まさかこんなことになるなんて誰が想像できますか?(考えよう、探してみよう、作ってみよう㉖)
彼女はそう言っていたが彼女の父から即了承することが出来、この日の翌日から私達は一緒に過ごすこととなった。
「お嬢様今日はどうされますか?」
「そうですね・・・今日は図書室へ行きましょうか。」
「分かりました!でしたらこちらとこちらを持っていきますね!」
本日の予定を伝えると彼女はこの前読み終えた数冊の本を抱え持ち一緒に図書室へと足を運んだ。
彼女は最初こそおたおたと頼りない様子でいたが、5日目になるとこの空間に慣れてくれたのか柔らかい笑みを浮かべてはっきりと物を言うようになった。
彼女は余程貴族の人間に緊張するのか、グリップとヴォル以外の騎士に出会うと顔も体も一瞬だがひどく強張る。
彼らの出自は確かに貴族ではあるが市井の人であろうと紳士の態度で対応する人達ばかりだとそれとなく言ってもそれが変わることはなかったのが少し気になるところではある・・・が、彼女自身も気にしているのか何でもないという風に装うのでここは何か言うのではなく気づかぬ素振りで見守る方が良いだろう。
同じ空間にいるグリップとヴォルが相手でも肩が力んでいるのを見るとちょっと可哀想だなぁなんて思うけど・・・。
チラリと背後に気づかれないように後ろに視線を送ると、数歩離れた位置から本日私達の警護に当たるヴォルの姿が見えた。
彼がここに居るということは変わりにグリップは母の方の警護へあたっているという事になる。
今のところ未だ判明していない怪しい犯人の動向を感じられない、平々凡々な日々を送っている。
早くに予想以上の護衛がいる状況に手をこまねいているのか。
それとも油断させる隙をつくため今はなりを潜めているのか。
まぁどちらにしろ今は私達も静観するしかないか。
どれだけの仲間がいるのか、それに犯人のアジトの場所も把握できていない。
今動いてもトカゲのしっぽだろう。
そうこう考えているうちに図書室に着き、ヴォルが扉を開けて中へ入るように即される。
一歩先に部屋に入ったティリエスはいつもの嗅ぎ慣れた本独特の匂いにほっとしつつ、何時ものテーブルへ向かっていった。
「では今日は先生ごっこしたいと思います!」
椅子に座って開口一番と共にシュビッと勢いよく手を上げたティリエスに、先に返事をしたのはヴォルだった。
「先生ごっこ・・・とは一体?」
「そうでした、ヴォル卿は図書室で過ごすのは初めてでしたね。」
困惑したヴォルにティリエスは説明し始める。
事の初めは初めて図書室で本を読もうとした時のことだ。
『今日は読書にしましょう。この辺りが物語の本が沢山置いてありますから、好きに読んでいただいて構いません。』
そう言って、私は以前読みかけてそのままだった本を取り出し読み始めようとしたのだが、対照に彼女は一向にその場から動かず本を読もうとしないので不思議に思い聞いてみたところ。
『も、申し訳ありません。・・・字が、読めなくて。』
消え入りそうな声でそう言った彼女に私とグリップは思わず顔を見合わせた。
話しを聞くとどうやら彼女は今まで学校に通わず、家の仕事を手伝っている為文字の勉強を受けていないのだとか。
それならと私が彼女の先生になって文字を教える!ということになったのだ。
説明を聞き終えたヴォルは成程と納得する。
「それで先生ごっこ・・・。」
彼の言葉に勢いよく縦に頷きながら肯定する。
まぁ、子供のお遊び感覚だからヴォルさんが思っているほどの事じゃないけどね。
「お嬢様、本をかえし終えました。今日はどの本を読むんですか?」
本をかえし終えたティキがこちらへやって来たので、うーんとティエスは考え込む。
この前は絵本が少し読めるようになってきてたし・・・そうだなぁ、あ。
「では、今日は地図を見ながらお勉強しましょうか!」
「ちず?」
「この世界の場所を記したものですね。私もそんなに見たことはないんですけど覚えていると損はしないですよ?」
彼女にそう言って私は本をとりに向かったのだった。
いつも読んでいただきありがとうございます。




