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題名はまだない。何せこの物語はまだ途中なんで!  作者: ちゃらまる
第2章~誕生編~
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まさかこんなことになるなんて誰が想像できますか?(考えよう、探してみよう、作ってみよう㊿と⑥)

いつも読んでいただきありがとうございます。次回は金曜日用事が入ってしまい早めて木曜日に投稿予定になります。ご了承ください。



逃げなければっ!逃げないと、殺されるっ!


情けなくひぃひぃと声を出して走るバカスの思考はもう恐怖で埋め尽くされていた。

ここはもう敵しかいない。自分の部下もいない。


たった1人、己しかいないと理解した途端、強い恐怖が彼の周りをついて回る。


何処かに潜んでいるのか

それとも後ろからあの男たちが追ってくるのだろうか



あそこまで行けば・・・まだっ!!



そう思っていた矢先に見えた光景は行き止まり、荒い呼吸でバカスはその場に止まるとすぐに行き止まりの壁を這って何かを探す。


焦りと恐怖で震える手を動かしていると左の人差し指に小さな丸いくぼみを見つけた彼に希望が差したような顔になる。


その丸いくぼみに持っていた指輪をはめ込み少量の魔力を送れば、カチリと何かが開く音が聞こえ迷わずバカスはその壁を押す。

びくともしないはずの壁が扉のように簡単に開き、滑り込ますように中へと入り込み壁を閉じた。


光の遮断されている空間に暗闇が広がるが、バカスは気にせずランプ置いてある場所へと向かう。


この部屋は何かしらの事態が起こった場合、刑務官たちを脱出させるように作った部屋であり一度に20人は収容できる広さがある。

加えてこの扉を開けようにも外からのカラクリの理解と自分の持っている指輪がなければこの部屋に入ることは出来ない。


ここなら、あいつらは入って来られないだろうとバカスはようやく安堵したため息を吐いた。

だが、まだ油断はできない。この部屋から続くルートで外へ出なければ本当の意味で逃げおおせたことにはならない。

 

暗闇で見えないがあるだろう外へ続く扉に目を向けた。


脱出ルートはこことあわせて4つある。・・・が、ここが一番近かったこと、何より森の中腹まで抜けれる穴のルートはここだけしかなく一番外へ通じることができるルートだからだ。


他のルートでは待ち伏せされているかもしれない、このルートなら追い駆けられても逃げ切れるだろう。


「ここから逃げれば、あの方が助けて下さる。そうすれば・・・まだっチャンスが・・・ひ、ひひひ。」

暗がりの中、不気味に笑いながらバカスが置いてあったランプへ火をつけたその刹那、バカスは驚愕し口が開いたまま前を見る。


「随分と道草を食っていたようだな。待ちくたびれたぞ。」

「あ・・あぁ。」


扉の前で待っていたのは自分が最も逃れたかった人物、アドルフだった。

気配などまるでなかった。

まるで闇の中か突然と現れた彼に一度落ち着きを見せていた恐怖が再度じわりと這い上がってくるのが分かる。

がくがくと膝が震えとうとう立ってられなくなりその場にどさりとしりもちをついたバカスをただじっと彼は見つめた。


「何故ここに居るのか?と聞きたそうだな。」

無表情で見つめたままアドルフは腕を突き出しあるものを見せる。

それは、自分が持っていた同じ指輪。

その存在が差すものにバカスは今や遠くなった扉を見つめる。


「子爵から借りたものだ。事前に子爵からルートを聞きお前がここから脱出を図るとしたらここを選ぶように誘導させてもらった。例え、ここから逃げたとしても子爵家の騎士達が待ち構えている。お前はもう何処にも逃げ場はない。」


その言葉にバカスは項垂れる。

そんな彼に追い打ちをかけるように、アドルフは更に言葉を続けた。

「『権力を笠に着るのを嫌い分け隔てなくと親しい交流をしている子爵にとって、お前の行動をどう思われるだろうな。』」


その言葉を聞いて弾かれるようにバカスは前を見る。

先程の言葉に、みるみる怒りを露わにし始めたバカスはその場から立ち上がった。


「ふざけるな・・・・ふざけるな、ふざけるな!!お前のせいで俺の人生駄目にしやがって!!お前があの女を助けたせいで!!お前のあの魔法のせいでぇ!!お前がっ!!お前がぁぁぁ!!」


怒りに任せて、バカスは駆け出しアドルフに飛び掛かる。

アドルフはそんな相手に怯むことはなく右の拳に力を籠め、そして―――――。


「がぁっ!!」

バカスの腹に思いっきり拳をめり込ませた。

その衝撃でバカスは吐血し、吹っ飛ばされ後ろの壁を破壊しながら体がめり込んでいった。


バカスの身体から様々な音が聞こえ止むと、だらんと一瞬にして彼の身体は力を失いそのまま壁にめり込んだまま白目を向いて沈黙した。

アドルフは殴った拳に着いた彼の血を取り出した白いハンカチで拭いながら完全に意識がなくなったバカスを見据える。


「あの時お前にはそう見えたのだろうが、お前に咎められる謂われは露ほどもないし俺はあの時魔法を使ってはいない。もし、あの時あの雷がなければ今と同じように殴っていた。・・・まぁ。」


あの時と今とでは大分差があっただろうがな。


そう吐き捨てて血に染まったハンカチをバカスに投げ捨てると、アドルフは後ろの扉をゆっくりと開ける。

開けきった途端、扉の音を聞きつけ外に控えていた騎士達が押し寄せるようにやって来たのを確認すると、アドルフは何時ものように騎士達に現在の状況を搔い摘んで報告し今後の指示を出し始めたのだった。



いつも読んでいただきありがとうございます。

裏設定:扉から入ってきた騎士達。実は扉から外へまでの距離は約2kmほどあるので少し遠く位置(穴の中)で待機していたわけですが、アドルフの攻撃の振動と破壊音が響き渡り一大事と判断して駆けつけてきた模様。故に開けた途端どやどやと入ってきたという裏話(アドルフさんも君たち早いなっ!と真顔で思っていた模様)。そして、アドルフの放った一撃の跡をみて震えあがり後に子爵家の騎士達の間で語り継がれることになります。

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