まさかこんなことになるなんて誰が想像できますか?(考えよう、探してみよう、作ってみよう㉕)
やって来たロングヘアの少女は名をティキといい、私に挨拶をした。
「こ、公爵夫人様が、おっお嬢様が部屋にいるっいらっしゃると聞いた、お聞きして遊び相手にと・・・その、おおせつかってきました。」
緊張というより先ほどの恐怖が隠せない面持ちで慣れない敬語を使いここへ来た理由を恐々と男の方グリップを見て彼女はぽつぽつと伝えてきた。
正直遊びも何もないだろうに・・・この男が容赦ないことするから。
すっかり委縮どころか恐怖心を抱いてしまった彼女を可哀そうに思ったティリエスはティキの手を握った。
手を握られると思ってなかったであろう彼女は、驚いて私の方を見つめた。
淡い緑、例えるならエメラルドグリーンを溶かしたような瞳は少し濡れキラキラとしていた。
この辺りでは珍しい綺麗な瞳の色だなと思いつつ、ふと気が付いて握った彼女の手をつい視線を落とした。
マメだらけの手でひどくかさついているのが触った感触で分かった瞬間、彼女はさっと手を放して隠すように手を後ろへとやり気まずそうにしていた。
「も、申し訳ございません。さ、山賊に捕まった時に水汲みをするよう言われ「謝らなくて大丈夫ですわ。」え・・・?」
遮って私は彼女の話しを折って困惑したままの彼女を置き去りに机へと向かい机の引き出しを開けた。
えぇっと確かここに・・・あ、あったあった。
目的の物を見つけた私は、彼女の元へ駆け寄り彼女の手を取った。
困惑したままの彼女だったが気にせず、一緒にソファへ座り私は取り出した物を捻り回して開ける。
「あ、あの・・・これは?」
「これはお母様が作った傷薬ですわ。肌の荒れにもよく効きますから。」
臭いが少し薬草で強いですがと言葉を付け加えながら私は彼女の手に満遍なく塗っていく。
塗りながら様子を伺えば傷薬が沁みて痛みを感じる様子もないので続けてもう片方の手にも塗っていく。
「ティキさんはどうして・・・その、山賊に?」
「は、はい・・・えっと、だ・・・お、お父さんが商いをしてまして。お母・・・さんは居ないので王都へ商品を運んだ帰りに山賊に刃物で脅されてそのままアジトに連れていかれて・・・。」
「そう・・・貴女のお父様はご無事で?」
「は、はい。腕に怪我をした・・・しましたが、何日か眠れば良くなると言われました。」
良かった、お父さんは無事なんだね。
彼女の言葉にほっとしながら彼女を見ると、彼女は未だ緊張した面持ちで自分の手に塗っている私の手をジッと見つめているのが見えた。
・・・やだな、私が変なものでも塗っているって思われてるんじゃないだろうか?
私の座高の方が低くなければ見えなかった表情に私は表情には出さないが少し凹んだ気持ちで傷薬にきちんと蓋をした。
その音にハッとした彼女は私にぎこちなく笑みを浮かべる。
「あ、あの・・・ありがとうございます。」
「いいえ。1日適量を数回塗り込む必要がありますから、これは貴女に差し上げます。」
「え?!い、いえ頂けませんこのような高価な物を!」
おっとーここでも遠慮、・・・いやこの薬に警戒されているのか?どっちだ?
先程の表情を見ている分、気軽に「いいよ!可愛いプリティ姉ちゃん持っていきな!」とは言えずにまごまごとする。
う~んっと妙な空気の沈黙が漂って数秒、意外なところから声が聞こえた。
今まで黙って見ていたグリップだった。
「あ~・・・じゃぁさ、ティキちゃん。お嬢様の遊び相手に付き合うついでにさ塗り薬塗るのはどう?」
お!グリップ氏それナイスアイディア!
貰うのを遠慮するなら、遊ぶついでにこの塗り薬を塗るようにしてもらえばよい。
確かにそれなら彼女も高価だからだと委縮せずに塗って傷を早く治すことも出来る。
まぁお母様から聞いた話しじゃ材料費から見てもそんなに高価なものでもないらしいんだけど。
「え・・・よ、宜しいので・・・しょうか?」
おずおずと伺う彼女に私はにっこりと笑う、それはもう年相応の笑顔を彼女に向けた。
「勿論ですわ!それに、私女の子のお友達!初めてですの!いっぱい遊びましょうね!」
「あの・・・その、だ・・・お父さんに聞いて大丈夫なら・・・。」
彼女が断れないように元気よく笑顔でそう言うと、彼女は小さくそう言ってぎこちなく笑って私に返事をした。
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