まさかこんなことになるなんて誰が想像できますか?(考えよう、探してみよう、作ってみよう㊱)
今回短めです。(すみません、もう少し不快な表現が続きます。ご了承お願いします。)
周りの子供達が深い眠りに入っている間に、私はやるべき事をし始める。
この辺一帯の防護魔法をかけるのも勿論だが、子供達もどうにかしないと不味い。
一目で理解できる、横たわっている子供達の身体はほぼ骨と皮で、生きているのが不思議なくらい極限の飢餓状態の身体だ。
ここに来た最初から大半が横になっているが数人は起き上がる気力があったのか先ほど食事している姿を見ている。だが残飯が腐ったようなものを眉1つ動かさず口に運んでいる時点で自我どころか意識さえ保てていない可能性が高い。
まだ辛うじて命を繋いでいる子供達は正直明日明後日の命の状態だ、兎に角今の状態を少しでも改善しないと。
もう一つの改善しなくてはいけないこと・・・この酷い匂いをどうにかしないと不味い。
側にあれだけの遺体があるのだから臭いの原因の1つになっている・・・がそれよりも子供達がその場から動けず排せつ物がその場の垂れ流し状態が原因だろう、衣服と呼べるかわからないぼろ布を纏っているそれの変色具合から察するに、だいぶ前からあの状態のはず。
免疫力も衰え不衛生なこの場所に居るのだから感染症にもかかりシラミといった虫の繁殖の温床にもなっているだろう。
そんな場所を目の当たりにしていくら色んな人生の経験を積んできたグリップ卿やヴォル卿であっても、自分の母であるリリスもここの惨状を見れば痛感し顔を歪めるだろう。特に母は医者そして女性という観点から子供達の惨い仕打ちに涙を流してしまうかもしれない。
だというに自分は自身の周りに魔法の消臭をかけ、臭いの遮断をし平気でこの周りをウロウロしている。この場所を訪れた人は私がここで平然と居ることに疑問を持ち、敏い人間なら私自身の人格の疑念を向けられてしまうかもしれない。
少しでもここに居ても疑念を持たれないようにしないと。
「さて、それではある程度お掃除をしましょうか・・・。」
そういって取り出したのは亜空間収納の白い布袋である。
何時ものようにその袋の中へ手を突っ込んで物色し始め、お目当ての物を探し始める。
さてさて、こういう時にいい道具が・・・あ、これだこれ。
中から取り出してきたのは箱である。だがしかしただの箱に非ず、箱は箱でも虫箱である。
虫箱なので勿論、生き物がそこにいる。
籠の蓋を開けてそっと覗き込むとそれらはいた。
「お久しぶり、と言うべきかしら。それとも初めまして、と言うべきでしょうか?」
そう言いながら、虫箱を開けたまま床へことりと置くとゴトゴトと音を大きくしてそれらはのそりと這い出てきた。
眼もなく、手足もなくひも状の動物である彼らは外へ出ると私の前に集まるや否や整列をした。
「お元気そうですね、ミミー隊長、ミミー隊員達。」
そう言葉を掛けると、彼らは私の言葉に返事するかのように整列したミミズ達はより直立になった。
そう彼らは姿はミミズ。けれど様々なお掃除に特化した者らなのである。
小さなりチリゴミから大きな処理物まで、何でも分解し無害無臭な糞へ転じさせ土壌改善させる優れた才能を持っているのである。
彼らは実際にソシャゲで土壌汚染された場所をその小さな体で毒素分解し良質な土へ変化させ畑を作ることに成功させたのだ。
そしてそんな凄い事を成し遂げてくれる彼ら、私の命令を的確に細かに伝えてくれて他のミミズより一回り大きいミミズ・・・別名ミミー隊長と呼び、そのミミー隊長の指令を忠実に守り遂行する部下計267個体を別名ミミー隊員達と呼んでいたのである。
掃除を頼むなら彼らが一番だ。
私は彼らに口を開いた。
「また、私の為に一緒に頑張ってくれますか?」
そう言えば数秒ピタリと身体を止め私に頭を向けていたが、一斉に横を向くと頭を『く』の字に曲げその姿勢のまま身体を止めた。
まるでそれは警察が行う啓礼そのものに見え、私は彼らの気持ちを受け取る。
「ありがとう、それでは始めましょうか。」
その声に彼らは一斉に動き出した。
いつも読んでいただきありがとうございます。