まさかこんなことになるなんて誰が想像できますか?(考えよう、探してみよう、作ってみよう㉘)
2/23:文章を少し訂正しました。
2/26:名前を間違えてましたので訂正しました。
更に3日が経った朝、メイド達の話しを私は着替えさせられながら聞くこととなった。
「ここに運び来られた商人達、殆ど怪我も良くなっているそうですよ。」
「本当に良かったですよねー、これで怪我が良くなった人たちは村や町に帰れるって喜んでいたし流石奥様ですね!」
ふむ・・・話を聞くにどうやら、大方の治療は無事にすんだみたい。
流石母!娘として鼻高々です!
朝から自分の事のように誇らしげになりつつ、ふふんと踏ん反り返る。
実際踏ん反り返ると危ない奴予備軍に思われたらいけないのでそれは勿論心の中でした。
さて、父が王都へ赴きこうして結構な時間が経ったが今のところ変わらず平和な時間が続いている。
寧ろ自分はティキと言う同性のお友達も出来たので話し相手には困らないし、彼女は呑み込みが早いし。
素直でとても可愛いので彼女に字を教えるのは、教えがいがあり存外楽しく過ごせている。
時折、領地の良い所のアピールを欠かさずしているので我が領の定住勧誘活動もばっちりである。
ただ、定住の件で彼女のお父さんが首を縦に振ってくれればもういう事無いのだが、彼女が話をして説得してもどうやら中々首を縦に振 らない らしい。
定住計画は早くも難航していた。
他の商人たちは其々拠点や家を構えているから、彼女達にどうかと誘っているのに・・・うーむ。
彼女はここを気に入ってくれているのになぁ・・・。
お父様が帰ってくるまでに決着をつけたいところだが、ちぃっ・・・どうやら長期戦である。
気になる事と言えば、時間が合えば一緒に食事するぐらいでしか会えない母の事だ。母の方で何かトラブルが起こってないのかグリップに話しを聞いてみたところ、全くといって良いほど何も起きる気配がしないのだとか。
牢獄にいる山賊達にも子供にはなかなか聞かせられないような厳しい聴取をしているらしい・・・が、この前、私には見せないように聴取報告書に目を通していたヴォルの表情があまり良くなかったのをみるからにまだ重要な情報が出てこない様子だった。
全く、こっちも長期戦のようだ。あぁ・・・ギリアさんが暴走してなきゃいいけど、まぁ私自身砂糖のことも中途半端だったしどうなったかも聞きたいし。
お母様に害が及んでいない、それが起こる気配が今のところ皆無という事にほっと胸を撫でおろすが、既に10日も経っているこの状態。・・・さて、このまま何も起こらなければ良いが・・・。
「・・・本当、早く大きくなりたいなぁ・・・。」
服装を鏡で確認しながら誰にも聞こえないようにぽつりと小さく呟いた。
私がそんな風な胸の内でいる間に犯罪を犯した者以外、怪我が治った者からこの屋敷からまた自分達の行くべき、帰るべき場所へ向かい居なくなっていった。
勿論屋敷から出ていった者達は全員黒い情報がないただの一般市民ということは証明できている。
治っていった者達皆、心から喜び手当てしてくれたことへ感謝を私達に伝えここを後にした。
ティキと一緒に手を元気よく振って彼らを見送り―――――。
今ではとうとうあれだけ居た滞在者もティキとまだ完治まで至らずもう少し様子を見ることになったティキのお父さんが屋敷に残っていた。
本来ならティキのお父さん、ラビさんも同じぐらいに回復する予定だったのだが思った以上に傷が化膿し発熱を起こしたので回復が遅れている状態だった。
怪我は治った人達へお別れの挨拶をした後私は今日もティキと自室で遊んでいた。
今日は本を声に出して読み教えることをしている。それもひと段落し休憩がてらお茶をしていた際私は思い出したように口を開いた。
「そう言えば、今朝朝食の際お母様から聞きましたが、ティキさんのお父様の腕も最初に比べたら大分良くなっていると聞きました。後遺症もなく回復されてよかったですね。」
今回様々な人が怪我を負ったわけだが、状況を聞くに一番怪我がひどかったのは彼女の父親である。
あの山賊が襲撃してきた時、彼らの手にはどうやら錬金アイテムの手榴弾が手元にあったそう。
ただ良い品ではなかったようで投げて衝撃を与えても大方不発で終わっていたので騎士の人達の実害はなかったが、彼女の父親が居た場所にあった手榴弾が何かの拍子に爆発を起こしてしまい、咄嗟に庇った時の両手に酷い火傷を負ってしまったというわけだ。
それだけでも彼は幸運だった。
後で現場確認をした騎士達が見たのは彼のいた場所、その少し爆心地に近い先に数人の山賊が火だるまとなって絶命していたのを発見したので、もし彼らより爆弾に近かったらと思うと・・・想像してゾッとする。
そんなひどい怪我が良い方向で治ったのだ。
私は目の前でお茶を飲む彼女にそう言う。・・・が彼女は何かを考えていたのか反応はなく暫くぼんやりしていたが、ハッとして遅れて彼女は反応した。
「え、だ・・・は、はい。お父さんの怪我が良くなったので、嬉しいです。」
声は耳に届いていたようで彼女はそう言って一口お茶を飲む。
どこか思う事があるような様子に私はカップを机にあるソーサーの上へ置きティキへ声を掛けた。
「どうかされたんですか?」
「えっ?」
「最近、何処か考え事をされているように見えましたから。何か、お悩みがあるんですか?」
私の問いかけに、すぐに返事はせず押し黙ったまま俯いてしまった。
ふむ・・・何かのフラグを察知。
こういう時、ゲームの場合何かのターニングポイントのようなイベントに立たされるのがセオリー・・・おっと、冗談が過ぎた。
心の中でペロッと舌を出しつつ、彼女の言葉を待った。
最初は手を握って暫く俯いていた彼女が何かを決意したように顔を上げた時だった。
「はい?」
ノックの音に気が付き、私は返事をする。
「失礼します、あの。ここに私の娘が居りますでしょうか?」
ドアが開いたそこには、先ほど話題が上がった彼女の父ラビの姿があった。
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