如何にして私はここにやってきたのか(本人だってよくわかっていない。)⑩
今回の話しからちょっとシリアスになります。
2/4:文章が若干おかしかったので訂正しましたが、話しの変更はありません。
彼の身体に蜷局を巻くようにして張り付いて離れないその黒い靄に、私は何時もならアドルフ達についていくのだが彼のお父さんの様子が気になりそのまま書斎にいることにした。
あれっていつもの悪い靄・・・・だよね?
でも今回は内側から溢れ出てないし・・・・どっちかといえば靄に付きまとわれている感じ?
自分の姿は彼らに見えないので色々な角度をかえてジロジロと彼をあちこち見る。顔色も悪く少しやつれているようにも見える彼・・・・・・うーん、あ。
やだ気づいちゃった。
えらいイケオジじゃんか!って脱線しちゃ駄目だろ私・・・。
「旦那様・・・・・きちんとご説明されたほうがよろしいのではないでしょうか?」
遠慮がちにそういう執事を見て彼は少し寂し気に笑う。それは何かを諦めた笑みを浮かべる彼は執事に口を開いた。
「息子に本当のことを話せばそれこそあの女と結婚するに違いない。それは出来ないことだロゼフ。あいつはわしに似て反発すればするほど意固地になりやすい。だから・・・・これでよい。」
「・・・申し訳ございません、旦那様。」
「構わぬ。お前はわしやメイサを心配していってくれているという事も分かっている。だが、今回はすまないな。・・・ぐぅ!!!」
ど、どうしたオジ様!
急に苦しみだした彼に執事のロゼフも慌てる、彼の身体を支えるヨゼフも数秒遅れて何かに耐えるように体を震わせて支えた。暫く2人で苦しんでいる様子を私ははらはらした気持ちで見つめているとどうやら何かが過ぎ去ったようで2人は息を荒くさせながらその場に座り込んだ。先に口にしたのはルドルフだった。
「・・・・・・あの女狐め、いよいよわしを殺そうとしているようだ。メイサの呪いが強まっておる・・・・・あと一度今の波が来ればわしの心臓は持たんだろう。」
心臓を抑えながら彼は悔しそうに口にする。ヨゼフは黙って彼の言葉を受け止めた。
何かを理解したように彼を支えながら立ち上がると彼らはゆっくりと書斎を後にした。
歩きながら彼はぽつりぽつりと話していく。
・・・・アドルフすまない。
本当はお前の婚姻をわしはとても楽しみにしていたのだ。
メイサと2人でお前がこれと決めた女性は素直で優しくお前と一緒にこの家を支えあうことができる女性だと初めて顔を見せに来てくれた時すぐに分かった。
喜んで祝福してやりたかった、でもできんかったのだ。
その時にはわしらにはすでに呪いが掛けられていた、メイサを絶命させるほどの呪い・・・なんとかそれを2つに分け抑え込むことで今まで生き長らえたがもう持ちそうにない。
ああ、呪いのせいで本当のことが言えずに別れるのはなんと悔しい事か。
だが彼奴のいいようにはさせぬ。それが一番の抵抗だ・・・・息子をあの女狐には渡さぬ。
独り言のようにいうそれを執事はゆっくりと歩を進めながらじっと聞いていた。
私も彼らの後をぴったりついていく。
彼が今危機的状況なことに私は顔を真っ青にしていた。
やばいじゃんか、これ。本当の死亡フラグ立ってんじゃんか!
今回の夢もまた色々急展開である。
彼は死の呪いにかかっていて死にそうになっている、メイサという人もだ。しかも、早く何とかしないと死へのカウンドダウンが始まっている状態という。
つまり私はこの2人をどうにかして助けないといけない!!って思う!
そう思うのには訳がある。
続けてみているこの夢のたった1つの法則があるからだ。
それは!
アドルフ達を助ける夢という設定があるってことだ。
毎回彼らが出てきて彼らのトラブルを解決する内容なのだからきっとそうに違いない。
それに前回がっつり助けたし。がっつり助けたんだから今回もがっつり助ける。
・・・でも今回はどうやって助ければいい?
とりあえず彼のいう呪いというものを鑑定できるかどうか試してみた。
彼の背をじっと見つめる。
ルドルフ=フェルザ・D・ルーザッファ(61)
Curse of chain継続中
なんと!人を見たら名前やその人の状態がわかるのか、鑑定って前回の時も思ったけど便利だな・・・・。
などと思いながら鑑定内容を読み進める。
ルドルフ=フェルザ・D・ルーザッファ(61)
Curse of chain継続中→禁忌魔法の一つ。個人を呪う魔法が強化されたもので
個人に呪えば確実に死ぬ呪いでありその人と懇意にしている人にも伝染するよう呪いにかかる。
術者によっては呪う人間が懇意にしている者に呪いがかからないよう操作できるのも可能だが余程の熟練者でないと不可能。また術者本人ではなく何かを媒介すれば術者に長けてなくても発動させることが可能である。
成程、ルドルフ・・・オジ様が苦しみだした後に執事も苦しみだしたというのは伝染する呪いの特性についてなのだと理解する。
今は近しい者に呪いが起こっているがオジ様がなんとか死なないようにギリギリ食い止めている状態。
でも、呪いの中心であるメイサさんという女性とオジ様が死んでしまったらさらにもっと強く伝染が始まる仕掛け・・・・・・。
私は今の状況を整理しながらどうすればこれを解除すればいいのか考える。
よくあるゲームでは呪われている本人を聖魔法か何かで治せば元通りというのが常だ。
でもオジ様はかなり長い間呪いを食いとめる方法しかしなかった。
それはなぜか?
考えられるのことは、禁忌魔法クラスの解除できるほどの人間がいないという状況が1つ。
でも、それなら解除は無理でも呪いを抑え込むようにする者がいてもおかしくない、けれど結果できたのは1つの呪いを2つに分散させての呪いの軽減のみである。
それが出来ないという事は・・・・・アドルフ達、または他人に助けを求めるとすぐに殺されるほど強い呪いの波が発生する厄介な条件があると考えた方がいい。
もう1つ思ったのは今回呪いがどこでされているのかまだ確定されてないから。
オジ様が女狐と言っている女性が主犯とわかってはいるが、どういう風に呪われたのか分かっていない。恐らくこの呪いは呪われた本人を呪いより弱い、低位の回復魔法や解呪魔法で治せば呪いが治るどころか強化されてしまう。高位の魔法で退くか呪いの元を破壊するか又は術者を阻止しないと、この呪いは解除できないということが分かっていたからオジ様は呪いを分けるという形で食い止めていた。
じわじわと追いつめる呪い・・・・・まるで蛇というべきか。
すぐに呪いの場所が特定できないが索敵魔法をかけてみる。
う~ん駄目だ。うわっ!なんだこれっ!
私はすぐに魔法をやめる。
今魔法使って分かったけど、この館全体から強い靄で覆われているからうまく索敵出来ない。
こういう粘着質な魔法を使うなら近くでやっていると思ったんだけどなぁ・・・・・。
私は何か方法を編み出していると気が付けば別の部屋に来ていることに気がついた。
かなり衰弱している様子な体だというにそれを全く見せず凛とした佇まいで執事のロゼフはルドルフの為に扉を開ける。私はオジ様に続いて中に入っていった。
弱弱しい足取りで彼が進んだ先の部屋は寝室だった。
彼はベッドの前まで歩み、椅子にも座らずそのまま跪いてまっすぐベッドで眠る人物に目を向ける。
誰が眠っているんだろうか・・・?もしかして。
後ろで見えない私は、彼の横に立った。
「メイサ。」
横に立ったとほぼ同時に聞こえてきた彼の声に私は思わず彼を見た。
正にそれは愛しくて仕方がないその人、を呼ぶ声。
思わず私は言いようのないものが込み上げてくるのがわかった。
だが彼が視線を向けているその先の光景をみた瞬間、その想いも別の感情に塗り替えられていく。
彼が優しく手を取った彼女の手は、木の枝のようなまるでミイラのような手だったからだ。
彼女が呼吸する様はほとんど虫の息で上下しているのかどうかよく見ないと分からない。
長い髪の艶をとうに失くし、彼女の顔はやせ細りそのせいで血色も悪く目の周りもくぼんでいる。
まさに死に顔だ。
生きているのが不思議なぐらいな様で彼女は眠りについている。
これが呪いの力・・・・・・・・一体、この人はこんな姿になってからどのくらい耐えていたんだろうか。
「メイサ・・・・・。」
先ほどより弱弱しく震える声でもう一度彼女の名を言ったルドルフに、私は自分の考えが甘いことに気が付いた。
今、何とかしなければ。
この人たちは死ぬんだ。
交通事故で亡くなった写真でしか見たことがない両親の顔がふと過る。
人は生きていく限り、いつ死ぬかわからない。
突然何かの事故で死ぬかもしれない。
病気にかかって死ぬ明日かもしれない。
生きている限り絶対明日もその先も生きている未来なんて保証はどこにもない。
それを私は両親の死でそれがどういうものなのかとうに知っている。
でも・・・・・今、2人のように誰かの悪意や欲望のせいで死ぬなんて私は・・・・・・・・・・・・。
嫌だ。絶対に。
と、私はある可能性を思いつく。
確かにあれになれば呪いをどうにか出来ると思う。
でも・・・・そんな都合の良いことができるんだろうか?
もし、もし出来なければ、私にはどうすることも・・・・・。
ええい!!情けない!!考えろっ!!
一瞬だけ過った出来なかった先のことを想像して、パンっと両頬を叩いて自分の弱気な考えに叱咤する。
絶対なれる!だって今までそうだったんだから!
私は意を決して何時ものようにそれを口にした。
私の能力ステータスは現在のゲームの状態と一緒になっている!
なので私は呪いを祓うことも可能!!
ゲームとは私が長い間こつこつ進めていたあのゲームのことだ。
この前魔王を倒したとき私のLvは99。
そこで極めた魔法の中には呪いに関しての最上級魔法もある。
魔王の呪縛の根源も消滅させたあの魔法だ。
それが出来れば、この人たちは助かる。
私は自分のステータスを思い浮かべる。
と、浮かびあがるようにある映像が頭の中ではっきりと見え出してくる。
Lv99
HP ******
体力 9999
魔力 86600
知力 7759
攻撃力 457
防御力 338
速さ 434
運 7777
称号 すべてを護りし者 生産・技術マスター 指導マスター 知識を力にする者 聖を極めし者 魔を極めし者 最高軍師 錬金術熟練者 魔法を創造する者
それを見た瞬間私は思わず右手でガッツポーズをする。
と、何か違和感を感じた。
うん?ステータスが少し下がった?
いつも毎日欠かさず見ているので自分のステータスが全体的に下がり具合なのがすぐにわかる。
魔力と運だけは普段と大体変わらないが、他の部分はもっと数値が高かったはずだ。
……あ、そうか!今武器と防具ないから私自身の能力だけになるのか。
浮かんで今でははっきり見える内容に私は一つ一つ確認していく。
化け物級のえげつない数値なそれはコツコツと積み重ねていった私の人生の一部といっても過言ではない。
だがしかし、最近流行りの転生ものだったら恐ろしくチートなステータスだな。
でも、よかった!これならいける!助けられる!
私は更に彼らに近づいていったのだった。
読んでいただきありがとうございます。
裏設定:施設の先生に親族の方はいないといわれて育った主人公ですが、実は父方の祖父母はまだ存命です、しかも超が付くほどお金持ちです。彼女の身寄りの話しになった時にすぐに祖父母の2人に行きつきましたが、駆け落ちした息子の子供である主人公に対して、息子を奪った女の子供としてしか見れず嫌悪を抱き引き取りを断られています。その時先生はあまりの身勝手で傲慢な2人に対しブチ切れて思いっきりビンタをかまして施設に引き取ったというエピソードがあります。その後何度か2人から主人公の面会希望を要請されていましたが、先生は断ってます。
あと寄付金も受け取らなかったそう。故に生活はカツカツでしたが、それでも逞しく先生は施設の子供たちを育ててます。