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題名はまだない。何せこの物語はまだ途中なんで!  作者: ちゃらまる
第1章~夢現編~
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如何にして私はここにやってきたのか(本人だってよくわかっていない。)⑫



肩の荷が下りて一息つけると思っていたら、何やら急に外が騒がしくなったのを自分の耳が拾う。

何か陶器物が割れるような音に、女性の悲鳴も聞こえる。

ルドルフと執事はその気配に気が付き、先ほどとは嘘のように険しい顔つきで扉を見つめる。



「旦那様、私が。」

「いや、ロゼフはメイサを頼む。私が前に行こう。」

主人の言葉に一瞬迷いを見せたが、彼の言葉に綺麗に一礼をとりメイサを庇う様にロゼフは彼女の前に立ち身構える。


・・・・・・・・これ。


私もあることに気が付く。

分かった途端私も怒りが沸々と湧いてきて厳しい目で扉を睨みつけた。


・・・・・・・・()()だ。


呟いたのとそれはほぼ同時だった。


ギィィィ・・・・・と、扉が音を立ててゆっくりと開く。


ゆっくり開ききった扉の向こうから音が聞こえない。

開いた扉の先は昼間だというのに何も見えない暗闇だった。



ひたり、ひたり・・・と何かかこちらへやってくる。


「・・・・・・お、お前はまさかアイーゼか?!」


徐々に見えてきた姿にロゼフが驚いて先に声をあげる。


中に入ってきたアイーゼといわれたその人はゆっくりと部屋と入ってくる。

ヒュー・・・ヒュー・・・っと乱れた呼吸と肩で息をするその女性は、老婆の姿にメイド服というとてもちぐはぐな姿で現れた。


皺くちゃな顔と木の根のような艶のない長い白髪の乱れた髪でその女は彼らの前に立った。

身体は今にもふらふらと頼りなさげないのに対して、老婆の眼だけはぎょろりと力強くこちらを見つめる。そして、体の周りにはあの黒い靄が彼女の内側からジワリと滲んでくる。


「その姿、メイサの呪いが返された為じゃな。まさか、お前が関わっていたとはな・・・・アイーゼよ、なぜじゃ?」


初めに口を開いたルドルフは静かに彼女に問いかける。

彼の言葉で理解する。

呪いが返された反動で彼女の姿は老婆という変わり果てた姿になったという事を。

だからロゼフが驚いた声をあげたのだ。



私が使った呪い返し(カールスリターン)


そもそもゲーム中にこの魔法は出てきていない。

ゲームで出てきたのは呪い消し(カールスイレイサー)という魔法だ。



これは以前魔王を倒したときに選択③を選んだあと会得した魔法で、呪いそのものが消えるので術者にも何の影響もない状態ですべてのしがらみを解除することができる。

つまり救済処置の魔法である。





だが私の取得スキル、『魔法を創造する者 』で創造した呪い返しという魔法は違う。

呪いは跳ね返り効力は3割減になって術者や関係者に呪いがふりかかるようになる。

つまり、これは俗にいう報復魔法(仕返し)だ。



少し前のことを巡らす。

恐らく光の中で聞いた何かの割れる音と女性の奇声は魔術道具の破壊された音と目の前にいるアイーゼという女性の声だったのだろう。

殆どの呪いは道具の方が大方受け命は助かったが、一部は彼女の若さという代償で老婆という女性にとっては呪いともいえる姿に変貌したようだ。




他の人から見たら酷いとか言うんだろうなぁ・・・・。

他人事の様に独り言ちる。


例えば、私がもし聖女という者ならこのような魔法を造ろうと思わないのかもしれない。

が、残念ながら私はただの人で喧嘩はどちらかといえば売られたら買う派だ。



ただでさえ罪のない人を殺そうしている輩を許すなんて気は毛頭ない。







「・・・なぜ?」

しわがれた声で彼女はぽつりとつぶやく。途端ギリギリと歯ぎしりをしこちらを憎悪の顔で睨んできた。ジワリと淀んだ黒い靄が感情と一緒に勢いよく中からあふれ出してくる。


「そこの女は私の未来を駄目にしたのだ!!私がっ、私が公爵夫人になるはずだった!!!旦那様の妻として隣に立つはずだった!!それをこの女が横から掻っ攫ったのだっ!!

何年、何十年に経っても忘れられない!!私を見下した(笑った)女の顔を!!ああぁ憎らしいっ!!」


「なんという恩知らずが!!」

女がまき散らすように言い放つ数々の言葉に怒りで肩を震わせて吠えたのはロゼフだった。


「借金のあったお前の家(男爵家)を援助したばかりか、お前の境遇を哀れみ暖かく迎え優しくしてくださった奥様や旦那様の気持ちに泥を塗るような真似を!!アイーゼ!!」


「いいや・・・いいや違う!旦那様は私の事を気にいってくださり側においてくださったのだ!この女は腐っても王妹・・・・すぐに離縁は難しいからほとぼりが冷めたらきっと旦那様は私を妻として迎えに来て下さる。だから、ずっとメイドとして耐えていた!」



だが、いくら待っても離縁はしない、旦那様から声もかからない・・・・・。


そればかりか後継ぎが産まれ


皆から祝福され


2人の仲睦まじい姿を見せつけられ



その光景は私が受け取るはずだったのに、それらを次から次に見せつけられ・・・・。


全てが憎しみという感情で埋め尽くされたのだ。




「その頃からさ、いつかその女も旦那様も殺してやろうと機会を伺っていた。ずっとずーっとさ・・・・そしたらあの方が私に声をかけて下さった。それで素敵な贈り物と私の願いをかなえてくれる呪い(まじない)を私に授けて下さったのだ。」


「愚かな・・・アイーゼ、お主をここに置いてほしいと頼んだのはわしではなく、メイサじゃったのじゃぞ。」


憎々し気に言う彼女にルドルフは悲壮な表情で絞り出すように話しかける。


彼女の気持ちを踏みにじられた怒りと悲しみが彼の中で渦巻いているのだろう。きつく握りしめているその手は震えていた。





だが、悪意に染まった女にはその言葉も届かない。ただただ殺せなかったことへの悔しさだけを延々と呟いていた。


この人・・・・もう駄目だね。


何の感情もなく女を見ていた私がぽつりと漏らし、手をかざした。


・・・捕縛(キャプチャー)


私の手から白い光の紐が現れ、蛇のように意志を持った紐はやせ細った女の手足や胴体に巻き付いていく。


「ぎゃぁぁぁぁ!!!」


彼女の身体から何か紋様が浮かぶと、激痛だったのか断末魔をあげその場で気を失った。

気を失ったせいかにじみ出ていた黒い靄もふつっ・・・と途切れる。


・・・・・・げ、やり過ぎた?


殺してしまっては主犯格を割り出せないし証言がないと後々動けない。やや焦って女に近づくと小さく息をしているのが見える。


あぶなー、殺意を持つから痛くなるんだよ。少しは反省しろっての。



捕縛(キャプチャー)→如何にどのような悪人でも断ち切れることが出来ない魔法。全体に罪人の紋様が浮かび、体の弱体化、一切の魔法使用できなくなる。また、罪の重さと他人への殺意の度合いによって激痛が走り対象者を無力化できる。魔法発動後、別の人に委託でき()が消えた時に魔法の効果もなくなる。


「この魔法は一体・・・・。」

始終見ていたロゼフが驚いて女の姿を見る、ルドルフもじっと見ていたがすぐにロゼフに声をかける。


「・・・・・わしらには危険がないようだ。ロゼフ悪いが彼女を地下牢に運ぶように、それと王都の聖騎士に連絡をしてくれ。()()()王も動くことが出来よう。」

ロゼフはすぐに行動に移し、騒ぎを聞きつけた他の従者たちが入ってくる。

てきぱきとロゼフが支持を出しながら彼らに言いつけると、少し乱雑に彼女を抱え彼らと一緒に出て行ってしまった。


勿論、静かに礼をするのを忘れずにゆっくりと扉を閉めたのだった。



私は彼らの頭上をふわりふわりと漂う。



いやー、今回は本当大変だったー。呪いをどうにかできてよかったけどさ、もうこんな心臓に悪いことはやめて欲しいよーーー。


ふわりふわりと先ほどより下へと降りていく。

なんか夢なのに疲労感感じるし、ほんとリアルだな・・・・・と、ふと目の前の存在に気が付く。


目の前にルドルフさんが立っていた。考え込んでいるうちにいつの間にか彼の顔の前まで降りてきていたらしい。

意外と近くだったので驚いたが、まぁ今回も見えてないのだと理解し驚きもなくなる。


彼は私の後ろにある扉を見ているのか、丁度私と目が合う。


私は、とりあえず疲れたことを嘆くより目の前の2人を助けられたことを喜ぶことにした。





いやー間に合ってよかったよー。オジ様大変だったね、少し休んだ方がいいよ?立ってると疲れちゃうだろうし。あの魔法は結構強力だから、もう悪さは出来ないし。

心配なら結界魔法とかしときますよ!超得意だから!


「・・・・・・そうじゃな、ありがとう優しい子。魔法はいいがわしも少し疲れているようだ、座らせてもらうよ。」


ルドルフは先ほどとは変わって朗らかに笑うと近くのソファに腰を掛けた。



・・・・・・ん?


私は彼を凝視する。一瞬よくわからなかったが明らかにそれは起こっていた。



あれ?この人もしかして私が見えてる?!















読んでいただきありがとうございます。


裏設定:現在眠っているメイサさん、アイーゼの気持ちは察していました。彼女がどうして彼女を側に置いたかというと、彼女は男爵家の娘ですが教養がなくメイドとして紹介できる家に限りがありました。しかも紹介できる家にはほの暗い良くない噂があったり経済的に余裕がない家で下手をすれば解雇や身売りに売られる可能性も・・・・。それらが心配だったメイサさんは、自分が側において教養を教えながら仕えてもらうことにしました。その狙いは王妹だった自分の側つきメイドとして拍が付くので良い仕事先も見つけやすくなるし、彼女の想いは報われないと分かり切っていました。時間をかけてでもいいからルドルフへの気持ちに踏ん切りつけて前を向いてほしいと考えていたからです。しかしその想いは結局アイーゼにとっては何の意味ももちませんでした。


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