まさかこんなことになるなんて誰が想像できますか?(考えよう、探してみよう、作ってみよう㊴)
金曜日の投稿が少し出来ないかもしれないので次回は土曜日投稿予定になります。
ティリエスが敵の目を欺き、こうして着々と彼女のしたい事をやっているその頃彼女の屋敷では―――。
ツキンっとした痛みを感じて、小さく呻きながらティキは目覚めた。
その目覚めは良い目覚めとは程遠く、酷く喉の渇きを覚えた。
身体が・・・熱い。
いや違う・・・背中が熱いんだ。
うつ伏せで眠っていたその背中は外気に触れているというのに、それ以上にまるで背中が燃えているように熱い事にティキは気が付く。
私はどうして・・・背中、そうだ・・・背後から斬られて。
「お・・・嬢、様は・・・っあぁ!!。」
段々気を失う最後の記憶が呼びおこされ、一緒にその場にいたティリエスが連れ去られた事実に涙が溢れた。
お嬢様が連れ去られた・・・私をあんなに良くしてくださったお嬢様を・・・っ!!!
今日まで恐怖を植え付けられただ従う事しかできなかった私に。
欺いていたことを理解して尚、あの人は私に手を差し伸べて下さったのに!!
「伝え・・・ないと。」
自分はどうなってもいい。
お嬢様が他の子達みたいに・・・そんなことはあってはならない。
あんな地獄を・・・お嬢様はみなくても良い。
あの人の顔を歪めてしまう光景なんて!
痛む体を引き摺って部屋から出る。
壁伝いにゆっくり一歩ずつ進む。
誰か・・・誰か・・・。
歩き出してようやく誰かの気配を感じ、ティキは隙間から光が漏れる扉に手をかけると、痛みでその場で倒れ込んだ。
「誰だ!ってティキ?!!」
傍で声がした、自分も良く知っているヴォル卿の声にティキは反応する。
「君はまだ寝てないと!傷口が開いてしまうだろう!」
しかし、ヴォルの声を無視してティキはゼイゼイと肩で息をしながら彼女は身体を動かした。
出来る限り座るように、そして彼女は額を床に擦りつけた。
「なんでも・・・なんでも。話します。だからどうかお嬢様を・・・お嬢様を助けて・・・。」
小さく震える声で彼女は懇願する。
彼女の今の身体を考えれば声を出すことさえ痛みが伴うというのに彼女は痛みに耐え振り絞って言う。
そんな彼女の行動にその場にいた彼らは互いに顔を見やる。
誰も口を閉ざし静寂した空間の中すすり泣く彼女をみていたが1人の男が口を開いた。
「君がそんなに頭を下げる必要はない。」
と、泣く彼女に声を掛けたのはヴォルではなく彼女にとって初めて聞く声だった。
彼女は頭を上げ、声がした先を見つめる。
初めて見る男性、けれど彼女は誰なのかすぐに分かった。
高貴な出で立ちに黒髪に瞳が紫の瞳、そして何より彼女面影がその男と重なる部分がある。
彼はティリエスの父親、つまり公爵様だ。
自分が気を失っている間に、彼はここに帰って来ていたのだ。
彼は表情を変えずに彼女を見つめたまま口を開く。
「彼らから報告は受けている、君のことも。」
そういってパッとヴォルの方へ見れば、彼は困ったような表情をしたまま笑った。
「ヴォ・・・ヴォル卿、その・・・顔。」
と、彼の顔を見て今度はティキが困惑する番だった。
彼の左頬が明らかに腫れていたのだ。
見るからに誰かに殴られた後は彼だけではなく、他の騎士達にも見受けられた。
何か言おうとした時、また誰かが入ってきた。
「あれ?!ティキちゃん大丈夫なの起き上がって?!」
そう言って入ってきたのはグリップだった。
彼は心配してそう言うと、包帯越しに見える彼女の背の血のにじみに思わず顔を顰める。
「兎に角、もう横にならないと。今リリスさんが薬持ってくるから。」
「わ、私・・・。」
そんな事をしてもらう価値も資格もない。
「わ、私。皆さんの・・・敵で。」
本来なら自分の事はその場に捨ておく程の価値でしかない。
なのに、なんでこの人たちはこんなに私を心配してくれるのだろうか。
つっと涙が頬を伝う。
グリップはそんな彼女を見てそっと涙を拭った。
「ごめんねティキちゃん。俺らね、知ってたんだ。」
「・・・え?」
グリップの言葉に彼女は何のことを指しているのか解らず、彼に聞き返す。
彼は続けて口を開く。
「俺らね、君が初めから敵だってこと知ってた。知っててティリエスちゃんも君といたんだよ。」
その事実にさぁっと顔を青くさせティキは彼らをみた。
いつも読んでいただきありがとうございます。