まさかこんなことになるなんて誰が想像できますか?(考えよう、探してみよう、作ってみよう㊽)
申し訳ありません。今回作中で特定容姿の方を卑下するような表現を使用していますので不快になるかもしれません、ご了承ください。
うわぁ・・・本当にこっちに来たわー、場所でいえば来る確率はほぼ無いと思ってたのに、立地上入り口の方が攻防しやすいからここで待機してたけど・・・マジかー来ちゃったかー・・・来ちゃったかぁぁ。
数人の大人の存在にティリエスは表情を変えずに見つめるが心の中では勿論色々呟いていた。
表情を変えずに冷静に見つめることができたのは勿論技量の【精神(平常心)】お陰であるのだが、相手にそれが解るはずもなく距離を保ったまま対峙することとなり、ティリエスは今から面倒な事になることが予想され大きくため息を吐きたくなった。
私をここまで連れてきた人間ラビがいないけど、私を偶然見つけて助けようとする善良な人・・・というわけではないだろうし。身なりや立ち位置からしてこの人がどうやら主犯格っぽいし・・・まぁ見つかってしまったのだから仕方ない、相手を伺い出方をみてその都度どうするか決めて行動するか。
さって・・・でもどう話しかけよう?
ティリエスは頭を巡らす。
前回のあのカナディアの時、ただちょーっと本音で話しかけたら逆切れされて大変だったからなぁ・・・。
挑発したりして逆上して何か仕掛けられても面倒だしここは出来る限り時間を稼いで・・・うーん。
取り敢えず自己紹介からすべきか?
「あ、君がティリエスちゃんだね?」
これからどうしようかと考えていた矢先に声を掛けられたので、その男を見る。
どうやら、警戒されないように声質を変えてまでにこやかに笑ってこちらを見ている・・・つもりらしい。
ここからでもわかる程鼻息荒く何に興奮しているのか分からないがなんかハァハァしているけど目が笑ってないし。
何より下卑た笑いが気色悪いし初対面のはずなのに身バレしている時点で警戒度一瞬で跳ね上がるだろ、真逆のことして何してんのこの男。
それ以前に見た目がいい歳こいた、不衛生の象徴な油ギッシュな頭をした中年太りの男性だからより怪しさ気持ち悪さに拍車がかかってるし・・・どうしよう、これ。
犯罪防止の為にもう魔法使って距離とるべき?
ぼろくそに言っている事なんか露程も思っていない相手は私がまだ何かに怖がっていると思ったのだろうかゆっくりと一歩近づいてくる。
辞めろ、逆に恐怖だぞそれ。
「き、君を探しに来たんだ。怖かっただろう?もう安心だ、さぁここを出よう。」
「・・・・・・・・・・・。」
「さぁ、ここから出て家族の皆に会いたいだろ?俺と一緒に行こう・・・ね?」
「家族・・・。」
家族という言葉に反応した幼女に、バカスはニタリと嘲笑う。
魔法が早くから使える逸材とはいえ所詮は子供、心に揺さぶりをかけるなど容易い事。
さぁ、これから俺の思うとおりに働いてもらおう。お前の心が壊れ朽ちていっても骨の髄までしゃぶりつきお前を使ってやろう!
仄暗い思惑を厚顔の内に隠しながら人の好い笑みを浮かべたままバカスが手を差し伸べた瞬間、ティリエスは右手を前に突き出した。
「・・・・なんだね?その手は?」
彼女は自分の手を取るためでも、ましてや握手する為でもない。その手は相手の拒絶、これ以上こちらへ来るなというポーズだった。
「心配はご無用ですわ。私はここで迎えを待ちます。」
足を止めたバカスに彼女は淡々と口にして、続けて話し始める。
「知らない人についていくなんてこと、私はしませんし。お父様が必ず迎えに来ます・・・ですから、私はここで待ちます。」
「なっ・・・でも、ここはゴミ溜めのような場所なんだよ?ここは汚いから・・・ね?美味しいご飯も服も用意してあげるから。」
甘い言葉を囁き誘う男に、ティリエスは困ったような顔を見せた。
正確には生理的に受け付けたくなかった故の表情のそれだった。
その表情を見た彼は何かに遭遇したように目を見開き、ティリエスを凝視する。
そんな彼に気が付くことはなくティリエスは再度拒絶の言葉を口にするため口を開いた。
「ご飯も服もいりません。私は私の意思でここで待つ「その顔。」・・・・・ん?」
話しを遮られたのでティリエスは口を閉ざして見やれば今度はティリエスの方が目を見開き凝視した。
何かものすっごい怒っている感じなんだが?
暗がりなので顔色まではわからないが、彼の眼には先ほどまで見せなかった憎悪と鬼の形相な顔で私を睨みつけていた。
えぇ・・・?なんか私、あんなに怒るほどのこと言ったっけ?
何かを言う前にもう逆切れ起こされた、うそぉなんで?
「その顔、あの時と同じ・・・アドルフの野郎ぉぉ!!」
「ば、バカス様っあれはただの餓鬼っ。」
「煩い煩い!!ダマレェ!!」
そう言って、彼は隣にいた男を殴りつけ吹き飛ばす。吹き飛ばされた男はそのまま横壁へ叩きつけられズッ・・・とずり落ちていきそのまま動かなくなった。
あっという間に1人死んでいったその光景を目の当たりにして、他の男たちは焦りながらも固唾をのんで怒り狂った男に何もしゃべろうとはしなかった。
急に豹変した男の行動にティリエスも驚いたものの・・・ん?とあることに引っ掛かった。
バカス・・・・バカスってあれ?確か・・・・。
ここで初めて目の前にいる男の名前に記憶が呼びおこされていく。
「・・・あ、もしかしてあの時の。」
思い出してティリエスはぽそりと独り言ちる。
初めて偽妖精としてやってきたあの時、母に不貞を働こうとしていたあの男なのだと今ここで理解する。
あの時はまだ彼もまだ清潔感もみえスレンダーだったというに・・・今ではみる影もない。
「あいつ・・・あいつのせいで俺は貴族籍をはく奪されたんだ!俺よりも何も出来ない病弱な弟を領主にしやがって!!!くそっくそっ!!あの時の雷の魔法で騒動にならなければ!!あんなに大ごとにはならなかった!!あんな大勢で寄ってたかって!!・・・くそぉアドルフ!!」
どうやらあの時の騒動で彼の地位ははく奪され今このような身を投じているらしい。
そのきっかけを作ったと思われる私の父に相当恨みをもっているらしいというのもなんとなく理解できた。
でもそんなの悪いことしたものが悪い、自業自得だ。
それに、魔法をぶっ放したのはお父様ではない。
私だし!!
「そのようにお父様のせいにしたところで貴方の罪は貴方の罪。怒り狂うなどお門違いもいい所ですわね。」
「なんだと!!このクソガキがぁ!!」
怒りと唾を飛ばしながらこちらへ向かってきたバカスに私は魔法を展開した。
いつも読んでいただきありがとうございます。
裏設定:バカスは確かに不貞を働く形となり地位をはく奪されることになりましたが、リリスに懸想していたのは本当です。彼女を振り向かしたいがために悪行を辞め心を入れ替えるようにアプローチをするが結局振り向かれずあのような暴挙と出てしまった不器用な男でもあります。嫌がる彼女に無理やりしてしまいましたがあの時彼は本当は彼女とただ話をしたくて不貞を働こうとしたわけではありません。ですが以前からの見栄を張るような物言いをその場発言でしてしまったのと、実際に横領していた事実、そして女性の暴行をしていたという事実が、結果として事が公になってしまった後彼の人生は坂を転げ落ちる速度で落ちていきました。
人の評価は今までの行いに反映されるのが常なので彼の人生は自業自得といえますが、更生するチャンスを与えてくれなったという意味では可哀そうな人でもあります。