まさかこんなことになるなんて誰が想像できますか?(考えよう、探してみよう、作ってみよう㊸)
・・・なんだぁ?
男は緊迫な空気を纏っている騎士達に周りを包囲されながら首を傾げる。
確かに自分の過去を振り返れば、こんな風にして警戒されることがザラにありよくよく見られた光景ではあるが、この屋敷でこんな風に歓迎されるようなことは男は今のところ何もしていない。
気だるげに辺りを見渡しながら、そういえばここに来るまでに罠がやけに多いなとその中をひょひょいと難なく掻い潜ってやって来たが何か関係があるのかとふと思い出す。
・・・もし、だ。
もし、自分が関わっている可能性として1つ考えられるとしたら、あの子が自分の存在を他の人間に伝えた可能性だ。
それなら今のこの状況は容易に理解できる。
だが・・・あの女は、そんなことをしないだろうと即座にその考えは無いと断言する。
突如現れた人間を怖がるどころか、俺と対等に会話し、俺が意思関係なく連れていくと言えばはっきり拒否をし、自分と添い遂げたいなら俺自身に自分の身を捧げても良いと思わせるよう誠意を見せろといい、その上で己の心を俺に向けさせよとそう言ったあの女がこんな姑息な事はしないだろう。
だが、この状況も飽いてきたのも事実・・・さて、どうしようか・・・。
「ヴォ、ヴォル隊長・・・この男、如何しましょうか?」
「・・・グリップ。」
「悪いけど・・・どうも腕1本なくなる予感しかしないわぁ・・・何こいつー何処から湧いてきたわけぇ?」
何時もの飄々とした物言いをするグリップだが、彼の声色に隠されている緊張を読みとったヴォルもまた、この得体の知れない者に対しての思考を続ける。
今この誘拐された後にやって来た不審人物に警戒をして膠着状態だが、事は刻一刻争う状態だ。
だが相手の得体の知れない強さを感じ取った上で無視できるほどこの男を素性も分からない。
だからといって残ったメンバーで拘束できるような相手でもない・・・しかし、だ。
なんで服装が紳士服?こんな禍々しい強さを感じ取れるのに?暗器1つでもあれば暗殺者も想定できるってのに、ガチの花束しか持ってないし・・・こいつ一体何?俺らをおちょくってんのか?!
「ヴォル、グリップ。」
「っ!アドルフ卿!」
背後からの声に2人が振り返る、アドルフも自分の部下から聞いてやって来たのを確認する。
「この男の面識は?」
「全く無いな。」
知り合いならこの膠着状態を解けるというのに、その即決の言葉にそんな希望もあっけなく断たれヴォルは心の中で涙を流す。
アドルフはその男をジッと見つめながら、自分の剣の柄に触れる。
「こんな夜更けに何の用だ?お前は誰だ?」
アドルフの言葉に男はジィっとアドルフを見つめ、「成程。」と一言そう言ってから彼はアドルフに向かって歩み出した。
一気に緊張が高まり誰もが剣を抜く緊迫状態に入る。
そんな状況に怯むことなく彼は歩み続け、そしてあと一歩進めば抜刀する距離でピタリと止まった。
「・・・・・・・。」
その行動に彼は決してただ力でねじ伏せるだけの者ではないという事を理解し、アドルフは剣の柄から手を放す。彼の行動を見たヴォル達騎士一同も不安があるものの彼と同じように倣う。
先に口を開いたのは男だった。
「あいつに似ている・・・ということは、お前はあいつの父親か。」
「あいつってもしかしてティリエスちゃん?」
その言葉にピクリとアドルフが反応すると同時に後ろに控えていたリリスの声が聞こえ、彼の視線はアドルフではなく今度は彼女の方を見やる。
「・・・母親か、それにそうかあいつの名前はティリエスと言うのか。ティリエス・・・ティリエスか・・・フフフ、良い名だ。」
「え、何急に上機嫌に笑い始めた・・・こわっ。」
急にクスクス笑い始めたその男にグリップは率直な感想を言うが、男は特に気も留めずに笑いながら彼女の名前を何度も復唱する。
と、あぁ・・・と思い出したように声を出し、彼はまたアドルフの方を見た。
「そう言えば、自己紹介がまだだった・・・。俺はレイと言う、今日は彼女に会いに来た。」
「ティリエスにだと?」
「あぁそうだ・・・まぁまだ条件が揃わないが、誠意、というものをみせに求婚をしにここまでやってきた・・・あいつは今何処に?あぁ・・・もしかしてこの前のように部屋で寝ているのか?」
またこの前と同じように起きるまで寝顔を見るのも良いなとクスクスと思い出し笑いをしながら言うこの男。
今この瞬間、この男の言葉の意味が理解できずに誰もかれもが言葉を失う。
一瞬の静寂、そして理解出来た瞬間。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・は?」
アドルフは一瞬にして表情がごっそり抜け落ち一気にその空気は氷点下まで下がったのを周りの人間、ヴォル達は理解しさぁっと顔色が変わるのを感じながら顔を引きつらせていった。
いつも読んでいただきありがとうございます。
裏設定:騎士達の心情→最後の言葉を聞きその後見たアドルフの表情は、あの雪山訓練後の表情よりもごっそり抜け落ちていたそうで、相手の男よりアドルフに恐怖。(一言で言うとこの場から逃げたい!!)
アドルフ→殺殺殺殺!!(頭に血が上り過ぎて思考回路がショート寸前どころかショートしまくった。)
レイ→彼女の寝顔を思い出しお花畑な頭なう。(早く会いたいな~)
リリス→・・・・・・・(え?何々?どういう事?!)
その頃の主人公→果物を刈り取り終え現在魔法で林檎をすりおろし中(魔力が全くといっていいほどしか消費されないから楽ちんだーい!)




