳ありません。」
ギリアの言わんとすることにティリエスは黙り込む。
ここで聞いたことは勿論憶測でしかない・・・けれど、その可能性は十分にある。
もしギリアのいう国がらみの口減らしを行ったという事であれば、彼女達の存在を肯定してしまえばエルフの国にとって都合の悪いことが起きる可能性がある。
エルフの王、又は女王がこれについて肯定の声明を出さないのは彼女達はただ自分達の意思で国や故郷を離れた者達の不幸に見舞われた被害者として有耶無耶にしたいから。
幾ら事実やこの国の裁判で明らかになったとしても相手が沈黙を通すということは国の名を使って保護しないという意思表示になる。
もしそれ以上に追及すればこちらの心象も悪くなる。そうなれば藪蛇を突くことになりかねないからこちらの王も黙るしかなくなる。今は閉鎖的でも国同士の軋轢を生むのは得策ではないからだ。
だから彼女達は王都に留まるようにして欲しいと声を上げることもせず流されるままにここへとやって来たのだとしたらそれは―――――。
ティリエスは眉間に皺を寄せてギュッと手を握りしめる。
これが漫画やゲームの中であれば事件を解決すれば所謂「めでたしめでたし」と一括りで終われる、けれど現実で起こった事件を解決したところで心にもやもやしたものが残るのだとティリエスはこの胸の内にある何とも言えない気持ちに苦しくなった。
「アドルフ様が昨夜戻られたので、今日折をみて彼女達に話しをすると思います。何も言わず待たせれば待たせるだけ彼女達にとっても酷です。彼女達は今後どうするつもりなのか可能なまで希望を聞き入れ・・・故郷の地に行けずとも王妃様は尽力されると思いますから懇意のある遠い地方の修道院か王都の協会に保護を要請を命じるだろうとアドルフ様は仰られましたが・・・。」
「そうですか・・・。」
「お嬢様はどう思われますか?」
ギリアの言葉に思わず顔を見上げ彼を見る。
特に期待の籠った眼でも切望する眼でもなくただ純粋に私も当事者として彼女達をどうするのが一番なのかという瞳でこちらを見つめていた。
「私ですか?」
「はい。」
「そうですね―――――。」
彼女達がどうすればいいのかなんて・・・私には判らない、けれどもし私の考えている事が許されるのなら――――。
そうして、思い浮かべたのは最近仲良くなった女の子のはにかんだ笑みを浮かべる姿だった。
いつも読んでいただきありがとうございます。